夢に見て
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朝、ユウは談話室のソファで眠っていたことにようやく気が付いた。何故ここで寝ていたのかとゴーストたちに聞けば、あの後シルバーに背中を擦られながらソファでずっと話していたらしい。ああ、と彼女は泣きはらした真っ赤な目を見られて恥ずかしかったことを思い出した。シルバーが目の腫れを引かせてくれたのだろう。たらいの中でくったりと寝そべる氷嚢が傍においてあった。
かけられた毛布は自室のベッドにおいてあったものでない。おそらく実践魔法で毛布を出したのだろう。これも洗って返さなくてはいけないと起き上がると、グリムがお腹が空いたんだゾー! と文句を言いながら階段から降りてくる。朝ごはんの支度をしようとユウは立ち上がった。
動いているうちに、昨日あったことをなんとなく思い出してきた。
シルバーに強がりを見抜かれて泣きついたユウは、シルバーに連れられて談話室のソファに座っても言葉を発することなくただずっと泣いていた。事故で置いて行かれたことの悲しみ、たった一人で生きて行かなくてはいけない苦しみ、世界にたった一人取り残されたような感覚、そしてこの世界に来てからずっと騙し続けていたことの全てが、彼女の嗚咽につまっていた。それもシルバーが優しく背中をさすってくれるだけで、胸の底にたまった不安だったり悲しみだったりが優しく溶けていく。彼女が落ち着いたのは、シルバーが来てから30分経ったころだった。
「あの……本当に、申し訳ありません」
すまなさそうにするユウに、シルバーは首を横に振って応えた。
「謝る必要はない。お前の気が済むまで、ここにいるつもりだった」
「そんな恐れ多い……」
目元をティッシュで拭ったユウはどこまでも優しいこの人にまた救われてしまったと、ゴミ箱にティッシュを投げ入れる。シルバーは静かに口を開いた。
「俺は生みの親の顔を知らない」
急いでシルバーの顔を見れば、彼は感情のない顔でただ事実を話していた。そこに感傷も痛みもない。ただ、ユウはきっとそれも辛いものだろうと感じていた。
「親父殿が言うには、盗賊に襲われたそうだ。お前と少し境遇は違うが……言いたいことが上手くまとまらず、すまない」
頭に手を当て謝ったシルバーに、ユウはきっと彼なりにユウを励まそうとしてくれていることに胸が暖かくなった。それだけで彼女は元気になれるのだとシルバーは知らないのだろう。彼に微笑みかけるユウを見たシルバーは不思議そうに彼女を見ていた。
「いいんですよ。先輩のペースでお話してください」
それからずっと話していたのだろうか。ユウはそこからの記憶がないので、もう何を話したかすらも覚えてないことが悔やまれた。しかしそれほど多くのことを共有できたのだと思うと、なんだかこの世界で勝手に一人だと思っていたことが急に馬鹿馬鹿しく思えた。
ユウは朝の支度を済ませ、あくびをまだしているグリムと一緒にオンボロ寮を出る。行ってらっしゃいと手を振るゴーストたちに手を振り返すと、不意にゴーストたちが家族に重なった。目に込み上げてくる熱いものを振り切るように頭を振ったユウは、そのままメインストリートへ走り出す。毎日見ているただの通学路なのに、いつもより輝いて見えた。
鏡舎から出てきたエースとデュースに合流し、四人で歩き出した。今までつっかえるようだった胸の感覚が軽い。エースは不思議そうにユウを見ていた。
「なんか今日、いいことでもあった?」
「なにもないけど。なんで?」
「だってユウ、今日すげー笑ってんじゃん」
エースに言われて、ユウは自分の頬を触った。本当? と足元のグリムに聞けば、そうだゾと言われ、ますます胸が熱くなった。
「先輩のおかげ……だな」
「ユウ」
背後から声をかけられ振り返れば、先ほどまで思っていた人がそこにいた。ユウは思わず笑顔がほころんで、駆け足で近寄った。
「シルバー先輩、おはようござ」
「お前は一人じゃない」
突然言われた言葉に目を丸くすると、シルバーはユウの肩をしっかりと両手で捕らえて目を覗き込むように顔を近づけてくる。ユウはあまりにも整ったその顔が近づいてくることに耐えきれず、背を反らし避けた。シルバーの真っ直ぐな瞳がユウを貫く。
「俺がついている。この先もずっと」
面と向かって言われる言葉に思わず赤面してしまう。これではまるで、おとぎ話の王子さまがそのままそっくり絵本から出てきてプロポーズをしているようだ。いや、本人にそんな気がないのはユウには百も承知なのだが。
「そ、それは大変ありがたいのですが……」
公衆の面前で言われているこの状況では、最早ただのいい見世物だ。さっきまで傍にいたはずのマブとグリムも遠巻きに見ている。ユウはそっとシルバーの目を逸らした。
「場所が悪いです」
かけられた毛布は自室のベッドにおいてあったものでない。おそらく実践魔法で毛布を出したのだろう。これも洗って返さなくてはいけないと起き上がると、グリムがお腹が空いたんだゾー! と文句を言いながら階段から降りてくる。朝ごはんの支度をしようとユウは立ち上がった。
動いているうちに、昨日あったことをなんとなく思い出してきた。
シルバーに強がりを見抜かれて泣きついたユウは、シルバーに連れられて談話室のソファに座っても言葉を発することなくただずっと泣いていた。事故で置いて行かれたことの悲しみ、たった一人で生きて行かなくてはいけない苦しみ、世界にたった一人取り残されたような感覚、そしてこの世界に来てからずっと騙し続けていたことの全てが、彼女の嗚咽につまっていた。それもシルバーが優しく背中をさすってくれるだけで、胸の底にたまった不安だったり悲しみだったりが優しく溶けていく。彼女が落ち着いたのは、シルバーが来てから30分経ったころだった。
「あの……本当に、申し訳ありません」
すまなさそうにするユウに、シルバーは首を横に振って応えた。
「謝る必要はない。お前の気が済むまで、ここにいるつもりだった」
「そんな恐れ多い……」
目元をティッシュで拭ったユウはどこまでも優しいこの人にまた救われてしまったと、ゴミ箱にティッシュを投げ入れる。シルバーは静かに口を開いた。
「俺は生みの親の顔を知らない」
急いでシルバーの顔を見れば、彼は感情のない顔でただ事実を話していた。そこに感傷も痛みもない。ただ、ユウはきっとそれも辛いものだろうと感じていた。
「親父殿が言うには、盗賊に襲われたそうだ。お前と少し境遇は違うが……言いたいことが上手くまとまらず、すまない」
頭に手を当て謝ったシルバーに、ユウはきっと彼なりにユウを励まそうとしてくれていることに胸が暖かくなった。それだけで彼女は元気になれるのだとシルバーは知らないのだろう。彼に微笑みかけるユウを見たシルバーは不思議そうに彼女を見ていた。
「いいんですよ。先輩のペースでお話してください」
それからずっと話していたのだろうか。ユウはそこからの記憶がないので、もう何を話したかすらも覚えてないことが悔やまれた。しかしそれほど多くのことを共有できたのだと思うと、なんだかこの世界で勝手に一人だと思っていたことが急に馬鹿馬鹿しく思えた。
ユウは朝の支度を済ませ、あくびをまだしているグリムと一緒にオンボロ寮を出る。行ってらっしゃいと手を振るゴーストたちに手を振り返すと、不意にゴーストたちが家族に重なった。目に込み上げてくる熱いものを振り切るように頭を振ったユウは、そのままメインストリートへ走り出す。毎日見ているただの通学路なのに、いつもより輝いて見えた。
鏡舎から出てきたエースとデュースに合流し、四人で歩き出した。今までつっかえるようだった胸の感覚が軽い。エースは不思議そうにユウを見ていた。
「なんか今日、いいことでもあった?」
「なにもないけど。なんで?」
「だってユウ、今日すげー笑ってんじゃん」
エースに言われて、ユウは自分の頬を触った。本当? と足元のグリムに聞けば、そうだゾと言われ、ますます胸が熱くなった。
「先輩のおかげ……だな」
「ユウ」
背後から声をかけられ振り返れば、先ほどまで思っていた人がそこにいた。ユウは思わず笑顔がほころんで、駆け足で近寄った。
「シルバー先輩、おはようござ」
「お前は一人じゃない」
突然言われた言葉に目を丸くすると、シルバーはユウの肩をしっかりと両手で捕らえて目を覗き込むように顔を近づけてくる。ユウはあまりにも整ったその顔が近づいてくることに耐えきれず、背を反らし避けた。シルバーの真っ直ぐな瞳がユウを貫く。
「俺がついている。この先もずっと」
面と向かって言われる言葉に思わず赤面してしまう。これではまるで、おとぎ話の王子さまがそのままそっくり絵本から出てきてプロポーズをしているようだ。いや、本人にそんな気がないのはユウには百も承知なのだが。
「そ、それは大変ありがたいのですが……」
公衆の面前で言われているこの状況では、最早ただのいい見世物だ。さっきまで傍にいたはずのマブとグリムも遠巻きに見ている。ユウはそっとシルバーの目を逸らした。
「場所が悪いです」