グリムは、ユウの手をひたすら握っていた。シルバーがこの保健室から去って6時間、もうと深夜になるいうのに目覚めない。やはり任せるのは間違いだったのだろうか、そう彼が考えたところで肉球で挟んだ手がピクリと動く。グリムがユウの顔を見ると、彼女の黒曜石の瞳が開かれた。
「ユウ！　心配したんだゾ！」
　グリムに飛びつかれ呻き声を上げたユウは、ゆっくりと起き上がった。彼女は何やらぐるぐると首を振って辺りを見回している。
「グリム……。先輩は？　シルバー先輩がいたはず」
「ふな？　あいつはいないんだゾ」
　グリムの返答に、ユウの表情は暗くなった。まるで痛みを我慢するようなその表情に、グリムはまずいことを言ったのかと不安になる。
「……夢、だからか」
　ユウがグリムの頭を撫でると、腹の虫が抗議の声を上げた。どうやら二人の腹からしたらしく、くすくすと笑い合う。
「お腹空いたね。ご飯何にしようか」
「ツナ缶三つなんだゾ」
「いいよ。三つね」
　普段なら太りすぎるからダメと反対するユウが首肯したことに、グリムは胸に迫るものを感じて首元に抱きついた。
「ユウ……もう、俺様を一人にするんじゃねーゾ」
震えるその声に、ユウは腕の中に抱えた灰色の背中を撫でた。
「うん。ごめんね」