少しずつでもいい
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でもね、セベク。何でかは知らないけれど、やっぱりシルバー先輩に避けられている気がするんだ。授業で顔を合わせても、隣の席に座ってくれなくなったし、錬金術のペアも違う人と組んじゃうようになった。鍛錬も最近は何とか続けているけど、全然見てくれなくなるし。勇気を振り絞って中庭で声をかけたり、馬術部にいないか見に行ったけど、すぐにあの移動魔法で消えちゃうから追いかけられなくなるし。
待って、冷静に考えたら私ストーカーじゃない? ルーク先輩のこと笑ってられないタイプなんじゃないの?
……でも、もしそうだとしても、いきなり避けるなんてあんまりじゃないか。そもそも、私のこと女って知ってからああいう態度を取り始めた。つまり、女に対して何かしら生理的に無理な部分があるのかもしれない。どうしよう……。
「そもそも女嫌いなのかな……しくしく」
悲しい気持ちがどうしても抑えられなくて、植物園に逃げるようにやってきた。というかここどこ。迷子だよ。ああもう、道が分からないからここで少し休もう。日差しもいい具合に気持ちいいし、何より快適な温度だ。
膝に顔を埋めて溢れてくる涙を制服に吸わせる。学園長ごめん。せっかくの制服をクリーニングに出さないといけないかも。
がさがさと葉がこすれ合う音がして、音のする方に顔を向けると、暢気で明るい声がした。
「ここどこなんだー? お、ユウ! なんで泣いているんだ?」
カリム先輩……。迷子の解決策にはならないけれど、今の乾ききった心には貴方のようなオアシスが必要なんだ。
その安堵からか、先輩の登場に驚いて一度は引っ込んだ涙がまたあふれ出した。
「……カリム先輩。好きな人に避けられてしまいました……。どうしましょうー!」
言葉にすればそれはまさしく切実な私の気持ちで、カリム先輩の心配そうな顔がますます追いつめられている自分を自覚させた。わんわんと泣き声をあげる私に、カリム先輩は傍に膝をついて、肩に手を回してくれる。ポンポンと叩いてくれる手が優しい。
「泣くなって。せっかくのメイクが台無しだぞ」
「もうどうでもいいです! どうせ私なんて女にも見られない、可愛くない監督生ですよ!」
こんなこと言うのは筋違いだって分かってるのに、感情的になった私はカリム先輩の優しい言葉に甘えてやけくそになった感情をぶつけてしまった。それでもカリム先輩の優しく叩く手は止まらない。
「あまり自分を貶めちゃ、勿体ないぜ」
「でも……女ってバレたら、避けられたんですよ。きっと私のこと女に見えないくらい眼中に無かったんですよ」
ああ、どうせ元の世界でも芋の中の芋女だった。クラスでも地味女ランキングで上から数えれば早い方だったってことくらい自覚してる。それに、シルバー先輩だって剣術習いたいって言うゴリラが女にいきなり見えるはずもないよね! 女装が趣味とか思われて……私のハートはボロボロです。
「いやー、でも俺はユウが女でも変だと思わないぞ? いつもメイクとか髪の毛とかこだわってるし、歩くといい匂いするし」
「好きな人にそう言ってもらえたらこの心の傷も埋まりますよ。でも、全部刺さらなかった。私の努力って何ですか?」
これまでの努力は全部先輩に近づくための手段でしかなかった。もちろん、剣術は先輩を守るためにっていう何とも大言壮語もはなはだしい夢の手段でもある。
でも、先輩に好きになってもらえなかったら全部意味ない。これじゃ、私は何のために必死に努力したのか分からないよ。
「俺はユウが可愛いと思うぞ!」
可愛い……可愛い?
「……へ?! 何言ってるんですか?!」
驚いて思わずカリム先輩から一メートル距離を取る。カリム先輩はいやぁ、と後頭部を掻きながら、私の目を見てくれた。
「いくらバレないようにしてても、やっぱり好きなやつに一直線で向かうお前は可愛いだろ。そういうところがあるから、リリアも手を貸したくなるんだって言ってた!」
ん? 今聞き捨てならない名前が聞こえた気が。
「リリア先輩がですか?」
「そうだぞ」
ん? リリア先輩って、あの合理性を突き詰めすぎて狂気の料理(というかゲテモ……ゲフンゲフン)を作るあの? 愛らしいルックスなのに老練した雰囲気をまとっているあの? シルバー先輩に身近な人物のあの人?
それって、私の恋心はバレバレなわけで、というか私の性別もバレバレなわけで。そんな人がシルバー先輩の傍にいるの?
「よりにもよって?!」
「ん? もしかして良くなかったか?」
「あ、いえ。嬉しいです。とっても心強いです」
まさかシルバー先輩に一番近い人がここで協力してくれるとか……一度話しに行ってみる?
いや、今日はもう帰る。そんでもって、今日はいったんシルバー先輩のことを忘れよう。もう、頑張った。帰って美味しいご飯作って寝よう。走って忘れよう。
「ユウ」
どきん、と心臓が大きく跳ねた。間違いなく、今まで会いたいと思っていた人の声が背後で聞こえた。
え? というか、名前で呼んでません? いやいや、シルバー先輩は名前で呼ばない。そもそも『監督生』という私にぴったりな役職で。
「お! シルバー! どうしたんだ!」
カリム先輩の一言で、心拍数を下げようと思った心臓は再び激しくなり始める。ああもう! いい加減いうこと聞け!
「ユウ」
先輩が私のことを名前で呼んでくれてる。もうそれだけで嬉しすぎてどうにかなりそう。
そっと振り返れば、そこには膝を折って私の顔を覗き込もうとするシルバー先輩がいた。なんだか、先輩、久しぶりに見たせいかすごく綺麗。見慣れなくなったせいで、またドキドキする心臓と格闘しなくちゃいけない。
「今、大丈夫か?」
「はい……カリム先輩が良ければ」
シルバー先輩はカリム先輩を見て言った。
「すまないが、ユウに用がある。いいか」
「おう! 連れて行ってくれ!」
そんな私を迷子みたいに言わないでくださいよカリム先輩。あれ、でも今まで迷子になっていたわけだから、あっているのか?
先輩はしゃがんでいる私の目の前に手を差し伸べてくれる。すごく紳士的な態度を取られて、私の心臓がいつ壊れるか分からない。
「ユウ、立てるな?」
「は、はい!」
思わず手を取ると、そのまま立ちあがった私たちは、先輩の移動魔法の光に包まれてしまった。植物園から去る瞬間、少しだけ余計なことを思い出す。
カリム先輩に女だってばれた。
待って、冷静に考えたら私ストーカーじゃない? ルーク先輩のこと笑ってられないタイプなんじゃないの?
……でも、もしそうだとしても、いきなり避けるなんてあんまりじゃないか。そもそも、私のこと女って知ってからああいう態度を取り始めた。つまり、女に対して何かしら生理的に無理な部分があるのかもしれない。どうしよう……。
「そもそも女嫌いなのかな……しくしく」
悲しい気持ちがどうしても抑えられなくて、植物園に逃げるようにやってきた。というかここどこ。迷子だよ。ああもう、道が分からないからここで少し休もう。日差しもいい具合に気持ちいいし、何より快適な温度だ。
膝に顔を埋めて溢れてくる涙を制服に吸わせる。学園長ごめん。せっかくの制服をクリーニングに出さないといけないかも。
がさがさと葉がこすれ合う音がして、音のする方に顔を向けると、暢気で明るい声がした。
「ここどこなんだー? お、ユウ! なんで泣いているんだ?」
カリム先輩……。迷子の解決策にはならないけれど、今の乾ききった心には貴方のようなオアシスが必要なんだ。
その安堵からか、先輩の登場に驚いて一度は引っ込んだ涙がまたあふれ出した。
「……カリム先輩。好きな人に避けられてしまいました……。どうしましょうー!」
言葉にすればそれはまさしく切実な私の気持ちで、カリム先輩の心配そうな顔がますます追いつめられている自分を自覚させた。わんわんと泣き声をあげる私に、カリム先輩は傍に膝をついて、肩に手を回してくれる。ポンポンと叩いてくれる手が優しい。
「泣くなって。せっかくのメイクが台無しだぞ」
「もうどうでもいいです! どうせ私なんて女にも見られない、可愛くない監督生ですよ!」
こんなこと言うのは筋違いだって分かってるのに、感情的になった私はカリム先輩の優しい言葉に甘えてやけくそになった感情をぶつけてしまった。それでもカリム先輩の優しく叩く手は止まらない。
「あまり自分を貶めちゃ、勿体ないぜ」
「でも……女ってバレたら、避けられたんですよ。きっと私のこと女に見えないくらい眼中に無かったんですよ」
ああ、どうせ元の世界でも芋の中の芋女だった。クラスでも地味女ランキングで上から数えれば早い方だったってことくらい自覚してる。それに、シルバー先輩だって剣術習いたいって言うゴリラが女にいきなり見えるはずもないよね! 女装が趣味とか思われて……私のハートはボロボロです。
「いやー、でも俺はユウが女でも変だと思わないぞ? いつもメイクとか髪の毛とかこだわってるし、歩くといい匂いするし」
「好きな人にそう言ってもらえたらこの心の傷も埋まりますよ。でも、全部刺さらなかった。私の努力って何ですか?」
これまでの努力は全部先輩に近づくための手段でしかなかった。もちろん、剣術は先輩を守るためにっていう何とも大言壮語もはなはだしい夢の手段でもある。
でも、先輩に好きになってもらえなかったら全部意味ない。これじゃ、私は何のために必死に努力したのか分からないよ。
「俺はユウが可愛いと思うぞ!」
可愛い……可愛い?
「……へ?! 何言ってるんですか?!」
驚いて思わずカリム先輩から一メートル距離を取る。カリム先輩はいやぁ、と後頭部を掻きながら、私の目を見てくれた。
「いくらバレないようにしてても、やっぱり好きなやつに一直線で向かうお前は可愛いだろ。そういうところがあるから、リリアも手を貸したくなるんだって言ってた!」
ん? 今聞き捨てならない名前が聞こえた気が。
「リリア先輩がですか?」
「そうだぞ」
ん? リリア先輩って、あの合理性を突き詰めすぎて狂気の料理(というかゲテモ……ゲフンゲフン)を作るあの? 愛らしいルックスなのに老練した雰囲気をまとっているあの? シルバー先輩に身近な人物のあの人?
それって、私の恋心はバレバレなわけで、というか私の性別もバレバレなわけで。そんな人がシルバー先輩の傍にいるの?
「よりにもよって?!」
「ん? もしかして良くなかったか?」
「あ、いえ。嬉しいです。とっても心強いです」
まさかシルバー先輩に一番近い人がここで協力してくれるとか……一度話しに行ってみる?
いや、今日はもう帰る。そんでもって、今日はいったんシルバー先輩のことを忘れよう。もう、頑張った。帰って美味しいご飯作って寝よう。走って忘れよう。
「ユウ」
どきん、と心臓が大きく跳ねた。間違いなく、今まで会いたいと思っていた人の声が背後で聞こえた。
え? というか、名前で呼んでません? いやいや、シルバー先輩は名前で呼ばない。そもそも『監督生』という私にぴったりな役職で。
「お! シルバー! どうしたんだ!」
カリム先輩の一言で、心拍数を下げようと思った心臓は再び激しくなり始める。ああもう! いい加減いうこと聞け!
「ユウ」
先輩が私のことを名前で呼んでくれてる。もうそれだけで嬉しすぎてどうにかなりそう。
そっと振り返れば、そこには膝を折って私の顔を覗き込もうとするシルバー先輩がいた。なんだか、先輩、久しぶりに見たせいかすごく綺麗。見慣れなくなったせいで、またドキドキする心臓と格闘しなくちゃいけない。
「今、大丈夫か?」
「はい……カリム先輩が良ければ」
シルバー先輩はカリム先輩を見て言った。
「すまないが、ユウに用がある。いいか」
「おう! 連れて行ってくれ!」
そんな私を迷子みたいに言わないでくださいよカリム先輩。あれ、でも今まで迷子になっていたわけだから、あっているのか?
先輩はしゃがんでいる私の目の前に手を差し伸べてくれる。すごく紳士的な態度を取られて、私の心臓がいつ壊れるか分からない。
「ユウ、立てるな?」
「は、はい!」
思わず手を取ると、そのまま立ちあがった私たちは、先輩の移動魔法の光に包まれてしまった。植物園から去る瞬間、少しだけ余計なことを思い出す。
カリム先輩に女だってばれた。
