動かない星が示すのは
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約束通り明後日の放課後と言われる時間に、シルバー先輩を職員室の前で見つけた。シルバー先輩にディアソムニア寮まで送ってくれたのか? と聞かれ、私がディアソムニア寮の友人に頼んで転送してもらったのだと言えば、なぜかシルバー先輩は頭を抱えていた。やっぱりちょっと恥ずかしかったのかな? 先輩にケガはなかったか聞くと「怪我はないが部屋に儀式用の魔法石と切り株があって非常に驚いた。親父殿にも笑われてしまった」と聞いて、なんだか胸が締め付けられた。ごめんなさい、シルバー先輩、ツノ太郎に多分悪意はないんです。おそらくきっと多分。
「では、行くか」
先輩の背中について行くまま職員室に入ると、クルーウェル先生はとても目立った格好をしているのですぐにどこにいるか分かった。レポートの添削をしている先生に声をかけると、先生は魔法で私たちに椅子を出してくれた。厳しいように見えて、クルーウェル先生はとっても生徒想いなので私はトレイン先生と同じくらい好きだ。先生は私とシルバー先輩の相性占いの結果やその過程を聞くと、ふむと一言言った。
「まぁいい。仔犬どもはしっかりレポートを書いておけ。教科書にも載っていない以上、この結果はどうしようもないだろう」
「はい……」
「分かりました」
先輩にも申し訳ないことをした気がしてならない。エースもデュースも、ぐるぐる魔法石が惑星のように回って面白かったって言ってたから、先輩とそれ見たかったなぁ……。
職員室を出たシルバー先輩は、私を見た。
「監督生、一緒に来てくれてありがとう」
「い、いえ! これくらいいくらでもしますよ!」
まさかこれくらいのことでお礼を言われるなんて、先輩大げさだなぁ。
「俺はいつも実験で寝てしまうから、こういった雑用は大体引き受けるようにしているんだ。そのせいか、面倒なことも押し付けられることも増えて、実験を一人でやることもあった」
なにそれ。先輩が寝ちゃうからってそこに付け入るなんて断じて許さない! 思わずセベクモード(シルバー先輩のいいところを大声で言いふらす動作)に入りそうになって、握りこぶしを作ってしまう。
「だから、お前が一緒に先生の話を聞くと言ってくれて嬉しかった。ありがとう」
そ……そんな優しい顔をされたら、起こる気持ちも萎んじゃいますから……! ああ、先輩のペアになれるときは真っ先に組みに行こう!
「そんな……私でよければ、いくらでもお付き合いします」
「それでは迷惑だろう?」
「とんでもない! 私、先輩のお役に立ちたいんです!」
首を傾げる先輩に、しっかりと目を見て言う。大事なことはしっかり目を見て話せってお母さんも言ってた。
「先輩、一人でなんでも背負わないでください。私でよければいくらでも手を貸しますから」
このまま一人でなんでも背負ってたら、きっと誰も助けてくれなくなる。私一人からでもいいから、先輩の力になる人たちを増やしていかなくちゃ。
先輩は、そうかと頷いて、もう一度優しい声でありがとうと言った。もうその声だけで溶けちゃいそう……。
「この後、用事はあるか?」
「いえ、特にありません」
「今からトレーニングをするんだが、これから付き合ってくれると助かる」
もちろん、返事は決まっている。
「喜んで!」
*
学園長クロウリーが訪れるのは何も生徒たちが集まる授業の時間だけではない。
「お邪魔しますよ」
落ち着いたその声が響くと、職員室の空気がピリッと引き締まる。クロウリーが職員の机の上をちらちら眺めていると、ダルメシアンの置物が置かれたある机の前で立ち止まった。
「おやおや。クルーウェル先生、一体誰と熱愛になるんです?」
クルーウェルは机上に広げていたホロスコープの早見表――生徒が使っている教科書の5倍の厚みはあるのだが、こちらの方がより詳しい診断結果が載せられている。というのも、教科書に載っているのはごくわずかな例でしかない。そして生徒たちが行う儀式の診断結果が教科書に載っていないものを見せることもそう珍しくはないことを、クルーウェルはここの学生時代であった頃から知っている。しかし、彼はシルバーとユウの結果を聞いて全く心当たりがなかった。そこでこの分厚い早見表を引っ張り出す羽目になったのだ。
クルーウェルは苦笑いを見せ、掌を天井に向ける。
「やめてください、学園長。これは生徒のものです。ただ教科書にも書かれていないことなので、結果については本人たちが分かっていませんが」
ユウたちが言っていた結果は、その早見表にしっかりと記載されていた。『動かぬ星は決定的な運命を決める。それは男女の愛を育むこと』と。
「では、行くか」
先輩の背中について行くまま職員室に入ると、クルーウェル先生はとても目立った格好をしているのですぐにどこにいるか分かった。レポートの添削をしている先生に声をかけると、先生は魔法で私たちに椅子を出してくれた。厳しいように見えて、クルーウェル先生はとっても生徒想いなので私はトレイン先生と同じくらい好きだ。先生は私とシルバー先輩の相性占いの結果やその過程を聞くと、ふむと一言言った。
「まぁいい。仔犬どもはしっかりレポートを書いておけ。教科書にも載っていない以上、この結果はどうしようもないだろう」
「はい……」
「分かりました」
先輩にも申し訳ないことをした気がしてならない。エースもデュースも、ぐるぐる魔法石が惑星のように回って面白かったって言ってたから、先輩とそれ見たかったなぁ……。
職員室を出たシルバー先輩は、私を見た。
「監督生、一緒に来てくれてありがとう」
「い、いえ! これくらいいくらでもしますよ!」
まさかこれくらいのことでお礼を言われるなんて、先輩大げさだなぁ。
「俺はいつも実験で寝てしまうから、こういった雑用は大体引き受けるようにしているんだ。そのせいか、面倒なことも押し付けられることも増えて、実験を一人でやることもあった」
なにそれ。先輩が寝ちゃうからってそこに付け入るなんて断じて許さない! 思わずセベクモード(シルバー先輩のいいところを大声で言いふらす動作)に入りそうになって、握りこぶしを作ってしまう。
「だから、お前が一緒に先生の話を聞くと言ってくれて嬉しかった。ありがとう」
そ……そんな優しい顔をされたら、起こる気持ちも萎んじゃいますから……! ああ、先輩のペアになれるときは真っ先に組みに行こう!
「そんな……私でよければ、いくらでもお付き合いします」
「それでは迷惑だろう?」
「とんでもない! 私、先輩のお役に立ちたいんです!」
首を傾げる先輩に、しっかりと目を見て言う。大事なことはしっかり目を見て話せってお母さんも言ってた。
「先輩、一人でなんでも背負わないでください。私でよければいくらでも手を貸しますから」
このまま一人でなんでも背負ってたら、きっと誰も助けてくれなくなる。私一人からでもいいから、先輩の力になる人たちを増やしていかなくちゃ。
先輩は、そうかと頷いて、もう一度優しい声でありがとうと言った。もうその声だけで溶けちゃいそう……。
「この後、用事はあるか?」
「いえ、特にありません」
「今からトレーニングをするんだが、これから付き合ってくれると助かる」
もちろん、返事は決まっている。
「喜んで!」
*
学園長クロウリーが訪れるのは何も生徒たちが集まる授業の時間だけではない。
「お邪魔しますよ」
落ち着いたその声が響くと、職員室の空気がピリッと引き締まる。クロウリーが職員の机の上をちらちら眺めていると、ダルメシアンの置物が置かれたある机の前で立ち止まった。
「おやおや。クルーウェル先生、一体誰と熱愛になるんです?」
クルーウェルは机上に広げていたホロスコープの早見表――生徒が使っている教科書の5倍の厚みはあるのだが、こちらの方がより詳しい診断結果が載せられている。というのも、教科書に載っているのはごくわずかな例でしかない。そして生徒たちが行う儀式の診断結果が教科書に載っていないものを見せることもそう珍しくはないことを、クルーウェルはここの学生時代であった頃から知っている。しかし、彼はシルバーとユウの結果を聞いて全く心当たりがなかった。そこでこの分厚い早見表を引っ張り出す羽目になったのだ。
クルーウェルは苦笑いを見せ、掌を天井に向ける。
「やめてください、学園長。これは生徒のものです。ただ教科書にも書かれていないことなので、結果については本人たちが分かっていませんが」
ユウたちが言っていた結果は、その早見表にしっかりと記載されていた。『動かぬ星は決定的な運命を決める。それは男女の愛を育むこと』と。