動かない星が示すのは
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元の世界では占い師か占い信奉者しか読まなさそうなニッチな分野だけれど、幸いこの学園では合法的に占星術を勉強することができる。この世界は割と合法的に先輩とお近づきになれる方策がごろごろ転がっているんじゃないか?
文献を読んでいて、意外と星には様々な神話が残されていたり、占うにも誕生日の太陽と月、他の惑星の位置関係を示した図が必要だったりと、これはまた私の知らない世界の扉が開きそうだった。でも黄道十二位なんて思い切り私の世界の星座占いと似ている部分もあるので、おそらく予測は外れていない。
クルーウェル先生が占星術の授業を行うのは普段私たちが使っている教室だ。いつもなら魔法薬学室にいるはずの先生がホームルーム以外でここにいるのはなんだか新鮮に感じる。
「ユウ。このような星が出ていればどんな兆候と考えられる?」
おお、さっそく当たった。でも昨日までに勉強した範囲内のことを聞かれたので、私は本に書いてあったことをそのまま答えた。
「グッボーイ! 仔犬ども、これくらいはできるようになれよ」
おお! こんな風に先生に褒められたのは初めてかもしれない。よく勉強しているな、の一言までもらえたところでチャイムは鳴った。残念ながら、私の勉強範囲を披露する機会はここまでだ。
そそくさと立ち去っていくクルーウェル先生を眺めていると、隣からエースが食い気味に聞いてきた。
「ユウ。お前占星術にでもはまってんの?」
正直そういうわけじゃないんだけど、まあ端から見ればそういうことになりますよね。私はゆっくりと頷いた。
「まあそんなところ。こんな真面目に占いとか勉強できる環境じゃなかったから、すごく楽しい」
まあ、シルバー先輩との相性を知りたいだけなんですが。優等生の顔を被りながら勉強して一石二鳥なのではないでしょうか。我ながら良い攻略法を見つけた。占星術限定だけど。
「でも占星術に生まれながらの星とかいう変えられない運命があるから、それで良くない結果が出たら俺は嫌だな」
デュースが困ったようにため息を吐きながら、目をふせる。
というかそんなことあったんだっけ? これまで必死に勉強していたけど、そんなこと微塵も聞いてないし書かれてもいなかったよ?
「なにそれ」
ビー玉のように目を丸くしている私に、エースが深刻そうな顔をして言った。
「お前本当に勉強してんの? 大凶星とかいうやつ。今年のネットニュースになったじゃん。自分のホロスコープにでも乗ったら、たちまち運が悪くなり一生恋人ができないって」
「嘘……」
それじゃあ、その大凶星が私のホロスコープにでも乗ったりしたら……シルバー先輩との望みは切れるってこと? 最悪じゃないか!!! どうしよう……!
「仔犬ども! 席につけ!」
あれ? またクルーウェル先生が戻ってきた。何やら急いでいるのか、少し息が切れている。
「言い忘れていたが、次の占星術は2年A組との合同授業だ。二人一組で相性を占う儀式を執り行ってもらう。各自、ペアを1年と2年で見つけるように」
そう言ってクルーウェル先生はまた来た方向からさっさと去って行った。なるほど、次は合同授業なのか。こういう時大概はエースかデュースと組むのが安心だよね。相性なんていいってことくらい分かり切ってる。これまでいろんなこといっしょに乗り越えてきたし。
「じゃ俺は2年の先輩と組むから」
「なんで!?」
思わず席を立って机を叩けば、エースがあの意地悪な笑顔を見せていた。
「そりゃ、楽できるからじゃん」
こいつ先輩に全部押し付ける気だ。くそう、エースとペアになっても私に乗っかかられる可能性も否めない。ここはじゃあ、デュースで。
「俺も他の奴と組む」
「なんで!?」
デュースくん、君は他の奴と組んじゃダメだよ! 私と組んで「わー、私たち仲いいね」というほんわか展開で終わらせよう? だめ?
デュースは、なんでもなにも前々から次にペアを組もうと約束した一年生がいるらしく、こればっかりは約束を破らせるわけにはいかなかった。仕方なく涙を呑んでうなづくと、グリムが言った。
「2年A組はあの銀髪野郎がいるクラスじゃねえか?」
「銀髪野郎じゃなくてシルバー先輩って呼びなさいよ……。ん?」
シルバー先輩と合同授業を組めば、合法的に誕生日を知れるのでは? それかなり革命じゃない?
萎んでいた気持ちが一瞬で膨らんだ。迷わず立ちあがった私に、グリムが思わず机から転がり落ちる。
「じゃあ、私はシルバー先輩を誘ってくる! グリム、行くよ!」
「俺様を抱えて走るんじゃねえー!」
エースとデュースが手を振って、行って来いと見送ってくれた。風のように走り出した私を止める声も手もない。あるのは、先輩がいるであろう中庭などを捜索するこの健脚だけだ。ああ、今すぐ踊りだしたい気分。
*
ユウを見送ったデュースは、ふとあることに気が付いて、隣にいるエースを見た。
「ところで、エース。大凶星はユウがここに来る前のエイプリルフールネタじゃなかったか?」
マジカメでネタになったのは随分と昔だが、大凶星と名付けて様々な有名人のコラ画像が広まったので、おおよそこの学園の生徒なら知っているだろう。よほど浮世離れしていない限り。
エースは、だからじゃん、と頬杖をついて意地悪く笑った。
「あいつの焦る姿、見てて面白かっただろ?」
「……お前の考えることはつくづく分からないな」
文献を読んでいて、意外と星には様々な神話が残されていたり、占うにも誕生日の太陽と月、他の惑星の位置関係を示した図が必要だったりと、これはまた私の知らない世界の扉が開きそうだった。でも黄道十二位なんて思い切り私の世界の星座占いと似ている部分もあるので、おそらく予測は外れていない。
クルーウェル先生が占星術の授業を行うのは普段私たちが使っている教室だ。いつもなら魔法薬学室にいるはずの先生がホームルーム以外でここにいるのはなんだか新鮮に感じる。
「ユウ。このような星が出ていればどんな兆候と考えられる?」
おお、さっそく当たった。でも昨日までに勉強した範囲内のことを聞かれたので、私は本に書いてあったことをそのまま答えた。
「グッボーイ! 仔犬ども、これくらいはできるようになれよ」
おお! こんな風に先生に褒められたのは初めてかもしれない。よく勉強しているな、の一言までもらえたところでチャイムは鳴った。残念ながら、私の勉強範囲を披露する機会はここまでだ。
そそくさと立ち去っていくクルーウェル先生を眺めていると、隣からエースが食い気味に聞いてきた。
「ユウ。お前占星術にでもはまってんの?」
正直そういうわけじゃないんだけど、まあ端から見ればそういうことになりますよね。私はゆっくりと頷いた。
「まあそんなところ。こんな真面目に占いとか勉強できる環境じゃなかったから、すごく楽しい」
まあ、シルバー先輩との相性を知りたいだけなんですが。優等生の顔を被りながら勉強して一石二鳥なのではないでしょうか。我ながら良い攻略法を見つけた。占星術限定だけど。
「でも占星術に生まれながらの星とかいう変えられない運命があるから、それで良くない結果が出たら俺は嫌だな」
デュースが困ったようにため息を吐きながら、目をふせる。
というかそんなことあったんだっけ? これまで必死に勉強していたけど、そんなこと微塵も聞いてないし書かれてもいなかったよ?
「なにそれ」
ビー玉のように目を丸くしている私に、エースが深刻そうな顔をして言った。
「お前本当に勉強してんの? 大凶星とかいうやつ。今年のネットニュースになったじゃん。自分のホロスコープにでも乗ったら、たちまち運が悪くなり一生恋人ができないって」
「嘘……」
それじゃあ、その大凶星が私のホロスコープにでも乗ったりしたら……シルバー先輩との望みは切れるってこと? 最悪じゃないか!!! どうしよう……!
「仔犬ども! 席につけ!」
あれ? またクルーウェル先生が戻ってきた。何やら急いでいるのか、少し息が切れている。
「言い忘れていたが、次の占星術は2年A組との合同授業だ。二人一組で相性を占う儀式を執り行ってもらう。各自、ペアを1年と2年で見つけるように」
そう言ってクルーウェル先生はまた来た方向からさっさと去って行った。なるほど、次は合同授業なのか。こういう時大概はエースかデュースと組むのが安心だよね。相性なんていいってことくらい分かり切ってる。これまでいろんなこといっしょに乗り越えてきたし。
「じゃ俺は2年の先輩と組むから」
「なんで!?」
思わず席を立って机を叩けば、エースがあの意地悪な笑顔を見せていた。
「そりゃ、楽できるからじゃん」
こいつ先輩に全部押し付ける気だ。くそう、エースとペアになっても私に乗っかかられる可能性も否めない。ここはじゃあ、デュースで。
「俺も他の奴と組む」
「なんで!?」
デュースくん、君は他の奴と組んじゃダメだよ! 私と組んで「わー、私たち仲いいね」というほんわか展開で終わらせよう? だめ?
デュースは、なんでもなにも前々から次にペアを組もうと約束した一年生がいるらしく、こればっかりは約束を破らせるわけにはいかなかった。仕方なく涙を呑んでうなづくと、グリムが言った。
「2年A組はあの銀髪野郎がいるクラスじゃねえか?」
「銀髪野郎じゃなくてシルバー先輩って呼びなさいよ……。ん?」
シルバー先輩と合同授業を組めば、合法的に誕生日を知れるのでは? それかなり革命じゃない?
萎んでいた気持ちが一瞬で膨らんだ。迷わず立ちあがった私に、グリムが思わず机から転がり落ちる。
「じゃあ、私はシルバー先輩を誘ってくる! グリム、行くよ!」
「俺様を抱えて走るんじゃねえー!」
エースとデュースが手を振って、行って来いと見送ってくれた。風のように走り出した私を止める声も手もない。あるのは、先輩がいるであろう中庭などを捜索するこの健脚だけだ。ああ、今すぐ踊りだしたい気分。
*
ユウを見送ったデュースは、ふとあることに気が付いて、隣にいるエースを見た。
「ところで、エース。大凶星はユウがここに来る前のエイプリルフールネタじゃなかったか?」
マジカメでネタになったのは随分と昔だが、大凶星と名付けて様々な有名人のコラ画像が広まったので、おおよそこの学園の生徒なら知っているだろう。よほど浮世離れしていない限り。
エースは、だからじゃん、と頬杖をついて意地悪く笑った。
「あいつの焦る姿、見てて面白かっただろ?」
「……お前の考えることはつくづく分からないな」