動かない星が示すのは
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
きっかけは朝のトーストを頬張っているときにゴーストたちに尋ねられたことだった。あちらの世界ではどんな朝を迎えるのかと聞かれて、私の慌ただしい朝についてレクチャーしていた。
「まず朝起きたらこのくせっ毛と格闘するかな。コテで髪の毛をまっすぐにする」
「今とあまり変わんねーんだゾ」
残念ながら私のくせっ毛はこちらの世界に来たところで治らず、コテの熱でキューティクルを痛めてばかりである。これも美しいストレートの髪でありたい一心での涙ぐましい努力なのだ。シルバー先輩とお揃い……とまでは行かないけれど。
「それからだらだらとテレビでニュースを見ていたなぁ」
「何のコーナーが好きだったんだい?」
「その日の星座占い。ラッキーアイテムとかはあまり持とうとは思わなかったけど、家族や友達の星座がどこにあるのか見るだけでも楽しかったなぁ」
へえとあちらの世界では占いのコーナーがあるのかと感心するゴーストたちは、もっと他にもこちらの世界ではないような番組やコーナーを聞いてきた。それに一つ一つ答えているうちに、もう登校時間だ。さっさと行かないとエースたちに遅刻ってからかわれる。
空になった皿とツナ缶を台所へもっていき浸け置きにする。制服のジャケットを羽織っていると、グリムは机の上に乗ってゴーストたちに言った。
「なあなあ、星占いって占星術と何か違うのか?」
「ユウの世界と一緒かは分からないけれど、星座の話をするなら占星術だね」
そのゴーストの言葉で一気にひらめいた。占星術があちらの世界の星占いと同様なら、今度の占星術の授業でシルバー先輩の誕生日を合法的に知れるんじゃないのか! 次の占星術の授業は五日後。時間は充分にある。トレーニングとの兼ね合いさえどうにかなれば予習はいける!
*
というわけで、放課後となった今、私はグリムと図書館の入り口に立っていた。心底うんざりしている様子のグリムだが、次の授業で予習に出された課題を答える番なので強制的に勉強せざるを得ないのだ。
「なあ、ユウ。俺様の分もやってくれねえか?」
「だめ。この前それをクルーウェル先生にしてどうなったかもう忘れた?」
「ま……またあのきつい追試をするのはうんざりなんだゾ」
「分かったら、少しでも自分で進めよう。分からないところは私も一緒に考えるから」
帰りたそうなグリムの背中を押して前に進ませる。グリムはそのままぽてぽてと歩き出した。
さて、私も占星術について勉強をしよう。入り口に備え付けられた文献検索をかけられる機械は、イグニハイド寮生お手製のものらしい。ドクロマークが入っていてかっこいい。『占星術 基礎』と検索をかければ50件以上の候補が出てきたので、最近出版されたものを選択する。お、この検索機、選択した文献を借りた人が他に何を借りたか教えてくれるんだ。便利だなぁ。イデア先輩はこういうのサクサクって作ってるのかなぁ。
なんて考えながら図書館を歩き回り、文献がある棚を見つけては手を伸ばした。さすがに高すぎるところは梯子を使った。皆さん浮遊魔法ができるからか、この梯子はずいぶんと埃臭い。というか、ぎいぎい軋むけど、大丈夫かなぁ。
一段目に足をかけると、まだ大丈夫そうだ。じゃあ、二段目、これも大丈夫。意外と頑丈なのかもしれない。さて、最後でおしまいだ。三段目に足をかけると、ようやくほしかった文献に手が届いた。
「やった」
後は降りるだけだし、ゆっくり降りていこう。そう思って二段目に足を戻した時だった。見事に真っ二つに割れた梯子の足場のおかげで、体が後ろに向かって倒れる。このまま梯子の下敷きになると分かった瞬間、持っていた本を両腕で抱えて目を瞑った。せめて骨だけは折れませんように!
がしゃん! という派手な音がした。でも思っていた衝撃は来なかった。そろそろと目を開ければ、そこには青い炎を思わせる髪をした私よりもずっと小柄なオルト君がいた。それもお姫様抱っこをされて。
「ユウさん! 大丈夫?」
なんて王子様を見つけてしまったんだ私は。こんなに心配そうな顔で気遣ったセリフを言ってくれる子いないよ? 特にこの学園では。
思わず涙目になりながら、細々とお礼を言う。
「オルト君、助けてくれてありがとう。私は大丈夫」
「どういたしまして! 怪我がなくてよかった!」
オルト君に降ろしてもらったけれど、案の定私の乗っていた梯子はもう使えない。バキバキに壊れたこれどうしよう。
「ユウさん、もしかして本を取ろうとしていたの?」
「あ、そ、そう。私皆みたいに魔法で浮けないし、梯子しか使うものなくて」
残念な私。何故魔法も使えないのにここの生徒になったのだろう。まあ、雑用係よりは皆と仲良くさせてもらえるから嬉しいけれど。
オルト君は眩しいくらいの笑顔で、はいはいと右手を挙げた。
「それなら僕が取ってあげる! 兄さんがブースターを交換してくれたから、天井にあるものだって取れるよ!」
さ、流石に天井にあるものまで取らせるつもりはないかな……。でもこんなに申し出てくれているオルト君の好意を受け取らないわけにはいかない。
「ぜひお願いしたいな」
「任せて」
私が渡したメモの通りにオルト君は文献を集めてくれた。まさか別途で検索して他の参考文献も持ってきたおかげで私の座る席は本で埋まりそうだったので、涙を呑んで返却するよう言った。
「まず朝起きたらこのくせっ毛と格闘するかな。コテで髪の毛をまっすぐにする」
「今とあまり変わんねーんだゾ」
残念ながら私のくせっ毛はこちらの世界に来たところで治らず、コテの熱でキューティクルを痛めてばかりである。これも美しいストレートの髪でありたい一心での涙ぐましい努力なのだ。シルバー先輩とお揃い……とまでは行かないけれど。
「それからだらだらとテレビでニュースを見ていたなぁ」
「何のコーナーが好きだったんだい?」
「その日の星座占い。ラッキーアイテムとかはあまり持とうとは思わなかったけど、家族や友達の星座がどこにあるのか見るだけでも楽しかったなぁ」
へえとあちらの世界では占いのコーナーがあるのかと感心するゴーストたちは、もっと他にもこちらの世界ではないような番組やコーナーを聞いてきた。それに一つ一つ答えているうちに、もう登校時間だ。さっさと行かないとエースたちに遅刻ってからかわれる。
空になった皿とツナ缶を台所へもっていき浸け置きにする。制服のジャケットを羽織っていると、グリムは机の上に乗ってゴーストたちに言った。
「なあなあ、星占いって占星術と何か違うのか?」
「ユウの世界と一緒かは分からないけれど、星座の話をするなら占星術だね」
そのゴーストの言葉で一気にひらめいた。占星術があちらの世界の星占いと同様なら、今度の占星術の授業でシルバー先輩の誕生日を合法的に知れるんじゃないのか! 次の占星術の授業は五日後。時間は充分にある。トレーニングとの兼ね合いさえどうにかなれば予習はいける!
*
というわけで、放課後となった今、私はグリムと図書館の入り口に立っていた。心底うんざりしている様子のグリムだが、次の授業で予習に出された課題を答える番なので強制的に勉強せざるを得ないのだ。
「なあ、ユウ。俺様の分もやってくれねえか?」
「だめ。この前それをクルーウェル先生にしてどうなったかもう忘れた?」
「ま……またあのきつい追試をするのはうんざりなんだゾ」
「分かったら、少しでも自分で進めよう。分からないところは私も一緒に考えるから」
帰りたそうなグリムの背中を押して前に進ませる。グリムはそのままぽてぽてと歩き出した。
さて、私も占星術について勉強をしよう。入り口に備え付けられた文献検索をかけられる機械は、イグニハイド寮生お手製のものらしい。ドクロマークが入っていてかっこいい。『占星術 基礎』と検索をかければ50件以上の候補が出てきたので、最近出版されたものを選択する。お、この検索機、選択した文献を借りた人が他に何を借りたか教えてくれるんだ。便利だなぁ。イデア先輩はこういうのサクサクって作ってるのかなぁ。
なんて考えながら図書館を歩き回り、文献がある棚を見つけては手を伸ばした。さすがに高すぎるところは梯子を使った。皆さん浮遊魔法ができるからか、この梯子はずいぶんと埃臭い。というか、ぎいぎい軋むけど、大丈夫かなぁ。
一段目に足をかけると、まだ大丈夫そうだ。じゃあ、二段目、これも大丈夫。意外と頑丈なのかもしれない。さて、最後でおしまいだ。三段目に足をかけると、ようやくほしかった文献に手が届いた。
「やった」
後は降りるだけだし、ゆっくり降りていこう。そう思って二段目に足を戻した時だった。見事に真っ二つに割れた梯子の足場のおかげで、体が後ろに向かって倒れる。このまま梯子の下敷きになると分かった瞬間、持っていた本を両腕で抱えて目を瞑った。せめて骨だけは折れませんように!
がしゃん! という派手な音がした。でも思っていた衝撃は来なかった。そろそろと目を開ければ、そこには青い炎を思わせる髪をした私よりもずっと小柄なオルト君がいた。それもお姫様抱っこをされて。
「ユウさん! 大丈夫?」
なんて王子様を見つけてしまったんだ私は。こんなに心配そうな顔で気遣ったセリフを言ってくれる子いないよ? 特にこの学園では。
思わず涙目になりながら、細々とお礼を言う。
「オルト君、助けてくれてありがとう。私は大丈夫」
「どういたしまして! 怪我がなくてよかった!」
オルト君に降ろしてもらったけれど、案の定私の乗っていた梯子はもう使えない。バキバキに壊れたこれどうしよう。
「ユウさん、もしかして本を取ろうとしていたの?」
「あ、そ、そう。私皆みたいに魔法で浮けないし、梯子しか使うものなくて」
残念な私。何故魔法も使えないのにここの生徒になったのだろう。まあ、雑用係よりは皆と仲良くさせてもらえるから嬉しいけれど。
オルト君は眩しいくらいの笑顔で、はいはいと右手を挙げた。
「それなら僕が取ってあげる! 兄さんがブースターを交換してくれたから、天井にあるものだって取れるよ!」
さ、流石に天井にあるものまで取らせるつもりはないかな……。でもこんなに申し出てくれているオルト君の好意を受け取らないわけにはいかない。
「ぜひお願いしたいな」
「任せて」
私が渡したメモの通りにオルト君は文献を集めてくれた。まさか別途で検索して他の参考文献も持ってきたおかげで私の座る席は本で埋まりそうだったので、涙を呑んで返却するよう言った。