君と光満ちる茨道を歩いて行こう
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護衛はただ立っているだけが仕事ではない。城の安全を守るため交代制を設けて城内を移動するときがしばしばある。魔法を使える彼らがわざわざ歩いて移動するのは、城内の安全確認を目視で行うからだ。
セベクももちろん、次の見張りの位置まで移動しながら警備をしていた。途中で女性に声をかけられたのだが、彼はあいにく仕事に専念しているため結果的に彼女たちを無視している。
「セベク」
共に帰省してきた友人の声に、セベクは振り向く。そこには襟足が随分と伸びて女性らしさを取り戻しつつあるユウがいた。
「久しぶりだな。元気にしていたか」
「うん。セベクは?」
「無論。若様の護衛に励んでいる」
「はは。ぶれないね」
元気そうでよかった、と笑うユウに、セベクは瞬きをした。彼女がこの城に来るとしたら、マレウスに呼び出されたか、シルバーに用があるかの二択だ。無論、呼び出されたならマレウスの予定表なるものに組み込まれていて、本来こんな城の端でほったらかしにされない。
「……こんな所でどうした。シルバーに用があるなら、呼んでくるぞ」
気を遣ったセベクに、ユウは手を横に振った。
「違うよ。セベクに、言っておかなきゃと思って」
「なんだ?」
「……あの、これ」
ユウが小さな籠から取り出したのは、白いカードだった。二つ折りになったそれを開くと、中央に白いウェディングドレスと白のタキシードが浮かび上がる。リリアが忙しなくしていたのは知っていたが、まさかウィンターホリデー中に招待状を送るほど準備は進んでいたらしい。
「シルバー先輩に頼もうと思ったんだけど、セベクが受け取るなら私だろって、先輩が言うから」
頬を少し赤くしているユウは、視線を一度下げる。艶やかな彼女の表情にセベクが目を奪われていると、ユウは決心したように顔を上げた。
「セベク。私、卒業してひと月過ぎたら先輩と結婚する」
嬉しそうに笑ったユウを見て、セベクは出会ってから今までのことを思い出した。入学式をグリムとの乱入で混乱させられたこと、魔法史で叱られたこと、剣術を教えて鍛錬を共にしたこと、帰省で仲睦まじい姿を見つめていたこと。
「セベク?」
はっとしてセベクが覚醒すると、ユウは彼の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「来てくれる?」
「ああ。行こう」
慌てて頷いたセベクの返事に、ユウは安堵の笑みを見せる。彼女の柔らかな笑みを、アンティークゴールドの瞳はじっと見つめた。
「なあ、ユウ。少し時間を取れるか」
「え? いいけど。明日は学校に戻らないといけないよ」
別に今じゃない、とセベクはため息交じりに返した。
「ナイトレイブンカレッジに戻ってから話す。また後で日程と場所を伝えよう」
「わかった」
頷いたユウを確認したセベクは、そのまま見張り場所までまた歩き出す。彼の手を包む黒い手袋が、ぎり、と悲鳴を上げた。
セベクももちろん、次の見張りの位置まで移動しながら警備をしていた。途中で女性に声をかけられたのだが、彼はあいにく仕事に専念しているため結果的に彼女たちを無視している。
「セベク」
共に帰省してきた友人の声に、セベクは振り向く。そこには襟足が随分と伸びて女性らしさを取り戻しつつあるユウがいた。
「久しぶりだな。元気にしていたか」
「うん。セベクは?」
「無論。若様の護衛に励んでいる」
「はは。ぶれないね」
元気そうでよかった、と笑うユウに、セベクは瞬きをした。彼女がこの城に来るとしたら、マレウスに呼び出されたか、シルバーに用があるかの二択だ。無論、呼び出されたならマレウスの予定表なるものに組み込まれていて、本来こんな城の端でほったらかしにされない。
「……こんな所でどうした。シルバーに用があるなら、呼んでくるぞ」
気を遣ったセベクに、ユウは手を横に振った。
「違うよ。セベクに、言っておかなきゃと思って」
「なんだ?」
「……あの、これ」
ユウが小さな籠から取り出したのは、白いカードだった。二つ折りになったそれを開くと、中央に白いウェディングドレスと白のタキシードが浮かび上がる。リリアが忙しなくしていたのは知っていたが、まさかウィンターホリデー中に招待状を送るほど準備は進んでいたらしい。
「シルバー先輩に頼もうと思ったんだけど、セベクが受け取るなら私だろって、先輩が言うから」
頬を少し赤くしているユウは、視線を一度下げる。艶やかな彼女の表情にセベクが目を奪われていると、ユウは決心したように顔を上げた。
「セベク。私、卒業してひと月過ぎたら先輩と結婚する」
嬉しそうに笑ったユウを見て、セベクは出会ってから今までのことを思い出した。入学式をグリムとの乱入で混乱させられたこと、魔法史で叱られたこと、剣術を教えて鍛錬を共にしたこと、帰省で仲睦まじい姿を見つめていたこと。
「セベク?」
はっとしてセベクが覚醒すると、ユウは彼の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「来てくれる?」
「ああ。行こう」
慌てて頷いたセベクの返事に、ユウは安堵の笑みを見せる。彼女の柔らかな笑みを、アンティークゴールドの瞳はじっと見つめた。
「なあ、ユウ。少し時間を取れるか」
「え? いいけど。明日は学校に戻らないといけないよ」
別に今じゃない、とセベクはため息交じりに返した。
「ナイトレイブンカレッジに戻ってから話す。また後で日程と場所を伝えよう」
「わかった」
頷いたユウを確認したセベクは、そのまま見張り場所までまた歩き出す。彼の手を包む黒い手袋が、ぎり、と悲鳴を上げた。