日進月歩あるのみ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
予想とは違って、シルバー先輩は起きていて、代わりに周りにはたくさんの小鳥とリスが集っている。なんだこの光景は。物語に出てくる眠り姫や白雪姫のそれじゃないか。あれ? ひょっとしなくてもシルバー先輩はお姫様だった?
一緒に遠くから眺めていたマブとグリムは、さっさと行けと私を急かす。
「いやいや。でもどう見ても小鳥さんたちとお話し中じゃない? あんな神聖な空間に入れないよ」
「お前、そんなんで逃げてシルバー先輩の認知がなくなったらどうするんだよ」
エースの言葉に私は息が止まるかと思った。
「え、認知って消えるものなんですか?」
「当たり前だろ。話しもしない、挨拶もしない。そんな奴俺なら絶対に忘れるね」
嘘だぁ! シルバー先輩が忘れるなんて……今後一生飯抜きよりも辛いじゃないか。
デュースはお前なら大丈夫だと励ましてくれる。この優しさが心に沁みるよ。おばあちゃんのお味噌汁みたい。
そうだ。話しかけるんだ! 逃げるな、私!
勢いで立ち上がって、先輩に一歩一歩近づく。また睡魔に襲われているのか、先輩は首をこっくりこっくりと揺らしている。
大丈夫、先輩に話しかけるだけ。話しかけるだけ! そう念じて空気を思い切り吸った。
「シルバー先輩」
私の声で小鳥たちは飛んでいき、リスたちも木の影に隠れてしまう。ちょっと触ってみたかったな……。なんて残念な気持ちも一瞬でオーロラシルバーの瞳でかき消された。
「監督生。どうした」
シルバー先輩……! ここ最近お会いできなかっただけあって、久しぶりに会えたのが嬉しくてそこらじゅうで飛び上がりそうだ。でも落ち着いて、私は……何を話せばいいんだ?
ここでようやく、私は今更何を話すかすら決めずに突っ込んで行ったことに気が付いた。いや、何で話しかけたんだ私! 中身を決めていないのに話しかけるなんて、無謀にもほどがある!
「そ、その……」
ダメだ言葉が浮かんでこない。数分前に戻ってすぐに話題を思い出したいくらいだ。ここから逃げようにも、先輩の目が綺麗すぎて目が離せない。
不意に、今朝剣を振っていて思っていたことが脳裏をよぎった。今はこれしかない!
「もっと強くなるためにはどうしたらいいでしょうか!」
ぽかん、と言った方が差し支えない表情なのにクールなのはなぜ? すっごくカッコイイ。いや、これはまずい方の空気かもしれない。遠くでエースたちは笑いをこらえているのが聞こえる。
そして今更だけど、何を聞いているんだ私はー!
「強くなりたい? なぜ?」
シルバー先輩が首を傾げるだけで心臓が変な跳ね方をするから困る。もう思いつくままに話すしかなかった。苦しくなる胸に手を当てて、必死に言葉を紡いだ。
「わ、私、どうしても守りたい人がいるんです」
思いついた言葉なのに、すらすらと言葉が出てくる。何故だろう。目の前の人のことで頭がいっぱいのはずなのに、胸がつまるくらいの苦しさで窒息しそう。それでも話せるなんて、シルバー先輩に前から伝えたかったみたいだ。
「その人は私なんかに守られるほど弱くないって言うか、むしろ強いんですけど。……でも! その人の笑顔を守りたいんです!」
家族の話を聞いた時の笑顔しか知らないけれど、それでも貴方の笑顔を守れるような人物になりたい。その笑顔が確かに私の心を満たしてくれるから。
「セベクに剣術を教えてもらっておきながら、凄く過ぎたお願いだと思うのですが、最近なかなか稽古をつけてもらえなくて……」
なんて……すごく傲慢だよね。大体メニュー減らしたから、今のところ飽きてきちゃったっていうのもある。
「そういうことなら、引き受けよう」
シルバー先輩のまさかの二つ返事に変な声が喉から出そうになる。本当に!?
「いいんですか!?」
シルバー先輩はしっかり頷くと、立ち上がった。わ、こうして見上げると、先輩って私より大きいんだな。いつもセベクとよく見かけるから低いなんて思っててごめんなさい。見下ろしてくるオーロラシルバーの瞳が万華鏡みたいにきらきら光った。
「ああ、俺もマレウス様たちをお守りする立場だが、まだまだ親父殿やマレウス様に比べればはるかに弱い。お前も守りたい人がいるなら、俺で教えられることは教えよう」
その快い返事に思わず飛び上がってしまう。地面を思い切り蹴った感触が気持ち良かった。
「やったー!」
視界の端にもうマブたちは傍にはいなかったけれど、おめでとうと言ってくれている気がした。
一緒に遠くから眺めていたマブとグリムは、さっさと行けと私を急かす。
「いやいや。でもどう見ても小鳥さんたちとお話し中じゃない? あんな神聖な空間に入れないよ」
「お前、そんなんで逃げてシルバー先輩の認知がなくなったらどうするんだよ」
エースの言葉に私は息が止まるかと思った。
「え、認知って消えるものなんですか?」
「当たり前だろ。話しもしない、挨拶もしない。そんな奴俺なら絶対に忘れるね」
嘘だぁ! シルバー先輩が忘れるなんて……今後一生飯抜きよりも辛いじゃないか。
デュースはお前なら大丈夫だと励ましてくれる。この優しさが心に沁みるよ。おばあちゃんのお味噌汁みたい。
そうだ。話しかけるんだ! 逃げるな、私!
勢いで立ち上がって、先輩に一歩一歩近づく。また睡魔に襲われているのか、先輩は首をこっくりこっくりと揺らしている。
大丈夫、先輩に話しかけるだけ。話しかけるだけ! そう念じて空気を思い切り吸った。
「シルバー先輩」
私の声で小鳥たちは飛んでいき、リスたちも木の影に隠れてしまう。ちょっと触ってみたかったな……。なんて残念な気持ちも一瞬でオーロラシルバーの瞳でかき消された。
「監督生。どうした」
シルバー先輩……! ここ最近お会いできなかっただけあって、久しぶりに会えたのが嬉しくてそこらじゅうで飛び上がりそうだ。でも落ち着いて、私は……何を話せばいいんだ?
ここでようやく、私は今更何を話すかすら決めずに突っ込んで行ったことに気が付いた。いや、何で話しかけたんだ私! 中身を決めていないのに話しかけるなんて、無謀にもほどがある!
「そ、その……」
ダメだ言葉が浮かんでこない。数分前に戻ってすぐに話題を思い出したいくらいだ。ここから逃げようにも、先輩の目が綺麗すぎて目が離せない。
不意に、今朝剣を振っていて思っていたことが脳裏をよぎった。今はこれしかない!
「もっと強くなるためにはどうしたらいいでしょうか!」
ぽかん、と言った方が差し支えない表情なのにクールなのはなぜ? すっごくカッコイイ。いや、これはまずい方の空気かもしれない。遠くでエースたちは笑いをこらえているのが聞こえる。
そして今更だけど、何を聞いているんだ私はー!
「強くなりたい? なぜ?」
シルバー先輩が首を傾げるだけで心臓が変な跳ね方をするから困る。もう思いつくままに話すしかなかった。苦しくなる胸に手を当てて、必死に言葉を紡いだ。
「わ、私、どうしても守りたい人がいるんです」
思いついた言葉なのに、すらすらと言葉が出てくる。何故だろう。目の前の人のことで頭がいっぱいのはずなのに、胸がつまるくらいの苦しさで窒息しそう。それでも話せるなんて、シルバー先輩に前から伝えたかったみたいだ。
「その人は私なんかに守られるほど弱くないって言うか、むしろ強いんですけど。……でも! その人の笑顔を守りたいんです!」
家族の話を聞いた時の笑顔しか知らないけれど、それでも貴方の笑顔を守れるような人物になりたい。その笑顔が確かに私の心を満たしてくれるから。
「セベクに剣術を教えてもらっておきながら、凄く過ぎたお願いだと思うのですが、最近なかなか稽古をつけてもらえなくて……」
なんて……すごく傲慢だよね。大体メニュー減らしたから、今のところ飽きてきちゃったっていうのもある。
「そういうことなら、引き受けよう」
シルバー先輩のまさかの二つ返事に変な声が喉から出そうになる。本当に!?
「いいんですか!?」
シルバー先輩はしっかり頷くと、立ち上がった。わ、こうして見上げると、先輩って私より大きいんだな。いつもセベクとよく見かけるから低いなんて思っててごめんなさい。見下ろしてくるオーロラシルバーの瞳が万華鏡みたいにきらきら光った。
「ああ、俺もマレウス様たちをお守りする立場だが、まだまだ親父殿やマレウス様に比べればはるかに弱い。お前も守りたい人がいるなら、俺で教えられることは教えよう」
その快い返事に思わず飛び上がってしまう。地面を思い切り蹴った感触が気持ち良かった。
「やったー!」
視界の端にもうマブたちは傍にはいなかったけれど、おめでとうと言ってくれている気がした。