この命果てるまで
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ふう、と吐いた息が白いことに彼女は驚いた。そして、どう見てもユウが生まれ育った町の一角であることに間違いなかった。標識を見ても、信号横の地名を見ても、見慣れたものだと知って思わずユウは膝の力が抜けた。
そんな彼女の腕を掴み、座り込まないようシルバーが支える。逞しい腕に持ち上げられ、ユウはようやく自分の足で立てた。
「……先輩、ようこそ。私の国へ」
手始めにユウは自分の家を探すことから始めようとしたが、シルバーに少し待て、と言われる。彼はマレウスたちから持たされたんだと言って出したものは、財布だった。見たことのあるそのデザインに、ユウは思わず指さした。
「それっ私の財布!」
「マレウス様が復元の魔法を使って、こちらに帰ってきた時金銭に困らぬよう図ってくださったんだ」
さすがツノ太郎! と喜んだユウは、シルバーの手を取る。ここから少し歩いたところには、マゼンタが印象的な某スーパーマーケットがある。シルバーについて来てほしい、と勇ましく先導するユウに、彼はされるがままついて行った。
「ここです。お金を用意するので、先輩はここに立っててください」
如何せんシルバーは銀行の存在を知っていても、ATMを見た瞬間「箱」と表現したので、ここは自分が下ろしに行こうと考えたのだ。ユウは寒いところで待たせたくなかったので、ATMコーナーの傍のフードコートの近くで待っているよう彼を立たせて離れた。
ATMのタッチパネルに表示された日付を見れば、今日は彼女が飛ばされてから四年も経っていた。時間の経過はあちらとほぼ変わらないのか、と彼女は納得し、必死に思い出した暗証番号を打つ。無事、軍資金を下ろせた彼女はフードコートに立っているはずの婚約者を探した。
「せんぱ」
「あの、今暇ですか?」
甘ったるい声がフードコートの前の人だかりから聞こえる。疑問に思って近づくと、その中心には城で見た時と同じようにシルバーがいた。
「悪いが人を待たせている」
彼は全く相手にもしていないが、周囲の取り巻きがそれを許さない。この辺に住んでいるのであろう女子大生三人組が黄色い声を上げる。
「めっちゃかっこいいー!」
その脇からはなぜか名刺を取り出して、シルバーに突き付ける男性がいる。彼はハンチング帽を押し上げて、シルバーに熱意の籠った目を向けていた。
「君、うちの事務所で働いてみないかい?」
そう言えばシルバーはヴィルの箔がつくほどの麗人だったことを今更になって思い出したユウは、すぐさまその人だかりに飛び込んだ。あまりに傍に居すぎて顔のよさすら忘れるなど、今までの彼女からすればありえなかった。
ユウは人混みから手を伸ばし、シルバーの腕を捉える。シルバーも彼女の腕を引っ張って、その肢体を抱き込んだ。それに驚いた取り巻きが一瞬静まったところで、ユウはきっと彼らを睨む。
「すいません! この人、私の婚約者なので!」
そう簡単に触っていい存在ではないのだ、と威嚇すると、女性がまず離れていく。結局、スカウトマンを最後まで引きはがすのに彼らは苦労した。
ユウは急いで傍の薬局に入り一通り道具を買うと、シルバーにそれらを当てた。胸元に押し付けられたそれらにシルバーは目を丸くする。
「ユウ、これはなんだ」
「先輩、マスクを知らないんですか? これは風邪予防兼顔を温かくしておくための装備です。それとこれも」
彼女がシルバーの腕から取り出したニット帽に、彼は首を傾げる。
「なぜ帽子をかぶるんだ?」
「頭を温かくしておかないと、体の熱が逃げるからです」
「なるほど」
本当はシルバーを狙ったナンパとスカウトの防止目的でつけさせたかったユウは、これも、と言ってサングラスをつけさせた。はたから見れば顔などほぼ見えないので、これなら完璧、とユウは笑う。
シルバーはこれをつける意味はあるか、と聞くが、似合ってて素敵です、とユウが言うと彼はこれは外さない、と確固たる意志を宣言した。
そんな彼女の腕を掴み、座り込まないようシルバーが支える。逞しい腕に持ち上げられ、ユウはようやく自分の足で立てた。
「……先輩、ようこそ。私の国へ」
手始めにユウは自分の家を探すことから始めようとしたが、シルバーに少し待て、と言われる。彼はマレウスたちから持たされたんだと言って出したものは、財布だった。見たことのあるそのデザインに、ユウは思わず指さした。
「それっ私の財布!」
「マレウス様が復元の魔法を使って、こちらに帰ってきた時金銭に困らぬよう図ってくださったんだ」
さすがツノ太郎! と喜んだユウは、シルバーの手を取る。ここから少し歩いたところには、マゼンタが印象的な某スーパーマーケットがある。シルバーについて来てほしい、と勇ましく先導するユウに、彼はされるがままついて行った。
「ここです。お金を用意するので、先輩はここに立っててください」
如何せんシルバーは銀行の存在を知っていても、ATMを見た瞬間「箱」と表現したので、ここは自分が下ろしに行こうと考えたのだ。ユウは寒いところで待たせたくなかったので、ATMコーナーの傍のフードコートの近くで待っているよう彼を立たせて離れた。
ATMのタッチパネルに表示された日付を見れば、今日は彼女が飛ばされてから四年も経っていた。時間の経過はあちらとほぼ変わらないのか、と彼女は納得し、必死に思い出した暗証番号を打つ。無事、軍資金を下ろせた彼女はフードコートに立っているはずの婚約者を探した。
「せんぱ」
「あの、今暇ですか?」
甘ったるい声がフードコートの前の人だかりから聞こえる。疑問に思って近づくと、その中心には城で見た時と同じようにシルバーがいた。
「悪いが人を待たせている」
彼は全く相手にもしていないが、周囲の取り巻きがそれを許さない。この辺に住んでいるのであろう女子大生三人組が黄色い声を上げる。
「めっちゃかっこいいー!」
その脇からはなぜか名刺を取り出して、シルバーに突き付ける男性がいる。彼はハンチング帽を押し上げて、シルバーに熱意の籠った目を向けていた。
「君、うちの事務所で働いてみないかい?」
そう言えばシルバーはヴィルの箔がつくほどの麗人だったことを今更になって思い出したユウは、すぐさまその人だかりに飛び込んだ。あまりに傍に居すぎて顔のよさすら忘れるなど、今までの彼女からすればありえなかった。
ユウは人混みから手を伸ばし、シルバーの腕を捉える。シルバーも彼女の腕を引っ張って、その肢体を抱き込んだ。それに驚いた取り巻きが一瞬静まったところで、ユウはきっと彼らを睨む。
「すいません! この人、私の婚約者なので!」
そう簡単に触っていい存在ではないのだ、と威嚇すると、女性がまず離れていく。結局、スカウトマンを最後まで引きはがすのに彼らは苦労した。
ユウは急いで傍の薬局に入り一通り道具を買うと、シルバーにそれらを当てた。胸元に押し付けられたそれらにシルバーは目を丸くする。
「ユウ、これはなんだ」
「先輩、マスクを知らないんですか? これは風邪予防兼顔を温かくしておくための装備です。それとこれも」
彼女がシルバーの腕から取り出したニット帽に、彼は首を傾げる。
「なぜ帽子をかぶるんだ?」
「頭を温かくしておかないと、体の熱が逃げるからです」
「なるほど」
本当はシルバーを狙ったナンパとスカウトの防止目的でつけさせたかったユウは、これも、と言ってサングラスをつけさせた。はたから見れば顔などほぼ見えないので、これなら完璧、とユウは笑う。
シルバーはこれをつける意味はあるか、と聞くが、似合ってて素敵です、とユウが言うと彼はこれは外さない、と確固たる意志を宣言した。