この命果てるまで
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城から転送の儀を行うとは言われたが、ユウは目の前を行き交う黒いローブを被った魔法士たちを視線で追う。皆忙しそうに右へ行っては左へ指示を送ったり、すいすいと滑るように歩いている。いや、浮いているのできっと滑っているという言い方で間違いないのだろうが。ところであそこで声を張り上げているローブの彼はセベクだろうか、とユウはミストグリーンの髪をぼんやり探す。
足場は床より30センチ高く作られており、ユウとシルバーはその足場にかかれた魔法陣の上に乗るような形で立っていた。これほど大掛かりになるなら、暢気に帰省しようなんて言わない方が良かったのでは、と彼女は思い始めた。
ふう、とため息を吐いたユウを心配して、シルバーが気分が悪いのか? と顔を覗き込んでくる。ユウは首を横に振って応えると、目の前の光景を眺めながら嘆息した。
「まさか城中の魔法士を総動員するなんて思わなくて」
「お前たちを送り出すなら、これくらい当然だ」
足元でした偉そうな言葉に見下ろすと、そこに懐かしい二本角の友人がいた。シルバーはすぐさま膝をついてしまうので、ユウだけが彼を見下ろしていた。
「ツノ太郎。見送りに来てくれたんだ」
「見送りも何も、その魔法陣を完成させたのは僕だ。僕なしでこの魔法は完成しない」
なるほど、と理解しきれていない表情で答える彼女に、マレウスはとりあえずシルバーと一緒に居れば何とかなる、と言った。彼はひざまづいているシルバーに、ユウがこれだからお前が頼みだ、と声をかける。シルバーは顔を上げないまま、はい! と深く頭を下げた。
「もうじき、儀式は行われる。お前たちはただお互いを意識していればいい。あちらの世界に元々いたお前とは違い、シルバーはユウの認識がなければ消されてしまうからな」
え!? とマレウスの言葉に驚愕するユウに、シルバーが大丈夫だと肩を抱く。彼女を見つめるオーロラシルバーには確固とした信頼があった。
「お前と一緒に、ご家族に挨拶に行く。それだけだ」
落ち着け、とシルバーに言われ、平常心を保てるようユウは目を閉じ、心を落ち着かせる。マレウスは大丈夫そうだな、と妖しく笑うと、ユウたちの足元の魔法陣の文字が緑色に輝き始めた。辺りは暗くなり、詠唱する声があちこちで聞こえ始めた。
「こちらはもう始めたぞ。マレウス」
「ああ、僕は魔法陣の魔力が乱れないよう集中するから、僕の代わりに景気づけてやってくれ」
あいわかった、と笑うリリアを見たマレウスはその場を去る。リリアは人差し指を立てて、二人に注意事項を伝えた。
「よいか。期限は一日。帰ってくる手順は、シルバーにすべて伝えてある。無事に戻ってくるのじゃぞ」
「はい」
硬い表情のユウに、リリアは安心させようと柔らかく微笑む。
「なに、久しぶりの帰省じゃ。羽を伸ばしてくるとよい」
「ありがとうございます」
「うむ。シルバー、しっかり挨拶をしてくるんじゃぞ」
はい、としっかり頷いたシルバーは立ち上がり、親父殿もご無事で、とリリアを見た。そう簡単にやられんわい、とリリアは自信満々に笑う。
詠唱の声は徐々に大きくなっていき、耳元で直接話されているかのように大きく聞こえた。ふう、と深呼吸をするユウの指に、シルバーの指が絡んでくる。ユウが仰ぎ見ると、力強い光を宿した目が彼女だけを映していた。
「ユウ、行こう」
以前耳元で詠唱が唱えられているはずなのに、シルバーの言葉がユウにはっきり聞こえた。自然と彼女の口角は上がって、彼に頷いて答える。そして目の前のリリア、そして魔法陣を守ってくれているマレウスやセベクをはじめとする城の魔法士に向けて、ユウは手を振った。
「行ってきます!」
足場は床より30センチ高く作られており、ユウとシルバーはその足場にかかれた魔法陣の上に乗るような形で立っていた。これほど大掛かりになるなら、暢気に帰省しようなんて言わない方が良かったのでは、と彼女は思い始めた。
ふう、とため息を吐いたユウを心配して、シルバーが気分が悪いのか? と顔を覗き込んでくる。ユウは首を横に振って応えると、目の前の光景を眺めながら嘆息した。
「まさか城中の魔法士を総動員するなんて思わなくて」
「お前たちを送り出すなら、これくらい当然だ」
足元でした偉そうな言葉に見下ろすと、そこに懐かしい二本角の友人がいた。シルバーはすぐさま膝をついてしまうので、ユウだけが彼を見下ろしていた。
「ツノ太郎。見送りに来てくれたんだ」
「見送りも何も、その魔法陣を完成させたのは僕だ。僕なしでこの魔法は完成しない」
なるほど、と理解しきれていない表情で答える彼女に、マレウスはとりあえずシルバーと一緒に居れば何とかなる、と言った。彼はひざまづいているシルバーに、ユウがこれだからお前が頼みだ、と声をかける。シルバーは顔を上げないまま、はい! と深く頭を下げた。
「もうじき、儀式は行われる。お前たちはただお互いを意識していればいい。あちらの世界に元々いたお前とは違い、シルバーはユウの認識がなければ消されてしまうからな」
え!? とマレウスの言葉に驚愕するユウに、シルバーが大丈夫だと肩を抱く。彼女を見つめるオーロラシルバーには確固とした信頼があった。
「お前と一緒に、ご家族に挨拶に行く。それだけだ」
落ち着け、とシルバーに言われ、平常心を保てるようユウは目を閉じ、心を落ち着かせる。マレウスは大丈夫そうだな、と妖しく笑うと、ユウたちの足元の魔法陣の文字が緑色に輝き始めた。辺りは暗くなり、詠唱する声があちこちで聞こえ始めた。
「こちらはもう始めたぞ。マレウス」
「ああ、僕は魔法陣の魔力が乱れないよう集中するから、僕の代わりに景気づけてやってくれ」
あいわかった、と笑うリリアを見たマレウスはその場を去る。リリアは人差し指を立てて、二人に注意事項を伝えた。
「よいか。期限は一日。帰ってくる手順は、シルバーにすべて伝えてある。無事に戻ってくるのじゃぞ」
「はい」
硬い表情のユウに、リリアは安心させようと柔らかく微笑む。
「なに、久しぶりの帰省じゃ。羽を伸ばしてくるとよい」
「ありがとうございます」
「うむ。シルバー、しっかり挨拶をしてくるんじゃぞ」
はい、としっかり頷いたシルバーは立ち上がり、親父殿もご無事で、とリリアを見た。そう簡単にやられんわい、とリリアは自信満々に笑う。
詠唱の声は徐々に大きくなっていき、耳元で直接話されているかのように大きく聞こえた。ふう、と深呼吸をするユウの指に、シルバーの指が絡んでくる。ユウが仰ぎ見ると、力強い光を宿した目が彼女だけを映していた。
「ユウ、行こう」
以前耳元で詠唱が唱えられているはずなのに、シルバーの言葉がユウにはっきり聞こえた。自然と彼女の口角は上がって、彼に頷いて答える。そして目の前のリリア、そして魔法陣を守ってくれているマレウスやセベクをはじめとする城の魔法士に向けて、ユウは手を振った。
「行ってきます!」