この命果てるまで
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ことことと煮るだけになったカレーを、ユウは焦げ付かないようにぐるぐるとお玉でかき混ぜていた。隣ではシルバーが使い終わった包丁を洗ってくれている。香辛料の香りが充満する台所には、水が流れる音だけがあった。
「ユウ、お前も帰省しないか」
シルバーがあまりに自然に言うので、ユウは何度か彼の言葉を反芻してからようやく顔を上げた。そのままシルバーの顔を見れば、彼は包丁を拭いて片付けている。
「え」
パチパチと何度も瞬きをするユウに、シルバーは向き直った。彼の真っ直ぐな瞳がユウを射抜く。
「……俺は、お前のご両親にも、兄上にも挨拶をしたい」
振り絞るようなシルバーの願いに、ユウは戸惑いを隠せなかった。まだ彼女は元の世界に戻る術を見つけていない。シルバーを見上げる彼女は、怪訝な表情を浮かべていた。
「それは嬉しいですけど……そんなことできるんですか?」
「そこでわしの登場じゃ!」
二人の間にひょっこり現れた小さな影に、思わずユウは飛び跳ねた。シルバーはやれやれと頭に手を当てる。彼女がその姿を認めると、マゼンタのメッシュをなつかしく思った。
「り、リリア先輩!」
「くふふ、その反応が恋しかったぞ。ユウ」
腕を組んでにっこりと笑うリリアに、ユウは胸に当てた手を下ろし、彼にハグをした。少し屈んだ姿勢でするそれに、リリアは婚約者の前でそんなことをしてよいのか? と揶揄う。ユウはもうじき家族になるので構わないと笑った。
「リリア先輩もお元気そうで何よりです」
「おう! わしはまだまだピチピチじゃ!」
口を大きく開けて笑うリリアは、ユウから離れる。彼は背後のシルバーに振り返ると、愛らしく小首を傾げた。
「わしも今晩の晩餐の席に混ざっても良いか?」
「親父殿ならいつでも歓迎します」
柔らかくリリアに笑って返したシルバーは、皿を三枚取り出し、土鍋で炊きあがったご飯をよそう。リリアも手伝おうかと聞いたが、二人は声をそろえて座って待ってほしいと彼を食卓につかせた。むう、と頬を膨らませて不満そうにするリリアに、ほっと二人は胸をなでおろした。
三人で囲む食卓は賑やかで、ユウはリリアの話を聞いて笑い転げたり、はらはらと先の展開を待って聞いていたりと忙しない。シルバーはリリアの生き生きと話すさまやリリアの話を楽しんでいる彼女を、この上なく幸せそうに眺めていた。
あ、と呟いたユウは、そろそろ帰ろうかと言い出したリリアに尋ねた。
「リリア先輩、どうやって私の世界に行くんですか?」
ん? と一瞬疑問符を頭上に浮かべたリリアだったが、ユウの言いたいことを察すると手を叩いた。
「おう、言い忘れておった。それを使うんじゃ」
リリアはユウの胸に下がっている魔法石を指さした。これ? とユウが魔法石を眺めれば、リリアがそうじゃと頷く。垂れ下がった袖口から出した手は、ユウとシルバーを交互に指し示した。
「お主らは石で互いを結び付けあっておる。それを利用して、あちらの世界へとマレウスが繋げる。わしも儀式に伴うから、お主らのサポートはばっちりじゃ!」
どういうことだ? と合点のいかないユウに、シルバーはリリアに説明は無用だと首を横に振る。なるほど、と呟いたリリアは半目になった。
「まあ、お主はじっとシルバーの腕の中で飛ばされるのを待て」
分かりました! と胸の前で拳を作るユウが、シルバーと共に元の世界へ向かったのはそれから三日後だった。
「ユウ、お前も帰省しないか」
シルバーがあまりに自然に言うので、ユウは何度か彼の言葉を反芻してからようやく顔を上げた。そのままシルバーの顔を見れば、彼は包丁を拭いて片付けている。
「え」
パチパチと何度も瞬きをするユウに、シルバーは向き直った。彼の真っ直ぐな瞳がユウを射抜く。
「……俺は、お前のご両親にも、兄上にも挨拶をしたい」
振り絞るようなシルバーの願いに、ユウは戸惑いを隠せなかった。まだ彼女は元の世界に戻る術を見つけていない。シルバーを見上げる彼女は、怪訝な表情を浮かべていた。
「それは嬉しいですけど……そんなことできるんですか?」
「そこでわしの登場じゃ!」
二人の間にひょっこり現れた小さな影に、思わずユウは飛び跳ねた。シルバーはやれやれと頭に手を当てる。彼女がその姿を認めると、マゼンタのメッシュをなつかしく思った。
「り、リリア先輩!」
「くふふ、その反応が恋しかったぞ。ユウ」
腕を組んでにっこりと笑うリリアに、ユウは胸に当てた手を下ろし、彼にハグをした。少し屈んだ姿勢でするそれに、リリアは婚約者の前でそんなことをしてよいのか? と揶揄う。ユウはもうじき家族になるので構わないと笑った。
「リリア先輩もお元気そうで何よりです」
「おう! わしはまだまだピチピチじゃ!」
口を大きく開けて笑うリリアは、ユウから離れる。彼は背後のシルバーに振り返ると、愛らしく小首を傾げた。
「わしも今晩の晩餐の席に混ざっても良いか?」
「親父殿ならいつでも歓迎します」
柔らかくリリアに笑って返したシルバーは、皿を三枚取り出し、土鍋で炊きあがったご飯をよそう。リリアも手伝おうかと聞いたが、二人は声をそろえて座って待ってほしいと彼を食卓につかせた。むう、と頬を膨らませて不満そうにするリリアに、ほっと二人は胸をなでおろした。
三人で囲む食卓は賑やかで、ユウはリリアの話を聞いて笑い転げたり、はらはらと先の展開を待って聞いていたりと忙しない。シルバーはリリアの生き生きと話すさまやリリアの話を楽しんでいる彼女を、この上なく幸せそうに眺めていた。
あ、と呟いたユウは、そろそろ帰ろうかと言い出したリリアに尋ねた。
「リリア先輩、どうやって私の世界に行くんですか?」
ん? と一瞬疑問符を頭上に浮かべたリリアだったが、ユウの言いたいことを察すると手を叩いた。
「おう、言い忘れておった。それを使うんじゃ」
リリアはユウの胸に下がっている魔法石を指さした。これ? とユウが魔法石を眺めれば、リリアがそうじゃと頷く。垂れ下がった袖口から出した手は、ユウとシルバーを交互に指し示した。
「お主らは石で互いを結び付けあっておる。それを利用して、あちらの世界へとマレウスが繋げる。わしも儀式に伴うから、お主らのサポートはばっちりじゃ!」
どういうことだ? と合点のいかないユウに、シルバーはリリアに説明は無用だと首を横に振る。なるほど、と呟いたリリアは半目になった。
「まあ、お主はじっとシルバーの腕の中で飛ばされるのを待て」
分かりました! と胸の前で拳を作るユウが、シルバーと共に元の世界へ向かったのはそれから三日後だった。