この命果てるまで
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あれほど長いと感じられたナイトレイブンカレッジの卒業式はもう目前だ。ウィンターホリデーを迎え、ユウは再び茨の谷を訪れていた。鏡を通り抜けた先で、懐かしい冷たい風が彼女の頬を撫でる。頭上に輝く日光が暖かくて、頬の熱も思わず上がりだす。雪深い山の中、闇の鏡が送り出してくれた場所に待ちわびていた銀髪がいた。
ユウは雪に足を取られながら、必死に前へ進んだ。同じく駆け出したシルバーが腕を伸ばすと、彼女は彼の腕に飛び込んだ。巻いていたマフラーが解け、雪原に乗る。
「先輩……っ!」
思わず泣き出した彼女の体を、シルバーは今までの記憶を取り戻すかのようにきつく抱きしめる。いつまでそうしていただろうか。互いの匂いが沁みついたとしても離れそうにない二人に、雪原でもビリビリと木の葉が震えるほどの声が飛んでくる。
「お前たち! 僕に全部の荷物を押し付けるつもりか!」
鏡が送り込んだ彼女とセベクの荷物をセベクはたった一人で抱えていた。両腕に米俵を担ぐような姿に、ユウとシルバーは急いで彼の下へ駆けつける。ごめんなさい、と荷物を持とうとするユウに、構わん、とセベクは彼女の荷物をシルバーに押し付ける。
「自分の恋人の荷物くらい、自分で持て」
「それを言えば、私に持てというのが筋では?」
ユウは手を出すが、シルバーが片腕で彼女の荷物を持ち上げた。何度も手を伸ばす彼女の頭を、グローブを嵌めたシルバーの大きな手が押さえる。
「先輩! 私の荷物なので私が持ちます!」
「ユウ。これくらい俺にはいい鍛錬だ」
それに、とグローブが彼女の水色の手袋を包む。ユウは見上げた先のオーロラシルバーが優しく輝くのを見ていた。
「お前と手を繋ぎたい」
そう言われてしまっては、もう彼女が反論することはできなかった。寒さで真っ赤になった鼻と同じ色をした頬を隠すこともせず、ユウは分厚いグローブを握り返す。
「では、僕はこのまま城に向かう。それまで二人で話してくるんだな!」
セベクは自分の荷物を転送魔法で送った後らしく、彼の周りには真っ白な雪だけがあった。シルバーは彼を呼んで引き止めると、真っ直ぐセベクを見つめる。
「セベク、ありがとう」
その言葉には、ただここまで彼女を連れてきたことだけでなく、ユウを守り抜いてきたことへの労いも含まれていた。セベクはふん、と鼻を鳴らし、転送魔法でそのまま消える。行っちゃいましたね、と呟くユウの手を離すまいとシルバーの握る力が強くなる。
「お前の話を、聞かせてくれ」
見下ろしてくるオーロラシルバーの輝きが眩しくて、ユウは目を細める。早く直にグローブの奥にあるぬくもりを感じたいと、彼女は切に思った。
「それなら、お手紙でも書いていないことを話しましょうか」
長くなりますよ、とユウが注意喚起すると、シルバーは三日間の慰安旅行にぴったりだと笑った。
ユウは雪に足を取られながら、必死に前へ進んだ。同じく駆け出したシルバーが腕を伸ばすと、彼女は彼の腕に飛び込んだ。巻いていたマフラーが解け、雪原に乗る。
「先輩……っ!」
思わず泣き出した彼女の体を、シルバーは今までの記憶を取り戻すかのようにきつく抱きしめる。いつまでそうしていただろうか。互いの匂いが沁みついたとしても離れそうにない二人に、雪原でもビリビリと木の葉が震えるほどの声が飛んでくる。
「お前たち! 僕に全部の荷物を押し付けるつもりか!」
鏡が送り込んだ彼女とセベクの荷物をセベクはたった一人で抱えていた。両腕に米俵を担ぐような姿に、ユウとシルバーは急いで彼の下へ駆けつける。ごめんなさい、と荷物を持とうとするユウに、構わん、とセベクは彼女の荷物をシルバーに押し付ける。
「自分の恋人の荷物くらい、自分で持て」
「それを言えば、私に持てというのが筋では?」
ユウは手を出すが、シルバーが片腕で彼女の荷物を持ち上げた。何度も手を伸ばす彼女の頭を、グローブを嵌めたシルバーの大きな手が押さえる。
「先輩! 私の荷物なので私が持ちます!」
「ユウ。これくらい俺にはいい鍛錬だ」
それに、とグローブが彼女の水色の手袋を包む。ユウは見上げた先のオーロラシルバーが優しく輝くのを見ていた。
「お前と手を繋ぎたい」
そう言われてしまっては、もう彼女が反論することはできなかった。寒さで真っ赤になった鼻と同じ色をした頬を隠すこともせず、ユウは分厚いグローブを握り返す。
「では、僕はこのまま城に向かう。それまで二人で話してくるんだな!」
セベクは自分の荷物を転送魔法で送った後らしく、彼の周りには真っ白な雪だけがあった。シルバーは彼を呼んで引き止めると、真っ直ぐセベクを見つめる。
「セベク、ありがとう」
その言葉には、ただここまで彼女を連れてきたことだけでなく、ユウを守り抜いてきたことへの労いも含まれていた。セベクはふん、と鼻を鳴らし、転送魔法でそのまま消える。行っちゃいましたね、と呟くユウの手を離すまいとシルバーの握る力が強くなる。
「お前の話を、聞かせてくれ」
見下ろしてくるオーロラシルバーの輝きが眩しくて、ユウは目を細める。早く直にグローブの奥にあるぬくもりを感じたいと、彼女は切に思った。
「それなら、お手紙でも書いていないことを話しましょうか」
長くなりますよ、とユウが注意喚起すると、シルバーは三日間の慰安旅行にぴったりだと笑った。