お前たちといると愛情で窒息死する!!!
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卒業式の前日、セベクの部屋にノック音が響いた。もう寝ようという時に誰だとセベクは部屋にいる肖像画のマレウスに失礼します、と辞退のお辞儀をする。きっちり三秒で頭を上げた彼は、忌々しそうに扉を開けた。
「誰だ?」
扉の向こうには、明日には茨の谷に帰るシルバーがいた。それもかなり険しい表情で立っているので、ユウに何かあったのか? とセベクは訝しんだ。
「すまない。お前と二人で話したい事がある」
さっさと入れ、とセベクが招き入れると、シルバーはマレウスの肖像画に一度お辞儀してその傍に立つ。セベクはマレウスの肖像画の前で腰かけるのもおこがましいと、同じく立ったまま話すことにした。
「それで、話とは何だ」
「……ユウのことを、お前に頼みたい」
ゆらりと緑の炎で照らされたシルバーの顔は、苦悩に満ちていた。愛する人を傍で守れないが、谷には守るべきものがある。その現実を突きつけられ、シルバーが悩んだ末に導き出した結論だった。
「あいつはきっと俺のいないところで無茶をするだろう。その時に、力になってほしい。そして、俺の代わりに……守ってくれ」
頼む、とシルバーは頭を下げた。そんな風に頼んでくるとは思わず、セベクは頭を上げろと言ったが、了承するまで退かないとシルバーが固い声で返す。自らの手で守るという騎士の矜持をかなぐり捨ててでもユウを守ろうとするシルバーの気概に、セベクは既に根負けしていた。
「分かった! 分かったから頭など下げるな!」
顔を上げたシルバーの瞳に、セベクは思わず固まる。普段はリリアかユウの前でしか見せないような泣きたそうな笑顔を、シルバーは浮かべていた。
「ありがとう」
セベクは喉にものが詰まるような感覚がして、ぐっと歯噛みして堪える。
「感謝されるようなことじゃない。僕の同級生であり弟子だ。力になるくらい、当然だ」
そうだな、と頷いたシルバーは依然安堵した様子で、胸に手を当てている。
「お前じゃないと頼めないから、安心した」
「なぜ僕にこだわる。ユウを守ってくれる者ならそれこそいくらでもいるだろう」
「お前はユウの心を奪おうとしない」
はっきりと告げられた言葉と真っ直ぐ向けられたオーロラシルバーに、セベクは息が止まった。シルバーが向ける信頼の大きさを目の当たりにして、なんと返せばいいのかセベクは分からなくなった。
「ユウは確かに剣術も戦略も以前よりずっと身についた。しかし、自分に好意を寄せる相手を拒みきれない部分がある。俺がいない間に手を出されないよう、親父殿にも指示を仰いでいくつか防衛線を張ったが、それでも俺は心配だ」
腕を組んだシルバーは、ユウの破天荒さに相変わらず手こずらされているようだ。しかし、それを縛り付けようとしないところがシルバーなりの愛なのだと彼は知っていた。代わりに周囲にそのしわ寄せは行くのだが。
「だから、幼い頃から知っているお前に頼もうと思った。同じように親父殿から学んできたお前なら、剣術も性格も信頼している。安心して彼女を任せられるんだ」
真っ直ぐに曇りのない瞳を向けてくるシルバーに、セベクはめらめらと腹の底から炎が燃え上がるような感覚に陥った。
「当たり前だ! 僕は若様の護衛として日々鍛錬を積んできた。彼女を守るくらい、なんてことはない!」
誇り高きマレウスの近衛となるシルバーは、頼もしいセベクの言葉にしっかりと頷いた。セベクは一度言葉にしたことを守る人物だ。そんな彼がついていれば、少なくとも他の者に頼むよりも安心だと、シルバーは脳裏に部屋で泣いていたユウを思い出した。
離れてしまうのが辛いけれど、必ずセベクと会いに行くと笑った彼女の涙の味を忘れることはないだろう。シルバーも離れる辛さや守れない苦悩を彼女に吐露し、これからたくさん空くであろう心の穴を埋めるように求めあった。眠ることがあれほど惜しいと思った時間はなかったが、次に茨の谷に彼女が来る時はウィンターホリデーだ。その時、正式に彼女を婚約者として谷の関係者に紹介して回るとシルバーは話した。待ちどおしいと笑ったユウの頬には、幾条もの涙の痕が残っている。その顔すら見られない寂しさを埋めるために、二人はゴーストカメラで自撮りをした。写真の中の二人はカメラを見ていたはずが、互いを見て愛おしそうに微笑みあっている。その一瞬がどれほど尊いものか、きっとこれから思い知らされるだろう。
そして、ユウとシルバーは二人だけの約束をした。シルバーは胸元に下げている宝石にそっと触れる。
『先輩、二人でいつか旅行に行きましょう。それで、二人の家を建てて、そこで住むんです。家族もできたらきっともっと賑やかになりますよ。……だから、絶対に谷に来た私を迎えに来てください』
白馬とかぼちゃの馬車はないが大丈夫か? と尋ねると、おかしさのあまり泣くほど笑った彼女の顔を思い出しただけで、シルバーの頬は簡単に持ち上がった。
「誰だ?」
扉の向こうには、明日には茨の谷に帰るシルバーがいた。それもかなり険しい表情で立っているので、ユウに何かあったのか? とセベクは訝しんだ。
「すまない。お前と二人で話したい事がある」
さっさと入れ、とセベクが招き入れると、シルバーはマレウスの肖像画に一度お辞儀してその傍に立つ。セベクはマレウスの肖像画の前で腰かけるのもおこがましいと、同じく立ったまま話すことにした。
「それで、話とは何だ」
「……ユウのことを、お前に頼みたい」
ゆらりと緑の炎で照らされたシルバーの顔は、苦悩に満ちていた。愛する人を傍で守れないが、谷には守るべきものがある。その現実を突きつけられ、シルバーが悩んだ末に導き出した結論だった。
「あいつはきっと俺のいないところで無茶をするだろう。その時に、力になってほしい。そして、俺の代わりに……守ってくれ」
頼む、とシルバーは頭を下げた。そんな風に頼んでくるとは思わず、セベクは頭を上げろと言ったが、了承するまで退かないとシルバーが固い声で返す。自らの手で守るという騎士の矜持をかなぐり捨ててでもユウを守ろうとするシルバーの気概に、セベクは既に根負けしていた。
「分かった! 分かったから頭など下げるな!」
顔を上げたシルバーの瞳に、セベクは思わず固まる。普段はリリアかユウの前でしか見せないような泣きたそうな笑顔を、シルバーは浮かべていた。
「ありがとう」
セベクは喉にものが詰まるような感覚がして、ぐっと歯噛みして堪える。
「感謝されるようなことじゃない。僕の同級生であり弟子だ。力になるくらい、当然だ」
そうだな、と頷いたシルバーは依然安堵した様子で、胸に手を当てている。
「お前じゃないと頼めないから、安心した」
「なぜ僕にこだわる。ユウを守ってくれる者ならそれこそいくらでもいるだろう」
「お前はユウの心を奪おうとしない」
はっきりと告げられた言葉と真っ直ぐ向けられたオーロラシルバーに、セベクは息が止まった。シルバーが向ける信頼の大きさを目の当たりにして、なんと返せばいいのかセベクは分からなくなった。
「ユウは確かに剣術も戦略も以前よりずっと身についた。しかし、自分に好意を寄せる相手を拒みきれない部分がある。俺がいない間に手を出されないよう、親父殿にも指示を仰いでいくつか防衛線を張ったが、それでも俺は心配だ」
腕を組んだシルバーは、ユウの破天荒さに相変わらず手こずらされているようだ。しかし、それを縛り付けようとしないところがシルバーなりの愛なのだと彼は知っていた。代わりに周囲にそのしわ寄せは行くのだが。
「だから、幼い頃から知っているお前に頼もうと思った。同じように親父殿から学んできたお前なら、剣術も性格も信頼している。安心して彼女を任せられるんだ」
真っ直ぐに曇りのない瞳を向けてくるシルバーに、セベクはめらめらと腹の底から炎が燃え上がるような感覚に陥った。
「当たり前だ! 僕は若様の護衛として日々鍛錬を積んできた。彼女を守るくらい、なんてことはない!」
誇り高きマレウスの近衛となるシルバーは、頼もしいセベクの言葉にしっかりと頷いた。セベクは一度言葉にしたことを守る人物だ。そんな彼がついていれば、少なくとも他の者に頼むよりも安心だと、シルバーは脳裏に部屋で泣いていたユウを思い出した。
離れてしまうのが辛いけれど、必ずセベクと会いに行くと笑った彼女の涙の味を忘れることはないだろう。シルバーも離れる辛さや守れない苦悩を彼女に吐露し、これからたくさん空くであろう心の穴を埋めるように求めあった。眠ることがあれほど惜しいと思った時間はなかったが、次に茨の谷に彼女が来る時はウィンターホリデーだ。その時、正式に彼女を婚約者として谷の関係者に紹介して回るとシルバーは話した。待ちどおしいと笑ったユウの頬には、幾条もの涙の痕が残っている。その顔すら見られない寂しさを埋めるために、二人はゴーストカメラで自撮りをした。写真の中の二人はカメラを見ていたはずが、互いを見て愛おしそうに微笑みあっている。その一瞬がどれほど尊いものか、きっとこれから思い知らされるだろう。
そして、ユウとシルバーは二人だけの約束をした。シルバーは胸元に下げている宝石にそっと触れる。
『先輩、二人でいつか旅行に行きましょう。それで、二人の家を建てて、そこで住むんです。家族もできたらきっともっと賑やかになりますよ。……だから、絶対に谷に来た私を迎えに来てください』
白馬とかぼちゃの馬車はないが大丈夫か? と尋ねると、おかしさのあまり泣くほど笑った彼女の顔を思い出しただけで、シルバーの頬は簡単に持ち上がった。