ナイトレイブンカレッジ、ここツイステッドワンダーランドに存在する二大名門校の一つである。その中でもディアソムニア寮は茨の魔女の高尚な精神に基づく寮で、魔法全般に秀でた者や育ちの良い者が多い。そんな寮に闇の鏡は、彼を入れることを選んだ。
　あまりの嬉しさに飛び跳ねてしまいそうになるのを堪え、まるで魔女が着る黒いローブのような式典服を握って喜びをかみしめていた。ディアソムニア寮寮長と言われる人物は、ローブに顔を隠していてあまり顔は見えない。
　入学式を終え、寮長は副寮長を伴いディアソムニア寮へと向かう。初めて見るものばかりの校舎や鏡舎にぐるぐる視線を巡らせていると、副寮長にきょろきょろするな！　と叱られ、内臓が一センチ宙に浮く。鼓膜がビリビリと震えていた。
　辿り着いたディアソムニア寮は重々しい雰囲気を残していて、思わず固唾をのむ。談話室まで連れてこられた新入生たちに、寮長はローブを外して顔を見せた。そこにある美しい顔に、彼の顔を初めて見る誰もがため息をつきかけた。
「ここがディアソムニア寮だ。お前たち、これからもよろしく頼む……」
　こっくり、こっくりと頷き始めた寮長に、副寮長が目をきっとつり上げた。
「シルバー！　居眠りをするな！」
「はっ！　すまない……。また眠ってしまいそうになった」
　思った以上に抜けている部分に、彼はディアソムニア寮って怖いとばかり思っていたけれど、案外そうでもないのかもしれないと胸をなでおろした。副寮長を除いて。