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「仔犬ども、席につけ」
「はい」
理系教師デイヴィス・クルーウェルは、躾のなっていない仔犬には愛の鞭を振るうことをいとわない。しかし、彼は今、目の前でしょんぼりを耳としっぽを垂れさせている生徒たちをどう処分すべきか図りあぐねていた。
普段は真面目な態度が評価されるものの、いまいち成績に結び付かないオンボロ寮の監督生ユウ。そして、ディアソムニア寮生にしては珍しく居眠りをすることが多い一方、授業への姿勢や成績は良いシルバー。この二人に以前占星術の授業で相性診断という課題を課したのだが、その結果が端的に言えば二人は恋人になると言う暗示があった。しかし、生徒のプライベートは基本的に立ち入らないことをポリシーとしているクルーウェルは気にしないことにしていた。
だがしかし、我関せずの態度を貫くのも今日限りになるかもしれない。普段身だしなみに気を遣う彼が、思わず口をあんぐり開けてしまうことが起きてしまった。
「仔犬ども、何故今日の合同授業に揃って遅刻したんだ?」
彼が出席を点呼でとっている時、バタバタと騒々しい足音が薬学実験室に向かって近づいていた。ここまではまだ日常だ。この後、彼は遅刻してきた生徒たちを駄犬と呼び捨て、その鞭を振るって追加の課題を課すまでが一連の流れになる。しかし、飛び込んできた影は、息を切らしながら立っているユウとシルバーだった。
明らかに寝起きだった二人は、寝ぐせもそのままでメイクすらしていない。しかし、二人して遅刻したことへの違和感に気づいたのは、彼らの関係を知っているグリム、エースとデュース、そしてクルーウェルだった。占星術での結果といい、今回の遅刻といい、この二人には思い当たる節しかない。そういうことも含め、クルーウェルは彼らをここ職員室と隣接している資料室に呼び出したのだ。念のために防音の魔法をかけたので、話がここから漏れることはない。
言いにくそうにしているユウの表情を目ざとく見つけたクルーウェルは、もう一言付け加えた。
「では質問を変える。お前たちは、男女の交際をしているのか」
ますます追いつめられたユウの表情が、青ざめていく。やはりな、と納得したクルーウェルにシルバーが彼女を守るように机へ身を乗り出した。
「そうです。なにか問題がありますか」
「いいや。特にない」
男女の関係と言ってもシルバーに全く動揺する気配はなかった。だからユウの性別を知ったうえでの交際であることは間違いないだろうし、シルバーが生半可な気持ちでそんな関係になろうとする人間でないこともクルーウェルはよく分かっていた。
だからこそ、今彼らに伝えておかなくてはならないことがある。クルーウェルは足を組んで、二人を見据えた。
「いいか。俺はお前たちの関係をどうこう言うつもりはない。基本的に恋愛は愛を知る一つの手法であり、愛を知ることは人生を豊かにする。だが、学生の本分を怠るな」
あくまで勉強をするために学校は存在し、この学園は名門校として名を馳せている以上お遊びで通ってもらっては困るのだ。それも男子校の中たった一人の女生徒が紛れ込んでいるという前代未聞の状況に加えて、彼女はここでボーイフレンドができてしまった。そのことが学園の名を貶めるなら徹底的に秘匿すべきであるし、二人には多少の我慢をしてもらうことも必要になる。そういった意味を込めての牽制と叱責だった。
ユウが肩をすくめてうなだれると、そのままゆっくりと頭を下げる。さらりと栗毛が彼女の肩から零れ落ちた。
「すいません。私が起きられなかったせいです。どうか先輩は許してください」
可哀そうな位震えているユウの声に、シルバーは彼女と一緒になって一度頭を下げた。
「ユウは悪くありません。俺がつい寝顔を眺めていたくて、起こすのをためらってしまったからです。そのまま二度寝した俺のせいです」
真剣な眼差しでこちらを見つめるシルバーが嘘を言っていないことは分かる。しかし、彼が言っていることは、寝ているユウを見られる状態にあり、なおかつ二度寝をする状態にあったということだ。邪推などしたくないが、クルーウェルはこの二人が仲睦まじく一緒に寝ているところを想像してしまった。おそらく二度寝から起きたところで遅刻と気づき、急いで薬学実験室に来たのだろう。
生徒のプライベートに立ち入る気はさらさらないのに、こんなことを想像させるなとクルーウェルは組んだ腕に力を入れて我慢する。しかし、シルバーはそんな彼の様子にまだ遅刻に関して怒っているのだろうと、自分たちに何があったのか仔細を語り始めた。一体何を聞かされているんだ俺は、そう言おうとしたクルーウェルは真顔で叫んだ。
「尊い!」
「え?」
クルーウェルの発言に思わず目を丸くしたユウは、怒っているようにしか思えない彼の剣幕と発言の違いに戸惑っていた。二人に言葉も発させない威圧感でもって、クルーウェルは二人を睨みつけ、処分を下す。
「お前たち二人は実験でしばらく同じペアになっていろ! 駄犬ども!」
ユウはやはり処罰は受けるのだな、と肩を落としたところで、クルーウェルの言ったことを反芻した。果たしてそれは処罰になるのだろうか? と彼女が首を傾げたところで、シルバーが分かりましたと頷く。
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます……?」
シルバーに倣って礼を言ったユウは、クルーウェルの態度に疑問が残るもののシルバーと二人で実験ができることの喜びが勝った。互いに仲良くするように、と言い残したクルーウェルは、そんな言葉も必要はないか、とすぐに思い直す。別室から出る時に見えた二人はあまりにも楽しそうに笑いあっていたので。
「はい」
理系教師デイヴィス・クルーウェルは、躾のなっていない仔犬には愛の鞭を振るうことをいとわない。しかし、彼は今、目の前でしょんぼりを耳としっぽを垂れさせている生徒たちをどう処分すべきか図りあぐねていた。
普段は真面目な態度が評価されるものの、いまいち成績に結び付かないオンボロ寮の監督生ユウ。そして、ディアソムニア寮生にしては珍しく居眠りをすることが多い一方、授業への姿勢や成績は良いシルバー。この二人に以前占星術の授業で相性診断という課題を課したのだが、その結果が端的に言えば二人は恋人になると言う暗示があった。しかし、生徒のプライベートは基本的に立ち入らないことをポリシーとしているクルーウェルは気にしないことにしていた。
だがしかし、我関せずの態度を貫くのも今日限りになるかもしれない。普段身だしなみに気を遣う彼が、思わず口をあんぐり開けてしまうことが起きてしまった。
「仔犬ども、何故今日の合同授業に揃って遅刻したんだ?」
彼が出席を点呼でとっている時、バタバタと騒々しい足音が薬学実験室に向かって近づいていた。ここまではまだ日常だ。この後、彼は遅刻してきた生徒たちを駄犬と呼び捨て、その鞭を振るって追加の課題を課すまでが一連の流れになる。しかし、飛び込んできた影は、息を切らしながら立っているユウとシルバーだった。
明らかに寝起きだった二人は、寝ぐせもそのままでメイクすらしていない。しかし、二人して遅刻したことへの違和感に気づいたのは、彼らの関係を知っているグリム、エースとデュース、そしてクルーウェルだった。占星術での結果といい、今回の遅刻といい、この二人には思い当たる節しかない。そういうことも含め、クルーウェルは彼らをここ職員室と隣接している資料室に呼び出したのだ。念のために防音の魔法をかけたので、話がここから漏れることはない。
言いにくそうにしているユウの表情を目ざとく見つけたクルーウェルは、もう一言付け加えた。
「では質問を変える。お前たちは、男女の交際をしているのか」
ますます追いつめられたユウの表情が、青ざめていく。やはりな、と納得したクルーウェルにシルバーが彼女を守るように机へ身を乗り出した。
「そうです。なにか問題がありますか」
「いいや。特にない」
男女の関係と言ってもシルバーに全く動揺する気配はなかった。だからユウの性別を知ったうえでの交際であることは間違いないだろうし、シルバーが生半可な気持ちでそんな関係になろうとする人間でないこともクルーウェルはよく分かっていた。
だからこそ、今彼らに伝えておかなくてはならないことがある。クルーウェルは足を組んで、二人を見据えた。
「いいか。俺はお前たちの関係をどうこう言うつもりはない。基本的に恋愛は愛を知る一つの手法であり、愛を知ることは人生を豊かにする。だが、学生の本分を怠るな」
あくまで勉強をするために学校は存在し、この学園は名門校として名を馳せている以上お遊びで通ってもらっては困るのだ。それも男子校の中たった一人の女生徒が紛れ込んでいるという前代未聞の状況に加えて、彼女はここでボーイフレンドができてしまった。そのことが学園の名を貶めるなら徹底的に秘匿すべきであるし、二人には多少の我慢をしてもらうことも必要になる。そういった意味を込めての牽制と叱責だった。
ユウが肩をすくめてうなだれると、そのままゆっくりと頭を下げる。さらりと栗毛が彼女の肩から零れ落ちた。
「すいません。私が起きられなかったせいです。どうか先輩は許してください」
可哀そうな位震えているユウの声に、シルバーは彼女と一緒になって一度頭を下げた。
「ユウは悪くありません。俺がつい寝顔を眺めていたくて、起こすのをためらってしまったからです。そのまま二度寝した俺のせいです」
真剣な眼差しでこちらを見つめるシルバーが嘘を言っていないことは分かる。しかし、彼が言っていることは、寝ているユウを見られる状態にあり、なおかつ二度寝をする状態にあったということだ。邪推などしたくないが、クルーウェルはこの二人が仲睦まじく一緒に寝ているところを想像してしまった。おそらく二度寝から起きたところで遅刻と気づき、急いで薬学実験室に来たのだろう。
生徒のプライベートに立ち入る気はさらさらないのに、こんなことを想像させるなとクルーウェルは組んだ腕に力を入れて我慢する。しかし、シルバーはそんな彼の様子にまだ遅刻に関して怒っているのだろうと、自分たちに何があったのか仔細を語り始めた。一体何を聞かされているんだ俺は、そう言おうとしたクルーウェルは真顔で叫んだ。
「尊い!」
「え?」
クルーウェルの発言に思わず目を丸くしたユウは、怒っているようにしか思えない彼の剣幕と発言の違いに戸惑っていた。二人に言葉も発させない威圧感でもって、クルーウェルは二人を睨みつけ、処分を下す。
「お前たち二人は実験でしばらく同じペアになっていろ! 駄犬ども!」
ユウはやはり処罰は受けるのだな、と肩を落としたところで、クルーウェルの言ったことを反芻した。果たしてそれは処罰になるのだろうか? と彼女が首を傾げたところで、シルバーが分かりましたと頷く。
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます……?」
シルバーに倣って礼を言ったユウは、クルーウェルの態度に疑問が残るもののシルバーと二人で実験ができることの喜びが勝った。互いに仲良くするように、と言い残したクルーウェルは、そんな言葉も必要はないか、とすぐに思い直す。別室から出る時に見えた二人はあまりにも楽しそうに笑いあっていたので。