ご祝儀の用意はお早めに
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りーんごーんと重い鐘の音がして、生徒たちが教室を移動し始める。そのなかで全く動く気配も見せない銀髪が机に突っ伏したまま動かない。そんな彼の机の前に、小柄な赤髪の男の子が腕を組んで立っていた。
「シルバー! いつまで寝ているんだい!」
リドルは魔法史で眠りっぱなしだったシルバーを叱りつけた。彼は真面目なのに、如何せん眠気には抗えない。もしハーツラビュル寮の寮生なら構わず「首を刎ねて」しまうのだが、このように寝てしまっている彼を置いておいそれと実験に行けないのは、リドルなりの優しさだった。ほら、行くよ、と肩をゆすってやれば、オーロラシルバーの瞳は開かれる。
「……ユウ」
普段は聞いたこともない優しい声に、リドルは思わずどきりとした。ふいに撥ねた心臓につられて声も裏返る。
「え!?」
リドルの声でようやく覚醒したシルバーは、二三度瞬きを繰り返す。永遠とも思える沈黙が続いたかと思うと、仏頂面の彼の耳がすこしだけ赤くなった。
「……すまない。つい癖で呼んでしまった」
「癖で呼ぶとは、なかなか関係が進んでいらっしゃいますね」
突然かけられた声にリドルが振り返ると、圧力のある身長の双子がそこに立っていた。シルバーもその姿を認め、声をかけた。
「ジェイド、フロイド」
フロイドはジェイドの肩に置いていた腕を下ろし、シルバーの机に手をついた。頬杖を突いた彼は面白がるように笑い、垂れ目がますます曲線を強く描く。
「ねーねー、クラゲちゃん。すげー小エビちゃんの匂いついてるけど、どんだけ一緒にいんの? 一緒に寝たわけ?」
子どもが純真に尋ねるような口ぶりではあるが、明らかにシルバーとユウの関係を怪しんでいることくらいリドルにも分かった。ユウとの関係を、リドルは友人だからとシルバーは嬉しそうに教えてくれた。そんな彼の心に踏み入るようなことを簡単に聞いてくるフロイドを、リドルは常よりも厳しい口調で窘める。
「フロイド、下世話な質問はよしたまえ。シルバーにだってプライバシーが」
「ああ。茨の谷では同じベッドで寝ていた」
リドルがその場でひっくりかえらずにいられたのは、むしろ奇跡的だった。嫌かもしれないと彼が気遣ったシルバーは何のためらいもなくユウとの関係をさらけ出している。
ほお、と感嘆したジェイドがにやりと鮫歯を見せて笑った。
「茨の谷では帰省に連れて行くことで婚約成立という風習があると聞きました。結婚も視野に入れてユウさんと帰省したということですか?」
「ああ。ユウからも了解は得ている」
そんな先のことを決めていたのかい!? とリドルは驚きのあまり最早何も言えなかった。目をぱちぱち瞬かせることしかできないリドルとは対照的に、リーチ兄弟は笑みを湛えて拍手を送っている。
「んじゃ、小エビちゃんはクラゲちゃんの番(つがい)じゃん。おめでとー。はい、これあげる」
「ありがとう」
シルバーはフロイドから差し出された飴を受け取った。お二人のことをこれからも応援させてください、とジェイドが微笑んでいると、フロイドはすぐそばの赤髪が少しも動かないことに気づいて笑った。
「金魚ちゃん、顔真っ赤じゃーん! なに恥ずかしがってんの?」
「うるさい! 今、僕は関係ないだろう!」
からかう調子のフロイドに噛みつくように言い返したリドルは、ばっとシルバーの方を振り返った。薔薇の花も顔負けの頬の色づきと睨みつけるような視線に、何か怒らせただろうかとシルバーが首を傾げる。
「それと、今度君にはお祝いの薔薇を贈るよ! おめでとう!」
なぜリドルが顔を赤くするのか分からないが、シルバーは祝ってくれる同級生たちの気持ちが嬉しくて笑った。
「ありがとう」
「シルバー! いつまで寝ているんだい!」
リドルは魔法史で眠りっぱなしだったシルバーを叱りつけた。彼は真面目なのに、如何せん眠気には抗えない。もしハーツラビュル寮の寮生なら構わず「首を刎ねて」しまうのだが、このように寝てしまっている彼を置いておいそれと実験に行けないのは、リドルなりの優しさだった。ほら、行くよ、と肩をゆすってやれば、オーロラシルバーの瞳は開かれる。
「……ユウ」
普段は聞いたこともない優しい声に、リドルは思わずどきりとした。ふいに撥ねた心臓につられて声も裏返る。
「え!?」
リドルの声でようやく覚醒したシルバーは、二三度瞬きを繰り返す。永遠とも思える沈黙が続いたかと思うと、仏頂面の彼の耳がすこしだけ赤くなった。
「……すまない。つい癖で呼んでしまった」
「癖で呼ぶとは、なかなか関係が進んでいらっしゃいますね」
突然かけられた声にリドルが振り返ると、圧力のある身長の双子がそこに立っていた。シルバーもその姿を認め、声をかけた。
「ジェイド、フロイド」
フロイドはジェイドの肩に置いていた腕を下ろし、シルバーの机に手をついた。頬杖を突いた彼は面白がるように笑い、垂れ目がますます曲線を強く描く。
「ねーねー、クラゲちゃん。すげー小エビちゃんの匂いついてるけど、どんだけ一緒にいんの? 一緒に寝たわけ?」
子どもが純真に尋ねるような口ぶりではあるが、明らかにシルバーとユウの関係を怪しんでいることくらいリドルにも分かった。ユウとの関係を、リドルは友人だからとシルバーは嬉しそうに教えてくれた。そんな彼の心に踏み入るようなことを簡単に聞いてくるフロイドを、リドルは常よりも厳しい口調で窘める。
「フロイド、下世話な質問はよしたまえ。シルバーにだってプライバシーが」
「ああ。茨の谷では同じベッドで寝ていた」
リドルがその場でひっくりかえらずにいられたのは、むしろ奇跡的だった。嫌かもしれないと彼が気遣ったシルバーは何のためらいもなくユウとの関係をさらけ出している。
ほお、と感嘆したジェイドがにやりと鮫歯を見せて笑った。
「茨の谷では帰省に連れて行くことで婚約成立という風習があると聞きました。結婚も視野に入れてユウさんと帰省したということですか?」
「ああ。ユウからも了解は得ている」
そんな先のことを決めていたのかい!? とリドルは驚きのあまり最早何も言えなかった。目をぱちぱち瞬かせることしかできないリドルとは対照的に、リーチ兄弟は笑みを湛えて拍手を送っている。
「んじゃ、小エビちゃんはクラゲちゃんの番(つがい)じゃん。おめでとー。はい、これあげる」
「ありがとう」
シルバーはフロイドから差し出された飴を受け取った。お二人のことをこれからも応援させてください、とジェイドが微笑んでいると、フロイドはすぐそばの赤髪が少しも動かないことに気づいて笑った。
「金魚ちゃん、顔真っ赤じゃーん! なに恥ずかしがってんの?」
「うるさい! 今、僕は関係ないだろう!」
からかう調子のフロイドに噛みつくように言い返したリドルは、ばっとシルバーの方を振り返った。薔薇の花も顔負けの頬の色づきと睨みつけるような視線に、何か怒らせただろうかとシルバーが首を傾げる。
「それと、今度君にはお祝いの薔薇を贈るよ! おめでとう!」
なぜリドルが顔を赤くするのか分からないが、シルバーは祝ってくれる同級生たちの気持ちが嬉しくて笑った。
「ありがとう」