結局二人でいれば問題ないのでは?
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ナイトレイブンカレッジに戻ってから、ユウは不思議だと思うことが増えた。家具の位置が変わっていたり、持ち物がなくなったりする類ではなく、とにかく違和感がぬぐえないでいるのだ。
夜の帳が降りてしばらくのこと、ユウは料理を眺めて苦い顔をした。何も考えずに作ったのが悪いのだが、明らかに鍋の中にある煮物はとてもグリムと二人では食べきれない。隣にやってきたグリムが、お前どうしたんだゾ? と首を傾げた。
ユウは茨の谷から帰ってきてからというもの、料理の味付けが変わり、作りすぎることが増えた。グリムは若年性認知症か? と冗談でも言ってはいけないことを言って、ユウにツナ缶を減らされたこともあったが、心配する気持ちは変わらなかった。
「お前、最近おかしいゾ……。疲れてんのか?」
「いや、そうじゃなくて。これはその、多分」
そう、ここはオンボロ寮。茨の谷ではないと思い出してから、ユウは頭を抱えた。ゴーストが大丈夫かいと話しかけてくれるが、どう考えても大丈夫ではない。
「いったい何なんだゾ! はっきり言わねえと分かんねーゾ!」
グリムにも詰められ、ユウはおそるおそる口を開いた。
「あの、からかわないでね」
ユウの頬はほんのりと赤く染まっていた。
グリムは彼女の話を談話室で一通り聞くと、呆れたように大声を上げた。シアンの瞳が半目になって、照れて顔を俯いたままでいるユウを映す。
「はぁー!? 銀髪野郎といることに慣れすぎて、オンボロ寮の生活を忘れた?」
「声が大きい」
「お前なぁ、こっちのほうが長いのに忘れるってどういう生活してたんだ?」
そんな風に純粋な目で見られると、ユウは恥ずかしさで穴を掘って潜りたい気持ちになった。とてもグリムには言えないようなこともしているので、察したゴーストたちがグリ坊、と彼女の代わりに宥めてくれる。
しかし、グリムはなおもユウに対して、忘れるなんておかしいと攻勢の手を緩めない。もう我慢できなくなった彼女の小さな拳が、握った制服の皺を深くした。
「だって! 先輩のいない生活なんて慣れるわけない! 今まで一緒に寝たりとか歩いたりしていたのに、帰ってきてから急に会える時間も少なくなって……」
うう……とユウの垂れ目が潤み出したところで、まずい、と一同が表情を硬くする。シルバーと付き合いだしてからユウはすぐに茨の谷へ行ってしまったので、グリムを始めオンボロ寮の住人たちは二人の距離感を良く知らなかった。しかし、思った以上に傍に居たようなので、それは寂しがるわけだとゴーストたちが口々にアドバイスした。
「とりあえず電話でもしてみたら?」
「今は絶対寝てるからしない」
「じゃあ、会いに行くとか」
「そんなの今は絶対忙しいって!」
できない理由ばかり並べるユウに、そう言えば恋には奥手な少女であったことを一同は思い出した。ゴーストの一人があえて怒らせる目的で、挑発的にユウに問いをかける。
「ええ!? じゃあ寂しくないのかい!」
「そりゃ……寂しいけど。邪魔になりたくないし、きっと今だって護衛に勤しんでるから、邪魔できないよ」
自分の感情まで分かっているのに遠慮で恋人への逢瀬すら躊躇ってしまうユウに、グリムとゴーストたちはこの上なくじれったく感じた。同じ思いをしているのはシルバーの父親とその主人もなのだが、彼らはグリムに耳を貸すよう言ってユウから距離を取る。何やら耳打ちされたグリムは、にやりとギザギザの歯を見せた。
「ほお、なるほど。いーじゃねえか」
「だろ。グリ坊、頼んだぞ」
「任せておけ。グリム様が子分の元気を取り戻してやるんだゾ」
夜の帳が降りてしばらくのこと、ユウは料理を眺めて苦い顔をした。何も考えずに作ったのが悪いのだが、明らかに鍋の中にある煮物はとてもグリムと二人では食べきれない。隣にやってきたグリムが、お前どうしたんだゾ? と首を傾げた。
ユウは茨の谷から帰ってきてからというもの、料理の味付けが変わり、作りすぎることが増えた。グリムは若年性認知症か? と冗談でも言ってはいけないことを言って、ユウにツナ缶を減らされたこともあったが、心配する気持ちは変わらなかった。
「お前、最近おかしいゾ……。疲れてんのか?」
「いや、そうじゃなくて。これはその、多分」
そう、ここはオンボロ寮。茨の谷ではないと思い出してから、ユウは頭を抱えた。ゴーストが大丈夫かいと話しかけてくれるが、どう考えても大丈夫ではない。
「いったい何なんだゾ! はっきり言わねえと分かんねーゾ!」
グリムにも詰められ、ユウはおそるおそる口を開いた。
「あの、からかわないでね」
ユウの頬はほんのりと赤く染まっていた。
グリムは彼女の話を談話室で一通り聞くと、呆れたように大声を上げた。シアンの瞳が半目になって、照れて顔を俯いたままでいるユウを映す。
「はぁー!? 銀髪野郎といることに慣れすぎて、オンボロ寮の生活を忘れた?」
「声が大きい」
「お前なぁ、こっちのほうが長いのに忘れるってどういう生活してたんだ?」
そんな風に純粋な目で見られると、ユウは恥ずかしさで穴を掘って潜りたい気持ちになった。とてもグリムには言えないようなこともしているので、察したゴーストたちがグリ坊、と彼女の代わりに宥めてくれる。
しかし、グリムはなおもユウに対して、忘れるなんておかしいと攻勢の手を緩めない。もう我慢できなくなった彼女の小さな拳が、握った制服の皺を深くした。
「だって! 先輩のいない生活なんて慣れるわけない! 今まで一緒に寝たりとか歩いたりしていたのに、帰ってきてから急に会える時間も少なくなって……」
うう……とユウの垂れ目が潤み出したところで、まずい、と一同が表情を硬くする。シルバーと付き合いだしてからユウはすぐに茨の谷へ行ってしまったので、グリムを始めオンボロ寮の住人たちは二人の距離感を良く知らなかった。しかし、思った以上に傍に居たようなので、それは寂しがるわけだとゴーストたちが口々にアドバイスした。
「とりあえず電話でもしてみたら?」
「今は絶対寝てるからしない」
「じゃあ、会いに行くとか」
「そんなの今は絶対忙しいって!」
できない理由ばかり並べるユウに、そう言えば恋には奥手な少女であったことを一同は思い出した。ゴーストの一人があえて怒らせる目的で、挑発的にユウに問いをかける。
「ええ!? じゃあ寂しくないのかい!」
「そりゃ……寂しいけど。邪魔になりたくないし、きっと今だって護衛に勤しんでるから、邪魔できないよ」
自分の感情まで分かっているのに遠慮で恋人への逢瀬すら躊躇ってしまうユウに、グリムとゴーストたちはこの上なくじれったく感じた。同じ思いをしているのはシルバーの父親とその主人もなのだが、彼らはグリムに耳を貸すよう言ってユウから距離を取る。何やら耳打ちされたグリムは、にやりとギザギザの歯を見せた。
「ほお、なるほど。いーじゃねえか」
「だろ。グリ坊、頼んだぞ」
「任せておけ。グリム様が子分の元気を取り戻してやるんだゾ」