明日へ捧げるワルツ
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魔の山を模して造られた茨の谷の城は、相も変わらず緑の雷が雲の中で唸っている。しかし、その足元では城に入っていく華麗な衣装を身につけた妖精や人間の女性たちが馬車から降りてはパートナーの手を借りて歩いていた。城に入るまでに何重もの魔法の障壁が張られており、そこで弾かれるのは悪意を持っているか武器を所持している者だ。そういった厳重な警戒態勢が敷かれているため、むしろ護衛の数は少なかった。
パーティーの参加者たちは緑のカーペットを悠々と歩いていく。カーペットを通り抜ければ、そこは大広間で荘厳なクラシックが奏でられていた。誰もが顔なじみの者たちに社交辞令を送っていると、ラッパが鳴り響いた。このラッパの音は茨の谷でも位の高い貴族の訪れを告げるものだ。
「ケイラ・ミゼラブル様とそのご一行の入場!」
カーペットからやってきた者たちが入ってくる大きな扉が開かれる。美しい虹の翅が大きく開かれたケイラの姿を認めた者たちは、皆一礼をした。ケイラは父親に手を引かれながら、カーペットの上を歩く。彼女の傍に近づいた者たちは、次々と社交辞令を述べるが、彼女は全く微笑みもしなかった。しかし、それがまたいいと未だ独り身の貴族の息子たちは熱を上げた。彼女はそんな彼らに見向きもせず、父親と共に関係者の元を訪れて回った。
そして、再びラッパは鳴る。今度は誰だと群衆はざわついた。
「リリア・ヴァンルージュ様とそのご一行の入場!」
ヴァンルージュの名を聞いて、参加者たちは色めき立った。何せこの谷で最も古株にして最強の騎士。悪い子をしつけるのにも、泣き虫を逞しくするのも彼の武勇伝が主に使われている。そして、今はナイトレイブンカレッジへ赴き、学生として次期領主であるマレウスの護衛に当たっているので、なかなか会う機会もなかったのだ。
「ヴァンルージュ様だ!」
まだ年端も行かぬ子供の妖精が階段を指さす。そこにはすらりとした長身の男性がマゼンタのメッシュが入った黒髪を後ろに無造作に束ねて降りていた。ヴァンルージュ様! と歓声を上げた彼らは、リリアの隣に立っている女性に目が行った。
軽やかに撥ねた栗毛は白い肌を縁取り、細く引き締まった体を薄緑のドレスが包んでいる。頭上を飾る野花の髪飾りは、今しがた花から生まれた妖精のようだ。夜を閉じ込めたような黒曜石の垂れ目がこちらを見ると、どきりと心臓が高鳴る。
あまりの美しさに、あるものはその姿を見て呆然と呟いた。
「だれだ。あの妖精は」
しかし、彼女の耳が丸いことや三白眼でないことを彼らはすぐに認めた。そのことがますます彼女に対する興味を抱かせた。
「人間よ」
「ヴァンルージュ公がパートナーとは一体」
ユウはここでもペットショップのショーケースにいれられた動物のような気分になった。リリアがとってくれている手から汗が染み出さないか心配だ。ユウはぼそりとリリアに呟いた。
「……物凄い見られている気がします」
くすくすと笑ったリリアは、普段見ている愛らしいリリアではないのでユウの動きはますますぎこちなくなった。
「見られておるな。じゃが、ユウ。おぬしはこのプレッシャーに打ち勝つための努力をしてきた。胸を張って誇れ。ここの誰よりもお主は美しい」
かけられた言葉はユウが血のにじむような努力を共に見て過ごしてきた彼にしか言えないことだ。確かにこの人はリリアなんだと確かめられたユウは、安心したように笑った。
「はい。お義父さん」
パーティーの参加者たちは緑のカーペットを悠々と歩いていく。カーペットを通り抜ければ、そこは大広間で荘厳なクラシックが奏でられていた。誰もが顔なじみの者たちに社交辞令を送っていると、ラッパが鳴り響いた。このラッパの音は茨の谷でも位の高い貴族の訪れを告げるものだ。
「ケイラ・ミゼラブル様とそのご一行の入場!」
カーペットからやってきた者たちが入ってくる大きな扉が開かれる。美しい虹の翅が大きく開かれたケイラの姿を認めた者たちは、皆一礼をした。ケイラは父親に手を引かれながら、カーペットの上を歩く。彼女の傍に近づいた者たちは、次々と社交辞令を述べるが、彼女は全く微笑みもしなかった。しかし、それがまたいいと未だ独り身の貴族の息子たちは熱を上げた。彼女はそんな彼らに見向きもせず、父親と共に関係者の元を訪れて回った。
そして、再びラッパは鳴る。今度は誰だと群衆はざわついた。
「リリア・ヴァンルージュ様とそのご一行の入場!」
ヴァンルージュの名を聞いて、参加者たちは色めき立った。何せこの谷で最も古株にして最強の騎士。悪い子をしつけるのにも、泣き虫を逞しくするのも彼の武勇伝が主に使われている。そして、今はナイトレイブンカレッジへ赴き、学生として次期領主であるマレウスの護衛に当たっているので、なかなか会う機会もなかったのだ。
「ヴァンルージュ様だ!」
まだ年端も行かぬ子供の妖精が階段を指さす。そこにはすらりとした長身の男性がマゼンタのメッシュが入った黒髪を後ろに無造作に束ねて降りていた。ヴァンルージュ様! と歓声を上げた彼らは、リリアの隣に立っている女性に目が行った。
軽やかに撥ねた栗毛は白い肌を縁取り、細く引き締まった体を薄緑のドレスが包んでいる。頭上を飾る野花の髪飾りは、今しがた花から生まれた妖精のようだ。夜を閉じ込めたような黒曜石の垂れ目がこちらを見ると、どきりと心臓が高鳴る。
あまりの美しさに、あるものはその姿を見て呆然と呟いた。
「だれだ。あの妖精は」
しかし、彼女の耳が丸いことや三白眼でないことを彼らはすぐに認めた。そのことがますます彼女に対する興味を抱かせた。
「人間よ」
「ヴァンルージュ公がパートナーとは一体」
ユウはここでもペットショップのショーケースにいれられた動物のような気分になった。リリアがとってくれている手から汗が染み出さないか心配だ。ユウはぼそりとリリアに呟いた。
「……物凄い見られている気がします」
くすくすと笑ったリリアは、普段見ている愛らしいリリアではないのでユウの動きはますますぎこちなくなった。
「見られておるな。じゃが、ユウ。おぬしはこのプレッシャーに打ち勝つための努力をしてきた。胸を張って誇れ。ここの誰よりもお主は美しい」
かけられた言葉はユウが血のにじむような努力を共に見て過ごしてきた彼にしか言えないことだ。確かにこの人はリリアなんだと確かめられたユウは、安心したように笑った。
「はい。お義父さん」