明日へ捧げるワルツ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからユウは、リリアに社交ダンスや挨拶、立ち振る舞いを教えてもらうことになった。彼女は、よさこいソーランやラジオ体操くらいしか踊った経験がないのだが、生まれて初めてのワルツはまず体に三拍子を覚えさせるところから始まった。慣れない足取りに何度足を絡めて転び、リリアの足を踏んで謝る度に本当に参加していいのだろうかとユウは悩んだ。しかし、リリアの根気強さと寛容さ、そしてシルバーにもダンスを手伝ってもらったおかげで、ユウは一通り踊れるようになった。
パーティーはもう翌日となったところで、リリアは言い忘れておった、と頭に本を乗せて姿勢を正す練習をしているユウに訂正した。
「お主はわしの義理の娘になるゆえ、名乗る際はヴァンルージュと一言いうがよい」
「え?」
ユウは思わず身じろぎをしてしまった。そのせいでバランスを崩した本たちがユウの頭から床へと重い音を立てて落下する。リリアはユウの異変に首を傾げた。
「なんじゃ?」
だ、だって、と言葉を詰まらせているユウは脳内がこんがらがっていた。義理の娘ということは、結婚した息子の妻のことを言う。リリアがユウにそう名乗れと言うことは、考えられる理由はただ一つ。
「その、私って……し、シルバー先輩ともう結婚するんですか?」
ユウの戸惑った表情に、リリアは目を剥いた。
「お主ら、まだプロポーズの一つもしとらんかったのか!?」
「だ、だって帰省だからついて来てほしいって言われただけで」
ユウからすればこれはただの帰省だ。しかし、茨の谷での風習を彼女が知らないまま来たことにリリアは額に手を当てた。天を見上げた彼は、可愛い息子の行動力がすさまじいものの、存外抜けていることに思いを馳せていた。
「あやつも言葉が足りんものよ……。ユウ、谷の者が連れてくるよそ者は我らの家族となる、というここの習わしがある。シルバーが誘い、お主がそれに応えたなら、最早お主はシルバーに嫁として選ばれたも同然じゃ」
リリアの言葉にユウは体中の血液が沸騰するような気分になった。先日の騒動で結婚するなどとケイラに宣言したものの、まさかそれよりも早くそんなことをシルバーが考えていたとは知らなかったのだ。その気持ちは嬉しくあれど、何も知らないままついてきた自分が、ユウは恥ずかしくて仕方なかった。
「そ……そんな大事な話を何で教えてくれないんですか。言ってくれれば化粧道具も持ってきたのに」
「まあよい。シルバーも思うところがあるのじゃろう」
思うところとは何だろうか、とユウがリリアを見つめると、彼はユウを見てやれやれとため息を吐いた。
「そう不安になるな。あやつが無責任な男でないことはお主が一番分かっているじゃろう?」
確かに、と納得したユウはリリアに頷いた。今は夢でも見ているような気持ちだが、護衛を頑張っているシルバーを見に行っても恥ずかしくない女性としてふるまうことに専念する。そんな目標がユウを奮い立たせた。
「明日はリリア先輩の義理の娘に相応しくなるよう、精いっぱい頑張ります!」
「くふふ。お主ならきっと大丈夫じゃ」
ふわりと飛んだリリアはユウの小さな頭を撫でる。その優しい手つきでユウは不安など忘れてしまえるのだった。
パーティーはもう翌日となったところで、リリアは言い忘れておった、と頭に本を乗せて姿勢を正す練習をしているユウに訂正した。
「お主はわしの義理の娘になるゆえ、名乗る際はヴァンルージュと一言いうがよい」
「え?」
ユウは思わず身じろぎをしてしまった。そのせいでバランスを崩した本たちがユウの頭から床へと重い音を立てて落下する。リリアはユウの異変に首を傾げた。
「なんじゃ?」
だ、だって、と言葉を詰まらせているユウは脳内がこんがらがっていた。義理の娘ということは、結婚した息子の妻のことを言う。リリアがユウにそう名乗れと言うことは、考えられる理由はただ一つ。
「その、私って……し、シルバー先輩ともう結婚するんですか?」
ユウの戸惑った表情に、リリアは目を剥いた。
「お主ら、まだプロポーズの一つもしとらんかったのか!?」
「だ、だって帰省だからついて来てほしいって言われただけで」
ユウからすればこれはただの帰省だ。しかし、茨の谷での風習を彼女が知らないまま来たことにリリアは額に手を当てた。天を見上げた彼は、可愛い息子の行動力がすさまじいものの、存外抜けていることに思いを馳せていた。
「あやつも言葉が足りんものよ……。ユウ、谷の者が連れてくるよそ者は我らの家族となる、というここの習わしがある。シルバーが誘い、お主がそれに応えたなら、最早お主はシルバーに嫁として選ばれたも同然じゃ」
リリアの言葉にユウは体中の血液が沸騰するような気分になった。先日の騒動で結婚するなどとケイラに宣言したものの、まさかそれよりも早くそんなことをシルバーが考えていたとは知らなかったのだ。その気持ちは嬉しくあれど、何も知らないままついてきた自分が、ユウは恥ずかしくて仕方なかった。
「そ……そんな大事な話を何で教えてくれないんですか。言ってくれれば化粧道具も持ってきたのに」
「まあよい。シルバーも思うところがあるのじゃろう」
思うところとは何だろうか、とユウがリリアを見つめると、彼はユウを見てやれやれとため息を吐いた。
「そう不安になるな。あやつが無責任な男でないことはお主が一番分かっているじゃろう?」
確かに、と納得したユウはリリアに頷いた。今は夢でも見ているような気持ちだが、護衛を頑張っているシルバーを見に行っても恥ずかしくない女性としてふるまうことに専念する。そんな目標がユウを奮い立たせた。
「明日はリリア先輩の義理の娘に相応しくなるよう、精いっぱい頑張ります!」
「くふふ。お主ならきっと大丈夫じゃ」
ふわりと飛んだリリアはユウの小さな頭を撫でる。その優しい手つきでユウは不安など忘れてしまえるのだった。