彼は貴方のものじゃない
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ケイラは輝かしい朝日に祝福の歌を歌っていた。誰にも邪魔されない今日のシルバーとの結婚式を成功させるために、多くの犠牲と努力を払ってきた。この幸運は彼女にとって享受してしかるべき対価なのだ。
シルバーは今頃支度のために着替えさせられているだろう。本当は自らの手で飾り付けたいが、式が済むまでは互いの体に直で触れることは貴族として許されない。純潔であることは気高いことなのだから。だからこそ、今晩が待ち遠しくて仕方ないのだ。
「ケイラ様、湯あみをいたします」
「ええ。たっぷり薔薇をつけてね」
「ブライア・ローズと謳われる姫様のためなら」
ここ茨の谷に伝わる「いばら姫」はブライア・ローズと呼ばれ、ブライア・ローズの称号で呼ばれる女性は、美しい容貌と綺麗な歌声を持つことを谷中から認められる。もはや名声すら手にした彼女に怖いものなどなかった。
「あはは! すべて私の思い通り。なにもかも、満月のように欠けたところなんて何もないの!」
しかし、ぽつんと胸に引っかかるものがあった。
彼女がマフィンに施した薬と呪文によって、シルバーは事実上ケイラの傀儡になった。もはや自分の意思がないに等しいはずの彼は、ユウがケイラに向けた破片から守ったのだ。あの時、ケイラはシルバーが心の底から自分を愛しているのだと信じて疑わなかった。
しかし、シルバーはそれから自発的に動くことはない。そんな状態にしたのは自分だと分かってはいるが、シルバーに求められたかったのだ。だから昨晩はこっそりと彼のために用意した部屋へ忍び入った。そこで見たのは、眠ることも忘れてユウに傷つけられた左の前腕をただ眺めているシルバーだった。彼はその傷跡を包帯の上から指でなぞると、ゆっくりと目を閉じ、そのままそこに口づけた。
まるでその傷が愛おしくて仕方ないというようなその仕草を思わず見た彼女は逃げ出した。それではまるで、あの時自分を庇ったのは、ユウからつけられる傷をシルバー以外の誰にも渡したくなかったからにしか思えない。
しかし、ケイラはもはやそれは幻だと思い込むことにしていた。なぜなら、もう今日でシルバーは彼女のものになる。牢屋からせいぜい泣いて見ていなさい、とケイラは笑った。
シルバーは今頃支度のために着替えさせられているだろう。本当は自らの手で飾り付けたいが、式が済むまでは互いの体に直で触れることは貴族として許されない。純潔であることは気高いことなのだから。だからこそ、今晩が待ち遠しくて仕方ないのだ。
「ケイラ様、湯あみをいたします」
「ええ。たっぷり薔薇をつけてね」
「ブライア・ローズと謳われる姫様のためなら」
ここ茨の谷に伝わる「いばら姫」はブライア・ローズと呼ばれ、ブライア・ローズの称号で呼ばれる女性は、美しい容貌と綺麗な歌声を持つことを谷中から認められる。もはや名声すら手にした彼女に怖いものなどなかった。
「あはは! すべて私の思い通り。なにもかも、満月のように欠けたところなんて何もないの!」
しかし、ぽつんと胸に引っかかるものがあった。
彼女がマフィンに施した薬と呪文によって、シルバーは事実上ケイラの傀儡になった。もはや自分の意思がないに等しいはずの彼は、ユウがケイラに向けた破片から守ったのだ。あの時、ケイラはシルバーが心の底から自分を愛しているのだと信じて疑わなかった。
しかし、シルバーはそれから自発的に動くことはない。そんな状態にしたのは自分だと分かってはいるが、シルバーに求められたかったのだ。だから昨晩はこっそりと彼のために用意した部屋へ忍び入った。そこで見たのは、眠ることも忘れてユウに傷つけられた左の前腕をただ眺めているシルバーだった。彼はその傷跡を包帯の上から指でなぞると、ゆっくりと目を閉じ、そのままそこに口づけた。
まるでその傷が愛おしくて仕方ないというようなその仕草を思わず見た彼女は逃げ出した。それではまるで、あの時自分を庇ったのは、ユウからつけられる傷をシルバー以外の誰にも渡したくなかったからにしか思えない。
しかし、ケイラはもはやそれは幻だと思い込むことにしていた。なぜなら、もう今日でシルバーは彼女のものになる。牢屋からせいぜい泣いて見ていなさい、とケイラは笑った。