前編
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ざあざあと遠くで水の滴る音がする。その音でゆっくりと瞼を上げた少女は温かい毛布をかけられていること気が付いた。いや、これは毛布ではなく、ブレザーだ。緑色のリボンと龍の角を思わせる寮章が彼女の胸を温かくやわらかな気持ちにさせた。そっと微笑んだ彼女は、寝るときにはなかった枕まであることに気が付いた。こちらは見慣れないリュックである。機能性を重視した登山用のリュックサックで、黒地にところどころライムグリーンのラインが入っている。
むくりと起き上がった彼女は一人きりで洞窟にいた。傍の焚火は消えており、だいぶ時間は経ったのだろうかと思案する。出口である森につながる穴は雨粒が滴っており、目覚めさせたのはこの音かと彼女は気が付いた。
雨のせいで肌寒い。彼女は体操着しか身につけていなかったので、羽織らせてくれたブレザーに袖を通した。誰も見ていないのだからこれくらい大丈夫だろうと考えた結論だ。
「起きたか」
背後からかけられた言葉に肩を震わせた彼女は、すぐさま振り返った。そこには人の目をひきつける銀の髪が洞窟のロウソクに照らされてキラキラ輝いている。涼やかな顔は妖精が作ったと言われても違和感のない出来で、見つめられただけで心臓がはちきれそうになる。銀の髪をした青年――シルバーは、彼女の枕元にある石段から立ち上がり、彼女の傍まで寄って膝をついた。
「体は痛くないか」
凪のような瞳は彼女――ユウだけを見つめていて、体は痛くないけれど心臓だけは痛くて悶えそうだと心の中で呟いた。気遣うような視線が更に胸をくすぐるので、ユウは思わず笑顔をほころばせた。
「大丈夫です」
「そうか。ここは冷えるから、それは羽織っていていい」
どうやら、このブレザーをかけてくれた持ち主は、目の前の人で間違いなかった。そのことに、ユウは今にも飛び上がりそうだった。
その前に、彼女は熟睡していたせいで今までの経緯はなんとなく覚えているが、どうにも眠った前後のことは覚えていない。シルバーに視線を返すと、やはり体が痛むのかと問われ、ユウは苦笑しながら首を横に振った。
「ここは……」
「ジェイドの隠れ家の洞窟だ」
そう言われて、ユウはそう言えばそうだった、と頭の中がクリアになった。
むくりと起き上がった彼女は一人きりで洞窟にいた。傍の焚火は消えており、だいぶ時間は経ったのだろうかと思案する。出口である森につながる穴は雨粒が滴っており、目覚めさせたのはこの音かと彼女は気が付いた。
雨のせいで肌寒い。彼女は体操着しか身につけていなかったので、羽織らせてくれたブレザーに袖を通した。誰も見ていないのだからこれくらい大丈夫だろうと考えた結論だ。
「起きたか」
背後からかけられた言葉に肩を震わせた彼女は、すぐさま振り返った。そこには人の目をひきつける銀の髪が洞窟のロウソクに照らされてキラキラ輝いている。涼やかな顔は妖精が作ったと言われても違和感のない出来で、見つめられただけで心臓がはちきれそうになる。銀の髪をした青年――シルバーは、彼女の枕元にある石段から立ち上がり、彼女の傍まで寄って膝をついた。
「体は痛くないか」
凪のような瞳は彼女――ユウだけを見つめていて、体は痛くないけれど心臓だけは痛くて悶えそうだと心の中で呟いた。気遣うような視線が更に胸をくすぐるので、ユウは思わず笑顔をほころばせた。
「大丈夫です」
「そうか。ここは冷えるから、それは羽織っていていい」
どうやら、このブレザーをかけてくれた持ち主は、目の前の人で間違いなかった。そのことに、ユウは今にも飛び上がりそうだった。
その前に、彼女は熟睡していたせいで今までの経緯はなんとなく覚えているが、どうにも眠った前後のことは覚えていない。シルバーに視線を返すと、やはり体が痛むのかと問われ、ユウは苦笑しながら首を横に振った。
「ここは……」
「ジェイドの隠れ家の洞窟だ」
そう言われて、ユウはそう言えばそうだった、と頭の中がクリアになった。
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