「据え膳食わぬは男の恥」と親父殿に教わった
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「お前知らねーの? 『目隠しゲーム』」
意地悪な笑顔で見下ろしてくるエースに、ユウは首を傾げる。そもそもこの世界に来たばかりの人間からすれば、流行りなど気にしていられるほど暇でもない。グリムが「何なんだそれ!」と興味津々で聞くので、ユウはエースに説明を求めた。
エースによると、目隠しゲームは二人で遊ぶもので、一人が目を閉じて人差し指を出す。その指にもう一人が自分の体の一部を触れさせて、どの部分に触れているか目を閉じているプレイヤーが当てるというものだ。
「感触だけで当てるのは、本当に難しいんだ」
デュースが肩をすくめて首を横に振る。エースが楽しそうに「全く違う体の部分とか言っているのを見ると、笑うの堪える方が大変だぜ」と笑ってユウの肩に腕を回した。
「今度、ユウも一緒にやろう」
楽しそうなデュースの笑顔につられて、ユウは思わず頬を上げる。こんな風に友人たちを楽しませるゲームなら、きっと楽しいに違いない。
「暇があればいいよ」
*
談話室でその経緯を聞かされていたシルバーは、目の前で挙手をしたユウを眺めていた。彼女の眼はいつになく輝いている。シルバーはそんな彼女の様子だけで、ぎゅんと心臓を鷲掴みされた。
「ということでやってみましょう」
「どちらからする?」
「ここは公平にじゃんけんで!」
ユウの「じゃーんけーん」とのびやかな声が談話室に響く。振り上げたこぶしを下ろすと同時に、「ぽん!」と手が揃った。小さな手は握りこぶしを作っており、大きく武骨な手は真っ直ぐに開いている。
「俺の勝ちだな」
「じゃあ先輩は目を瞑ってください。私の体の一部くらい当ててくださいよ」
ユウの言う通り、シルバーは目を閉じた。彼が差し出した人差し指に何を当てるべきか彼女は悩んだ。ここはエースの言うように王道の掌を当てるのが最善だろう。ユウは掌をシルバーの指先に押し付けた。
「ううん……これは、なんだ?」
眉間に皺を寄せて首を傾げるシルバーに、ユウは空いた手で握りこぶしを作って応援した。
「頑張って下さい!」
シルバーは彼女の声援を受け、なるべく当てようと人差し指を動かす。手のひらをくすぐられたユウは、両足をバタバタと上下させて耐えた。
「せんぱっ……くすぐったいです!」
「ふふ」
珍しく笑ってるシルバーに、ユウは思わず彼の指を掌で包んでしまいそうになった。これでは言葉の少ない彼と限りある時間を楽しめる遊びをする意味がなくなる。シルバーは目を閉じながら、眉間の皺を深くした。
「手の甲か?」
「残念。掌です」
パッと目を開けたシルバーは、彼女の小さな手のひらに突き付けた指先を見て、目を丸くした。「案外、難しいものだな」と呟くシルバーに、ユウは「デュースもそう言ってました!」と笑みを深める。
「じゃ、次は私の番です!」
さっさと目を閉じて、ユウは人差し指を出す。そんな彼女の顔を見て、シルバーは唐突にキスをしたくなった。彼女が折角遊びを教えてくれているのに、そんな不純なことを思ってはいけないと彼は首を振る。しかし、目を閉じて待っている彼女を見ていると、徐々に彼の中で別の声が脳内を占めていった。そもそも惚れている女が無防備に目を閉じて待っているのは、男の欲を掻き立てる燃料でしかない。
彼はそっと彼女のわきに空いたスペースに手をついて、柔らかなその頬に唇を寄せた。小鳥がさえずるような甘い音が談話室の静寂に飛び込む。
「え? 今の何?」
反射的に頬を押さえたユウは、それでも律義に目を開けない。シルバーはすかさず彼女のうなじに手を這わせ、その唇を奪った。押し付けられたその動きで、二人はそのままソファに倒れ込む。あまりの出来事にユウは目を開けた。
「ちょ、ちょっとストップ!」
ユウの真っ赤な頬は熟れたリンゴのようだ。シルバーの唇を掌で押さえた彼女は、肩で息をしながら必死に言い募る。
「先輩! ゲームになってないですって」
責めるような視線に、シルバーは顔色一つ変えない。それどころか彼女のうなじを撫でていた手で、口を塞ぐ手を外した。
「すまない。お前が可愛くて、触れてしまった」
真っ直ぐにこちらを見ながら囁かれる甘い言葉に、ユウの耳まで赤く色づく。彼女の耳元で心臓がシンバルのように派手な音を立てた。
「そんなこと言って……ごまかされませんからね。絶対に」
睨みつける彼女の上目遣いは威嚇というより、シルバーの庇護欲を掻き立てる。彼の腕に閉じ込められているこの状況で、首まで真っ赤になっている彼女は檻の中だと気づいていない。無防備にもほどがあると叱りつけたい気持ちといっそこのまま閉じ込めてしまおうという独占欲が彼の胸のうちで吹き荒れた。
「ユウ」
甘い声に、彼女は体をがんじがらめに絡めとられる。激しく燃えるオーロラシルバーから彼女は目を逸らせなかった。
「先輩として忠告しておく。このゲームはあまり他の男としない方がいい」
「なぜですか?」
小首をかしげるユウの愛らしさに、シルバーはいっそこのまま手を出して教え込んだ方が彼女も自分も救われる気がしてくる。しかしそこをぐっと堪えて、シルバーは言葉で訴えた。
「お前はもう少し、自分が魅力的であることを自覚しろ。無防備すぎて先ほどから手を出し放題なのに、お前は一切抵抗できていない」
憂いで眉根を寄せているシルバーの色っぽい表情と本気で心配している言葉に、ユウの頭は彼のことで飽和した。知らず、興奮で真っ赤に染まった唇からポロリと願望が零れた。
「先輩になら、手を出してほしい……です」
シルバーは思わず普段の涼しい顔を驚愕で彩った。羞恥で真っ赤に熟れたユウの頬やうっすら色づく首筋が目に毒だ。彼女の潤んだ瞳がねだるようにシルバーを見上げている。シルバーはごくり、と唾を飲んだ。
「それを言う相手は俺だけにしろ」
END
意地悪な笑顔で見下ろしてくるエースに、ユウは首を傾げる。そもそもこの世界に来たばかりの人間からすれば、流行りなど気にしていられるほど暇でもない。グリムが「何なんだそれ!」と興味津々で聞くので、ユウはエースに説明を求めた。
エースによると、目隠しゲームは二人で遊ぶもので、一人が目を閉じて人差し指を出す。その指にもう一人が自分の体の一部を触れさせて、どの部分に触れているか目を閉じているプレイヤーが当てるというものだ。
「感触だけで当てるのは、本当に難しいんだ」
デュースが肩をすくめて首を横に振る。エースが楽しそうに「全く違う体の部分とか言っているのを見ると、笑うの堪える方が大変だぜ」と笑ってユウの肩に腕を回した。
「今度、ユウも一緒にやろう」
楽しそうなデュースの笑顔につられて、ユウは思わず頬を上げる。こんな風に友人たちを楽しませるゲームなら、きっと楽しいに違いない。
「暇があればいいよ」
*
談話室でその経緯を聞かされていたシルバーは、目の前で挙手をしたユウを眺めていた。彼女の眼はいつになく輝いている。シルバーはそんな彼女の様子だけで、ぎゅんと心臓を鷲掴みされた。
「ということでやってみましょう」
「どちらからする?」
「ここは公平にじゃんけんで!」
ユウの「じゃーんけーん」とのびやかな声が談話室に響く。振り上げたこぶしを下ろすと同時に、「ぽん!」と手が揃った。小さな手は握りこぶしを作っており、大きく武骨な手は真っ直ぐに開いている。
「俺の勝ちだな」
「じゃあ先輩は目を瞑ってください。私の体の一部くらい当ててくださいよ」
ユウの言う通り、シルバーは目を閉じた。彼が差し出した人差し指に何を当てるべきか彼女は悩んだ。ここはエースの言うように王道の掌を当てるのが最善だろう。ユウは掌をシルバーの指先に押し付けた。
「ううん……これは、なんだ?」
眉間に皺を寄せて首を傾げるシルバーに、ユウは空いた手で握りこぶしを作って応援した。
「頑張って下さい!」
シルバーは彼女の声援を受け、なるべく当てようと人差し指を動かす。手のひらをくすぐられたユウは、両足をバタバタと上下させて耐えた。
「せんぱっ……くすぐったいです!」
「ふふ」
珍しく笑ってるシルバーに、ユウは思わず彼の指を掌で包んでしまいそうになった。これでは言葉の少ない彼と限りある時間を楽しめる遊びをする意味がなくなる。シルバーは目を閉じながら、眉間の皺を深くした。
「手の甲か?」
「残念。掌です」
パッと目を開けたシルバーは、彼女の小さな手のひらに突き付けた指先を見て、目を丸くした。「案外、難しいものだな」と呟くシルバーに、ユウは「デュースもそう言ってました!」と笑みを深める。
「じゃ、次は私の番です!」
さっさと目を閉じて、ユウは人差し指を出す。そんな彼女の顔を見て、シルバーは唐突にキスをしたくなった。彼女が折角遊びを教えてくれているのに、そんな不純なことを思ってはいけないと彼は首を振る。しかし、目を閉じて待っている彼女を見ていると、徐々に彼の中で別の声が脳内を占めていった。そもそも惚れている女が無防備に目を閉じて待っているのは、男の欲を掻き立てる燃料でしかない。
彼はそっと彼女のわきに空いたスペースに手をついて、柔らかなその頬に唇を寄せた。小鳥がさえずるような甘い音が談話室の静寂に飛び込む。
「え? 今の何?」
反射的に頬を押さえたユウは、それでも律義に目を開けない。シルバーはすかさず彼女のうなじに手を這わせ、その唇を奪った。押し付けられたその動きで、二人はそのままソファに倒れ込む。あまりの出来事にユウは目を開けた。
「ちょ、ちょっとストップ!」
ユウの真っ赤な頬は熟れたリンゴのようだ。シルバーの唇を掌で押さえた彼女は、肩で息をしながら必死に言い募る。
「先輩! ゲームになってないですって」
責めるような視線に、シルバーは顔色一つ変えない。それどころか彼女のうなじを撫でていた手で、口を塞ぐ手を外した。
「すまない。お前が可愛くて、触れてしまった」
真っ直ぐにこちらを見ながら囁かれる甘い言葉に、ユウの耳まで赤く色づく。彼女の耳元で心臓がシンバルのように派手な音を立てた。
「そんなこと言って……ごまかされませんからね。絶対に」
睨みつける彼女の上目遣いは威嚇というより、シルバーの庇護欲を掻き立てる。彼の腕に閉じ込められているこの状況で、首まで真っ赤になっている彼女は檻の中だと気づいていない。無防備にもほどがあると叱りつけたい気持ちといっそこのまま閉じ込めてしまおうという独占欲が彼の胸のうちで吹き荒れた。
「ユウ」
甘い声に、彼女は体をがんじがらめに絡めとられる。激しく燃えるオーロラシルバーから彼女は目を逸らせなかった。
「先輩として忠告しておく。このゲームはあまり他の男としない方がいい」
「なぜですか?」
小首をかしげるユウの愛らしさに、シルバーはいっそこのまま手を出して教え込んだ方が彼女も自分も救われる気がしてくる。しかしそこをぐっと堪えて、シルバーは言葉で訴えた。
「お前はもう少し、自分が魅力的であることを自覚しろ。無防備すぎて先ほどから手を出し放題なのに、お前は一切抵抗できていない」
憂いで眉根を寄せているシルバーの色っぽい表情と本気で心配している言葉に、ユウの頭は彼のことで飽和した。知らず、興奮で真っ赤に染まった唇からポロリと願望が零れた。
「先輩になら、手を出してほしい……です」
シルバーは思わず普段の涼しい顔を驚愕で彩った。羞恥で真っ赤に熟れたユウの頬やうっすら色づく首筋が目に毒だ。彼女の潤んだ瞳がねだるようにシルバーを見上げている。シルバーはごくり、と唾を飲んだ。
「それを言う相手は俺だけにしろ」
END
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