前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
魔法史ではその歴史だけでなく、様々な魔法の実践方法について講義がされる。そして今日は生徒のほとんどが待ちわびていた惚れ薬についての講義が行われていた。
「惚れ薬には様々な効果がある。動悸、眩暈、高揚感、心拍数の上昇。そして最初に見た人物への愛情の芽生えを錯覚する」
トレインの深い声が教室に響く中、シルバーは板書されていることを書きとめる。彼が視線を感じてノートから目を外し横を見ると、壁際にいる監督生が俯いてノートをとっている。気のせいかと思って視線を下げれば、再びこちらを見る気配がする。再び視線を横に向ければ、琥珀の瞳と交わった。
腹に拳を入れられたような衝撃で、シルバーは一瞬息が止まる。しかし、監督生の視線は再び逸らされてしまった。跳ねまわる心臓がうるさくて、トレインの言葉が何一つとして入ってこない。たかが一瞬の視線の交わりでも、彼女の瞳に捉えられただけで胸に痛みが走る。
「惚れ薬を飲まされた非魔法士には独特の症状が現れる。それが129ページにある、『瞳孔がハートの形になっていること』だ。だからまず、惚れ薬を飲まされたかどうかの確認は、非魔法士の場合、目を見て診断することも多い」
りーんごーん、と鐘が鳴り、トレインが「今日はここまで」と愛猫のルチウスを抱えて教室を去る。ほっとしたシルバーの横には入り口があり、そこへ生徒たちが集中して出て行く。無論、監督生も彼の目の前を通っていった。
ふわり、と鼻腔をくすぐったのはセベクの匂いだ。彼は洗浄魔法が使えないため、洗い物はもっぱら洗濯機にかける。その彼が使っている洗剤の香りがして、シルバーの体は見えない鎖に縛られた。もし、監督生がセベクと体の関係まで進めていたなら――その続きを考える前に、シルバーは手袋が悲鳴を上げるほどきつく拳を握る。かくなる上は、相応の覚悟を持ってこの気持ちと決別しなければならないと、彼は決意した。
彼以外誰もいなくなった教室に、始業の鐘が鳴る。そこに佇んでいる銀の髪は影の中で鈍く光った。
「惚れ薬には様々な効果がある。動悸、眩暈、高揚感、心拍数の上昇。そして最初に見た人物への愛情の芽生えを錯覚する」
トレインの深い声が教室に響く中、シルバーは板書されていることを書きとめる。彼が視線を感じてノートから目を外し横を見ると、壁際にいる監督生が俯いてノートをとっている。気のせいかと思って視線を下げれば、再びこちらを見る気配がする。再び視線を横に向ければ、琥珀の瞳と交わった。
腹に拳を入れられたような衝撃で、シルバーは一瞬息が止まる。しかし、監督生の視線は再び逸らされてしまった。跳ねまわる心臓がうるさくて、トレインの言葉が何一つとして入ってこない。たかが一瞬の視線の交わりでも、彼女の瞳に捉えられただけで胸に痛みが走る。
「惚れ薬を飲まされた非魔法士には独特の症状が現れる。それが129ページにある、『瞳孔がハートの形になっていること』だ。だからまず、惚れ薬を飲まされたかどうかの確認は、非魔法士の場合、目を見て診断することも多い」
りーんごーん、と鐘が鳴り、トレインが「今日はここまで」と愛猫のルチウスを抱えて教室を去る。ほっとしたシルバーの横には入り口があり、そこへ生徒たちが集中して出て行く。無論、監督生も彼の目の前を通っていった。
ふわり、と鼻腔をくすぐったのはセベクの匂いだ。彼は洗浄魔法が使えないため、洗い物はもっぱら洗濯機にかける。その彼が使っている洗剤の香りがして、シルバーの体は見えない鎖に縛られた。もし、監督生がセベクと体の関係まで進めていたなら――その続きを考える前に、シルバーは手袋が悲鳴を上げるほどきつく拳を握る。かくなる上は、相応の覚悟を持ってこの気持ちと決別しなければならないと、彼は決意した。
彼以外誰もいなくなった教室に、始業の鐘が鳴る。そこに佇んでいる銀の髪は影の中で鈍く光った。