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平和な日常~夏~

同じ七月中旬、イギリスのメルディアナ魔法学校では卒業式が行われていた

この日はネギ・スプリングフィールドやアンナ・ユーリエウナ・ココロウァことアーニャなど、数名の生徒が卒業する日なのである

厳かな空気の中で進行する卒業式ではネギは純粋に希望に満ちた表情だが、彼は関係者一同の複雑そうな表情には気付かない

たった一人の子供のせいでメルディアナが被った被害は甚大であり、正直ネギが卒業してホッとする者は少なくない

しかしその一方では長年メルディアナを支えて来たスプリングフィールド学校長が退任することで、この先に不安を感じる者もまた少なくないのだ

誰もが決して口には出さないが、死んでも厄介事を残したナギを恨めしく思う者も多かった


「ネギ、何て書いてた? 私はロンドンで占い師よ」

そんな卒業式に続きスプリングフィールド学校長の退任の挨拶などが終わると、会場を後にしたネギにアーニャとネカネ・スプリングフィールドが駆け寄り卒業後の修行先を尋ねていた


「えーと……、修行の旅に出ること?」

「えっ!?」

「たっ、旅!?」

それは今までの慣例にはない異例のことだった

本来ならば修行先が書いてるはずなのだが、受け入れ先がないネギには当然書いてるはずがない

ネギとアーニャとネカネはキョトンとして我が目を疑うが、現実が変わる訳ではないのだ


「校長! 旅ってどういうことですか!? ネギはまだ十歳なんですよ!」

「もう決まったことじゃ。 それに一人ではなくワシが同行するから心配無用じゃよ」

あまりに不可解な卒業後の行く末にネカネやアーニャはスプリングフィールド学校長に訳を尋ねに行くが、彼はいつもと同じ笑顔で特別おかしくはない修行だと告げるしか出来ない



この後ネギと祖父の二人は、一週間ほどの準備期間を過ごしたのち静かにメルディアナを旅立つことになる

その行く先を祖父は誰にも明かさずに出発し、心配するネカネやアーニャには定期的に手紙を出すとしか告げなかった

メルディアナ魔法協会の関係者は最後まで複雑そうな表情だったが、対照的に祖父の方はすっきりとした表情である

魔法協会を辞めた彼は今度こそ孫の未来だけを考えれる立場になり、逆にすっきりしたというか肩の荷が降りたのかもしれない

彼らの行く先は決して平穏ではないだろうが、それでも希望に満ちたネギは祖父にとっても希望であり自らの手で育成出来ることはよかったかもしれないと思う


何はともあれネギ・スプリングフィールドは旅立ちの時を迎えていた

本来の歴史とはだいぶ違うネギの旅立ちだが、これがよかったのか悪かったのかは一概に言えることではない


ただこの旅立ちを監視していた土偶羅だけは、麻帆良に来なくて人知れずホッとしていた

どう考えてもネギの存在は明日菜や横島のプラスにはならないのだから

現状でも土偶羅が密かに警護している明日菜は世界で一番安全な存在なのだから、余計な注目を集める厄介者はゴメンだった


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