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GS試験再び……

それから数週間が経過して四月に入り、六道女学院では新学期が始まっていた

春休みを挟んだ影響からか、おキヌ・かおり・魔理の三人は表面上は落ち着いており、クラスメート達も先月の三人の様子がおかしかった事など誰も覚えてない

三人の友情は相変わらず微妙な距離感があり横島の事は口にしないままだが、ある程度元の関係に戻っている


「来週のGS試験やけど、霊能科の三年は見学に行くからしっかり勉強して来るんやで」

そんな新学期のある日、三年になっても引き続き担任の鬼道が連絡事項に続き、来週に迫ったGS試験の見学を伝える

これは霊能科の三年は毎年行う見学であり、卒業後を見据えた将来のための社会勉強の一貫でもあった


「それと今回からGS試験が変わるみたいやから、各自資料を読んでよく考えるように」

鬼道の話を聞き各自GS試験の資料に目を通す生徒達は、変更点に関して様々な反応を示す

特に新たに書類審査枠が新設された事に関しては、多くの生徒が喜びの声をあげていた


「二次審査の実戦をしないでGS免許を交付するなんて…」

資料に目を通すかおりは、突然の新しい制度に驚きを隠せない

しかも書類審査の明確な基準は書かれて無く、合格者数や合格基準も無いためかなり曖昧なままだったのだ


「どういう事でしょうか?」

「この資料では良く解りませんが、もしかすると氷室さんには有利かもしれません。 ネクロマンサーは対人戦闘に向きませんが、対霊ではかなりの威力を発揮します。 おそらくそんな対人に不向きな能力者のための制度でしょう」

書類審査の利点がわからないおキヌに、かおりは非戦闘系の能力者のための制度ではと教える

この非戦闘系の能力者に対する試験の不利な問題は、以前から六道女学院内でも度々議論になっていた

悪霊や妖怪と戦うのだから強さは当然必要だが、あまりに対人戦闘に偏りすぎているGS試験には根強い不満も多かったのである


「そうですか…」

自分に有利だと言われたおキヌだが、あまり嬉しそうではない

GSと言う職業に対する迷いもあり、いざ試験が有利になると言われても相変わらず複雑なようだ


「あたしには関係無いな…」

一方かおりの説明を聞いていた魔理は、あまり興味が無い様子でつぶやく

特別な能力も無くGSが遠い世界に感じる今の魔理には、全く興味が無い話のようである


来週のGS試験の見学を楽しみにするクラスメートの中、おキヌ達三人は表情にこそ表さないものの微妙な感情を抱えたままであった


(横島さん…)

そしておキヌは、かつての横島のGS試験を思い出す

とても厳しく命の危険すらあったGS試験は、今のおキヌにとってまるで別世界の事のように感じられる

自分のような未熟者が、あの時の横島のように勇気を持って戦えるのだろうか

かつて令子の反対を押し切って雪之丞戦に向かった時の横島を思うと、おキヌは今の自分が酷く弱く感じてしまった

そしてこんな時もし横島が居れば、自分に何と言葉をかけてくれたのだろう

今のおキヌは、その言葉すら思い浮かばないままである


こうして様々な想いを抱えたまま、おキヌ・かおり・魔理の三人の高校生活最後の一年は始まった



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