唐巣が少し驚きの表情を浮かべる中、魔鈴の話は続いていく

能力は優秀だが過去に起こした事件と人付き合いの悪さから、あまりいい評判で無かった雪之丞だが実像は全く違うと…

人付き合いの不器用さは目立つが、決して悪い人間ではない


それどころか、真剣にＧＳとして将来を考えている事を魔鈴は知っていた

あまり好きでは無い戦闘以外の除霊も文句一つ言わずに、逆に覚えようとさえしているのだ

魔鈴はそんな雪之丞の現状を唐巣とエミに説明して、このＧＳ試験をきっかけに変わった雪之丞を業界関係者に見てほしいと考えている


「そうか…　確かにＧＳ試験は多くの関係者が注目をしている。　雪之丞君がＧＳとして生きて行くならいい機会かもしれないね」

魔鈴の話に驚きを感じていた唐巣だが、その考えに賛成をする

一回定着したイメージはなかなか変わらないが、だからと言って諦めたら終わりだ

それに現代の魔女として有名な魔鈴の元ならば、雪之丞のイメージも徐々に変わっていくだろうと思う


「タイガーも試験は受けさせるわ。　対人戦闘に関しては不得意とは言えないし、ここで一皮向けないといずれタイガーが苦しむワケ」

魔鈴に続きタイガーの事を話すエミだが、こちらは師匠の権限で強制的に試験を受けさせるようだ

ここで精神的に成長しないと、厳しいＧＳ業界を生き抜けないとエミは考えていた

何だかんだ言っても危険で厳しい業界である

覚悟も無く中途半端なタイガーは、このままではＧＳとして生きていけないのだ


「うむ…、タイガー君もそれがいいかもしれないね。　彼の能力は貴重かつ優秀だ。　その分、特殊な事件や戦いに巻き込まれやすい。　ＧＳとして生きていくなら覚悟が必要だろう」

タイガーの場合、ＧＳになればテレパスという特殊な能力を求める依頼が増える可能性がある

それは通常の除霊では対処出来なかった事件などが多い

ある意味危険な依頼や事件に巻き込まれやすい能力であった


タイガー自身が自分の力量を正確に把握して無理な依頼は断ればいいのだが、押しに弱く変に甘いタイガーでは断れないかもしれない

タイガーが第二の横島のようになりやすい可能性がある事を、唐巣は見抜いていた


「ところでタイガーの様子はどう？」
　
「そちらはなんとも…　試験対策は多少進んでますが、精神的な問題は根が深いようで…」

唐巣の用件が終わった頃、今度はエミがタイガーの様子を聞いていた


始めはとりあえず数日の約束だったが、試験対策としては進んでいるようなので伸ばしていたのだ


「そう…」

魔鈴の話にエミは考え込む

自分が不得意な接近戦の修業は進んでいるのでそこはいいのだが、やはり精神的な問題は難しい現状に今後どうするか悩んでいた


「後、彼女とも上手く行ってないようで、それも精神的不安定に拍車をかけてるようです」

考え込むエミに、魔鈴は卒業パーティー以来タイガーと魔理が上手く行ってない事も話していく


「それは仕事とは別問題でしょ？」

「いえ、それがかなり関係あるようです。　あの日以来ＧＳと言う仕事や霊能力について悩んでるようですし、複雑な過去も影響しているようで対応が難しいです」

エミは色恋沙汰と仕事はあまり関係無いと思っていたようだが、未熟なタイガーは全てが繋がっている

魔鈴の説明を聞いたエミは、結局試験まではタイガーを預ける事を決めてこの日は帰っていく