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麻帆良祭

「悪いな、木乃香ちゃん。 朝飯作っておいたからゆっくり食って楽にしててくれ」

「ウチはええよ。 任せてえな」

次の日になり早朝の早い時間に横島の店にやって来たのは木乃香である

すでに冷蔵庫や厨房には大量のスイーツが完成しており、木乃香はこれからスイーツを受け取りに来る客に引き渡しをするのが仕事だった

横島は仮設店舗の仕込みに行かねばならないが、注文品の引き渡しは九時近くまで時間がかかる為に事前に店番を頼んでいたのだ


「これ一人で作ったんや……」

横島が出掛けた店内では木乃香は注文表とスイーツを確認していくが、その数には驚きを隠せない

洋菓子だけでも複数種類で合計数百個あるし、和菓子もかなりの数がある

全て綺麗に持ち帰り用の箱に入れられており、賞味期限と保存場所などがきちんと書かれていた

一応確認する木乃香だが、本当に渡すだけの状態で置かれている

厨房も綺麗に掃除されており特にやることもない木乃香は、横島が用意してくれた朝食を食べて受け取りに来る客を待つのだった


「おう木乃香ちゃん、今日は休みじゃないのか?」

「いらっしゃい~ 今日は休みなんやけど、麻帆良祭の注文品の受け渡しがあるんよ。 コーヒーならええよ」

そのまま朝食を食べ終わり本を読みつつ受け渡しをしていた木乃香だが、店の常連の近所の老人がやって来る

この日は看板は出してないが、店に明かりが点いていたので顔を出してみたらしい

この老人は朝夕の二回ほぼ毎日コーヒーを飲みに来る客だった

夕方何度も顔を合わせるうちに木乃香も顔見知りになった一人である

木乃香は暇だったこともあり、せっかく来たのだからとお年寄りにコーヒーを出していた


結局その後も何人かの常連が店の明かりを見て顔を出すが、木乃香は食材などがない関係で飲み物だけで営業をしていく

ちなみに横島には最初の老人にコーヒーを出してからメールで営業する確認をしたが、《オッケー》の一言で終わりだったりする

横島としては営業まで頼むつもりはなかったが、木乃香が営業すると判断したならそれで構わないのだろう

というか最近木乃香は店の鍵も預かってるし金庫の暗証番号も知っている為、何気に一人で営業するのも問題なかったりする

実際営業した時間は短いが引き渡しの客が終わるまで、木乃香は常連を中心に飲み物限定の営業をしていく



「横島さんと木乃香の写真、最終選考まで残ったらしいわよ」

「写真ってなんだ?」

一方仮設店舗で仕込みをしていた横島に予期せぬ情報を持ち込んだのは朝倉和美だった


「あれ? 知らないの? 麻帆良大の写真系サークル合同主催のコンテストに二人の写真が出品されてるわよ」

「そういえば、写真撮られたんだったな。 まさか本当にコンテストに出すとは……」

和美が持ち込んだ情報は横島が以前木乃香と撮られた写真がコンテストの最終選考に残ったとの情報だったが、横島は一つ勘違いをしていた

出品された写真が最初に撮った写真ではなく、後から偶然撮られた写真だとは気付くはずもないことである



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