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麻帆良祭

そのまま買い食いやイベント見物しながら帰った横島と明日菜だったが、横島宅ではすでにさよが帰宅しておりテレビを見ている

横島はさよに一声かけると店の厨房に向かい注文を確認していた

注文とは中等部のクラスや茶道部などのサークルから頼まれたスイーツの注文である

早い注文は明日の前日から入っていたのだ

時間のかかる物や日持ちのする物を中心に、下拵えはしておかねば間に合わなくなるのである


「これからお仕事ですか?」

「麻帆良祭の注文が入ってるんだ。 和菓子と洋菓子の両方あるから寝る前にある程度作らんと間に合わないからな」

興味津々な様子でさよが見守る中、横島は地下から小豆やもち米などの材料を運んでスイーツ作りを始める

流石に生クリームやフルーツを使用するケーキは朝に作るが、ようかんやゼリーなどは今から作るようだった


「お仕事熱心なんですね」

「うちは喫茶店だし、そんなつもりじゃ無かったんだけどな~」

さよは横島が仕事熱心なんだと感心しているが、実はただ成り行きで受けただけである

開店からしばらくは普通に店のメニューとしてケーキなどスイーツを作っていたのだが、それをいつからか持ち帰りで買って帰る客が現れたのだ

元々あまり深く考えなく持ち帰りオーケーにしたら口コミで持ち帰り客が増えたのである

和菓子に関しては気分次第で作って顔見知りの客に出してたのだが、茶々丸に頼まれて茶道部に大量販売してから客が増えていた

今回も茶道部の他に和風喫茶店をやるクラスなどからも和菓子の注文が入っている

口コミの恐ろしさというか麻帆良の情報伝達の速さは凄いもので、注文量の多さに早い段階で受けた注文以外は断っていたがそれでも作る量が多かった

結局夜と朝方の二度に分けて注文品を作っていくことになる



「美味しいわ~」

「横島さんって相変わらずマメよね」

一方横島と一緒に屋台巡りをしていた明日菜は、帰宅してお土産の食べ物を木乃香に渡し今日の出来事を話していた

実は買い食いをしてる最中に美味しい物があると、木乃香達にお土産だと横島が買っていたのである

流石にクラスメート 全員に買うとかはしないが、明日菜と同室の木乃香や親しい夕映達にはお土産を買っていたのだ


「横島さんって、たまに不器用に見える時があるのよね。 なんか無理してるって言うか、怖がってるって言うか」

「そやな~ ウチもそう思うわ」

お土産を食べつつ二人は何故か横島の話題になるが、どこかアンバランスな横島に二人は共通の違和感を抱えていた

あまり深入りしなければ普通のいい人で終わるのだろうが、二人は横島に深く関わってるだけあって何かおかしいと感じるのは仕方ないだろう

二人に共通するのは横島が思ってる以上に横島を理解してることである

木乃香のみならずバカレッドの異名をとる明日菜でさえ、朧げだが横島の本心に近付きつつあった


「放っておけばまた悪い女に騙されて居なくなるんじゃない?」

「普通ならありえへんけど、横島さんなら否定出来ないな~」

横島の本心というか裏側の一端に気付きかけている明日菜だったが、問題は僅かな真実以上に誤解が多いことだろう

明日菜の心配は木乃香に伝わり、彼女達は横島が悪い女に騙されないように気をつけてあげないと危ないとの話になっている

真実に一歩近付いた二人だったが、それ以上に誤解も進行していた


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