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真の歴史へ・その三

同じ頃、成田空港には大樹と百合子の姿があった


「お帰りなさいませ」

二人を出迎えに来ていたのは村枝商事の黒崎である


「突然無茶な頼みしてゴメンね。 どこかでさっそく報告を聞きたいわ」

「会社の会議室は押さえてます」

挨拶程度の会話をした百合子達は、早々に黒崎の運転で会社に向かって車を走らせていく


さて本来帰国するはずのない二人が何故この時期に帰国したかと言えば、横島達が大樹と百合子にある調査を頼んだためである


「それで南部グループについて何かわかった?」

黒崎が車を走らせてる中で、百合子は長旅にも疲れ一つ見せずに状況を尋ねていた


そう、横島達が百合子に頼んだのは南部グループの内部調査である

未来に比べて格段に力を付けた現在の横島達だが、やはり弱点は人間社会での基盤の弱さだった

相手が人間であり会社という現状の難しさに、ルシオラは密かに百合子に南部グループの調査を頼んでいたのだ


「はい。 最低限の情報は調べましたが、思った以上にガードが固く調べるほどの情報は集まってません」

黒崎が語る現状報告に大樹と百合子はふと考え込む


「忠夫達が何を調べたがってたかはわかったか?」

「それはまだわかってません。 ただ南部グループは、最近オカルト関連の会社の買収にも積極的です。 加えてきな臭い噂が多少ありますが、真相は不明です」

報告を聞き再び考え込む二人は、実は詳しい事情を何もしらないらしい

それはルシオラが二人の安全のために、詳しい事情を何も言わずに頼んでいた為である


「あまりいい噂を聞かん会社なのは確かだな…… ナルニアにも評判が聞こえてるよ」

関わると危険な予感を感じる大樹は珍しく表情が険しい

長年商社で働いていると、知りたくない事でも耳に入る時があるようだ


「やっぱり帰国して正確ね。 何か嫌な予感がするわ。 あの子達が何をしたいのかわからないけど、人間社会に疎い部分があるのよね」

横島達が人知を越える力を持つ事は理解しているが、同時に人間社会に多少疎いのも理解している百合子が横島達を心配して帰国したようである


「とりあえず、これ以上調べるには俺達も気合いを入れないとな……」

予想以上に危うい現状に気合いを入れるようにつぶやく大樹

三人は今後の対策を話し合う為に会社に急いでいく


一方、横島事務所ではタマモの周りに雪之丞達が集まっていた


「凄いですね」

驚きの声を上げる小鳩の目の前で、タマモは式神ケント紙から本物と変わらぬ姿の鳥型の式神を次々に作っていく

式神ケント紙を鳥の形に切って簡単な簡易式神の術をかけると、その鳥は本物のように室内を飛び回るのだ


「簡単な術よ。 この式神ケント紙のおかげで楽でいいわ。 随分術を簡素化できるもの」

まるで切り絵のようにさくさくとハサミで切っては鳥になる式神に、おキヌ達は驚きと感動している

タマモが使うこの術は元々は仙術の一種なのだが、式神ケント紙のおかげでかなり簡単に出来ていた

本来は元になるの木や紙や葉っぱに複雑な術をかけて簡単式神にするのだが、元々簡易式神の術がかかっているケント紙のおかげでタマモは姿を変えるだけでかなり楽だった


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