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二年目の春・7

「どうでしょう? 」

一方この日の夕方には雪広グループの食品部門である雪広食品の社員が来ていて、この日の夜の試食会の為に取り寄せた魚介類を社員の反応を確かめに来ていた。

主に刺身用の養殖や冷凍物の魚介類が中心であるが鮮魚も海外産の割安な物を揃えている。

麻帆良祭で使うには安価で大量に魚介類が必要なので横島が頼んでいたのだが、横島自身もまさか社員が来るとは思ってなかったらしく不思議そうだ。

ただ麻帆良祭のレストランは雪広グループの宣伝を兼ている為にグループで扱う魚介をどの程度扱って貰えるかは死活問題になる。


「いい物っすね。 これならワンコインでも行けますかね?」

「そうですね。 原価を販売価格に百パーセント転化してもなんとか利益は出るでしょう。 昨年同様に原価負担を半分にすれば十分かと。」

雪広食品の担当者も昨年の成功の影に横島が居たのはすでに承知の事実であり今年は力の入れようが違う。

肝心の魚介類もひと昔前と違い養殖や冷凍技術が発達した現代においては早々味が落ちるという程でもない。

無論明確な味の違いはあるにはあるが下処理から輸送まできちんとしてるだけに美味しく頂けるものになる。


「おさかなさんおいしいね。」

「ほんまや。」

とりあえず切り分けて雪広食品の人と木乃香とのどかとタマモと一緒に試食するが、味が分かるタマモや木乃香にも評判がよく雪広食品の人が安堵しているのがわかる。


「マグロも養殖なんですね。 そう言えばマグロの完全養殖が可能になったとか……。」

「これは畜養物になります。 完全養殖は麻帆良大と近大の共同研究にて一昨年可能になりましたが、まだ商業ベースではないですね。 あと十年はかかるかと。」

なお海鮮ひつまぶしのメインとなるマグロに関しては雪広食品が海外にて独自に畜養したマグロになり、こちらは系列の飲食店にて出されてる物だった。

基本的に市場には回らない物なので横島も始めて見たが値段の割にやはり美味しい。

それと少し話はそれるがこの世界において麻帆良大の水産学部は日本でも最先端の養殖研究をしていて、マグロの完全養殖が一昨年には近大との共同研究にて成功するなど成果が出ていてマグロ資源の減少の救世主になると騒がれている。

のどかは一瞬今回のマグロも完全養殖かと頭に浮かんだが、流石に二年では売れるほど成長しないだろうと自ら気付いたようで顔を少し赤らめていたが。


「海鮮ひつまぶしはこれでいくん?」

「近海の鮮魚なんか使ったら千円は取らないとあかんからな。 一食千円はキツいだろ。」

「そうやな。 やっぱり学生に千円はちょっとキツいわ。」

今回はあくまでも3ーAの試食会用に用意した物なので本番のメニューに採用するかは未定だが値段と味を考慮するといいメニューが出来上がっており、横島は木乃香達と共に出汁や薬味をどうするかを話し合いつつ試食会に備えることになる。

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