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二年目の春・5

「どうやって足の痛みを見抜いたの?」

「どうやってって言われても……。 なんとなく?」

どうも陣内は横島が足の痛みを見抜いたことが信じられないらしくどうやって見抜いたのかと遠慮なく追求していくが、キツそうな見た目で睨むように問いただすと聞くというよりは尋問でもしているような勢いである。

ただ昔から横島は目がよく細かな異変などに気付きやすい人間だった。

今回も特別人間以上の五感を使わずになんとなく見ていて動きから気付いたに過ぎない。


「陣内その辺にしとけ。」

元々横島が持っていたモノ以上のことをしてない横島は本当に困った様子で偶然だと語るも陣内は信じてないのか追求を止めないが、そこに監督だという山部が戻って来て止めに入る。


「さっきは助かったぜ、あんちゃん。 あいつ真面目なのはいいんだが放っておくとすぐに無理しやがる。 体のケアも考えない選手は一流になれんと教えてるんだがなぁ。」

初対面で睨まれた横島とまき絵は山部にも少し警戒するような態度だったが、山部はさっきとは違い妙に馴れ馴れしいおっさんだった。

まるで居酒屋で偶然隣り合わせたら勝手に話に加わって来そうなおっさんであり、まき絵なんかは怖い人だというイメージがあったらしくキョトンとしている。


「監督!」

「いいじゃねえか。 そもそもこのあんちゃん有名人なんだぞ。 麻帆良に住んでて知らんお前の方が俺は不思議だ。 それに眼力ってのはあるやつはあるんだよ。」

横島達は知らないが納涼祭の大学生から頼まれて横島達を受け入れたのはこの監督の山部で反対していたのはコーチの陣内だったという事情がある。

まあ山部は有名人の横島達が場所を貸してほしいと聞き、直接見てみたいからと自分達の使えるエリアの隅を貸しただけだったが。

監督の背後には息を切らした大学生らしき人影がいることから、誰かが横島達が揉めてると監督に知らせに行ったのかもしれない。


「あんちゃんも嬢ちゃんも頑張るのはいいが、あんまり根を詰めるんじゃねえぞ。 探してるものなんて案外身近に答えがあるもんだからな。」

この人本当に監督かと横島や少女達が見つめる中で山部は最後まで馴れ馴れしい態度であったが、最後の最後で彼はまき絵にヒントらしき言葉を投げ掛けるとガハハと豪快に笑いながら陣内を連れて去っていく。

彼女の方は若干不満げだがどうも監督には逆らえないらしくそれ以上食い下がることはなかった。


「変な人だね。」

「うん。」

その後横島とまき絵は練習を再開するが監督というよりは近所のおっちゃんという雰囲気の山部に、木乃香達はまた変な人と知り合ってしまったとお互いの顔を見合わせて感じる。

相変わらず横島が何かをすれば必ずと言っていいほど予想外なことが起きるので慣れてはいるが、本当に監督というよりは近所のおっちゃんが指導してるような人なのだ。

ただ学生や関係者からは信頼されてるらしく指導の手腕はあるようであったが。

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