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ただ今修行中!?

「令子ちゃん……?」

西条は無言で考え込む令子に声をかけるが、返答はなく気がつかない


(またか……)

側で会話しているはずなのに令子は時々西条が居るのを忘れたかのように、自分の世界に入り込んでしまう

普通の人ならば特に問題にもしない行為なのだが、西条はそんな令子が気に入らなかった

金持ちの家に生まれ何不自由無く生きて来た西条にとって、周りの人間の注目を集めるのは当然であり普通である

目の前の相手が自分を忘れるような行動をする事自体、あまり好きではないのだ

まして自分が求める令子が、話の途中で自分を忘れる事は特に面白くない


「僕の話はそんなにつまらないかい?」

少し不機嫌そうに尋ねる西条の声に、令子はようやく我に帰っていた


「ううん、そんな事ないわ。 ただ、雪之丞が大人しく戦ったのが信じられなくて……」

慌てて言い訳をする令子に西条はホッとした半面、つまらない言い訳に不愉快さも感じている

言い訳をすると言う事はそれだけ西条を気にしている証なのだが、逆にわかりやすい嘘には苛立ちも感じているのだ


「まあ、彼もいい加減まともな仕事をしたいんだろうね。 前のままじゃ誰も評価などしてくれないし」

若干の不愉快さと苛立ちを西条は水に流して答えた

まあ令子のワガママは今に始まった事ではないし、女性に対してだけは心が広いのである


「そうかしら…?」

令子は西条の言葉に違和感を感じていた

何かとエリート風を吹かせる西条と雪之丞は、根本的に違うのだ

令子自身も雪之丞の考えなどわからないが、西条のように世間体を気にしたりしてGS免許を取得したのではないだろうと思っていた


「詳しくは聞かなかったからそれ以上はわからないな。 ただ、小笠原さんなら何か知ってるかもしれないがね。 魔鈴君と一緒に居たしね」

「エミが!?」

何かと対立する事が多いエミの名前が出た事で、令子の表情が変わる

他人と関わりたがらないエミが、何故横島や魔鈴と一緒に居たのかわからない


「ああ、GS試験中は一緒に観戦してたみたいだよ。 珍しい組み合わせだから、少し噂になっていたしね」

西条自身も魔鈴とエミが一緒の時に会話をしたが、実は魔鈴とエミが行動を共にしていたのはGS協会関係者の間で少し噂になっていたのだ

魔鈴もエミも業界人とはあまり関わりを持たないし、特に魔鈴はGS試験に弟子を出した事自体が話題になってた

そんな二人が友人のような形で行動を共にすれば、嫌でも目立ってしまう

予想外の組み合わせに、GS協会関係者も少し驚きいろいろ噂をしていたようである


「また何かたくらんでるんじゃないの?」

予想外にエミが出て来た事で、令子は何かたくらんでるのではと胡散臭そうに疑っていた


「さてね。 タイガー君が出場してたから、その関係だとは思うが…… そういえば、タイガー君の試合も少し話題になっていたよ。 新人にしては強いからね」

エミが何かをたくらんでいると言われても、西条にはピンと来ないようである

それもそのはずで、令子と西条ではたくらむの言葉の意味がまるで違う

令子は自分の邪魔をするたくらみと言う意味だが、西条は社会的に悪い事をたくらむという意味で考えている

そんな価値観の違う二人は、微妙にずれたまま会話を続けていた


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