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平和な日常~冬~5

大型クルーザーは見た目も中身も普通に豪華で悪く言えば金持ち趣味であった。

元々は神魔戦争も中期に入ろうとした頃に海外の富豪への売却用として建造された物で、エンジンは初期型カオスフライヤーの改良型である。

基本的にエンジンはブラックボックス化したものの、いわゆるカオスフライヤーを民生用に転用した輸出品の一つだった。

以前にも説明したが神魔戦争期において横島達の対外窓口として活躍していたのは美神令子であり、彼女の意見の元で商売もいろいろと行っていた。

これを売っていた頃は時期的に微妙な頃で、神魔戦争の余波による世界の混乱で貧富の格差が極端に開いた頃でもある。

食べ物に困るところがある一方で成金などの富豪は金をもて余している者も居たので、令子の戦略により金は有るところから頂くとばかりにいろいろ売っていた時期であった。

ちなみにこの頃の横島は基本的にカオスの助手として造る方で働かされていて、当のカオスも生活と研究に困らなければ金に執着しなかった。

一応土偶羅が令子を監視込みで協力はしていたが彼女は横島や異空間アジトの不利になることはせずに、ただひたすら金を集めるとその金で金銀財宝やら資源を買い漁り異空間アジトに送っている。

横島なんかはそんなに集めなくても異空間アジトには金銀も資源もあるのにと愚痴っていたが。



「凄いなぁ。 お父さんも乗せてあげたいな。」

さて相変わらず賑やかに船内を見学している少女達であるが、どちらかといえば雪広家が所有してそうな豪華クルーザーに美砂は思わず父にも乗せてあげたいと口にする。

日頃から親孝行など口にしない美砂の突然の意見に一般家庭出身の少女達は思わず静かになり、なんとも言えない空気が一同に流れた。

普段はさほど深くは考えないが、中学から私立に通えるのは親のおかげという現実がある。

最近横島絡みでいろいろ恩恵が多いだけに両親も乗せてあげたいと思ってしまったのだろう。


「ゴメンね、突然変なこと言っちゃって。」

夢のような世界が広がれば広がるほど、現実の厳しさを感じて自分達が恵まれてる実感を感じるのは美砂だけではない。

もちろん欲や打算がない訳ではないが、両親に隠して自分だけがというのには少し罪悪感もあった。


「一回みんなの家族集めてみっか? なんか理由を付けて。」

「横島さん、それは事前にいろいろ考えなくてはいけないことが……。」

そんな美砂の突然の発言に少女達の表情はそれぞれ違うが、ここで横島がまたもや思い付きで突拍子もない事を言い出す。

横島の思い付きに今まで振り回されて来た夕映は、そんなに簡単な問題ではないと理解するからか困ったように口出しするも横島は結構乗り気だ。


「流石にここや異空間の向こうには連れて行けなくても、どっかその辺りのリゾートとか観光地でもいいだろ。」

「いいんじゃないかしら。」

「お姉さま!?」

横島の気持ちは嬉しいものの横島が何かを始めると無用なほどやることが大事になることを理解してる少女達と刀子は幾分渋い表情をするが、意外にも賛成したのはあやかの姉のさやかであった。

まさかの人物の賛成にあやかは戸惑い声をかけるが、彼女には彼女なりの理由がある。


「あやかちゃんそれにみんなも、人の繋がりは何より大切にしなきゃダメよ。 きっかけや理由は作ればいいだけだもの。」

周りは無表情のエヴァを除くと刀子を含め信じられないと言わんばかりであるが、さやかは人の繋がりの大切さをあやかや少女達に解きいい機会だから考えてみるべきだと告げる。

雪広家では基本的に姉妹の教育に差別はしてないが、後継者として扱われる姉と妹では周囲の扱いがまた微妙に違うのが現実だった。

そのプレッシャーはあやかよりもあるだろうし、そんな中でさやかが学んだのは人の繋がりの大切さである。



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