その二

「そうか。」

かおりと母がこれからのことを話し合った翌日は二学期の終業式であった。

この日かおりは母と六道家に相談する前に担任の鬼道にも話しておくべきだと闘竜寺を離れたことを鬼道に話すも、鬼道は相づちを打ちながら聞いてるだけでその表情は何とも言えないものがある。


「ええ、お母さんやな。 正直羨ましいわ。 僕はお母さんに捨てられたようなもんやから。」

そして一通り話が終わると鬼道は何を思ったのかかおりの母親を誉めて羨ましいとまで言うと、今度は自分は母に捨てられたようなものだと自身の過去の話を語って聞かせていく。

六道家に復讐するためだけに育てられたことや母がそんな親父に着いていけないと自分を捨てて一人家を出ていったことなど話すと、かおりは先日横島がちらりと話していたことを思い出すも真相はより酷い話だと感じたが何処か自身の父親と通じるものがあることに複雑な心境になる。


「GSになりたいなら確かに理事長に相談したらええと思うわ。 理事長のとこには似たような相談が多い言うてたし。 OBには弓のような子を支援しとる人も居るって話や。」

ただ鬼道はかおりの父をどうこうという話は一切せず、もしこのままかおりがGSを目指すならばやはり六道家に相談するべきだとアドバイスした。

実は六道家にはかおりのような既存の霊能者の元から離れた見習いがよく相談に訪れるらしい。

理由は古い伝統や慣例に合わない者から修行先でのイジメなどの人間関係のトラブルまで様々だが、一旦所属した修行先から途中で辞めた者で業界に残りたい者の大半はそう言った者を率先して受け入れてる六道家の派閥に所属することが一番多かった。

基本的に除霊は仕事として師弟関係も雇用者と従業員という一般社会に合わせた形を取っているので、宗教から離れたい霊能者なんかは多く集まっており現在ではオカルト業界の最大派閥まで膨れ上がっている。

まあ中には半端者なんかも居たりするが才能故に先輩弟子にイジメられたりした者なんかも居たりするので、全体の質としてもそう悪い訳ではない。

それと六道女学院のOBには女性霊能者の支援をしてるGSなんかも居る。

閉鎖的なオカルト業界において女性の立場は必ずしも高くはなく、中でも代々続く霊能一家なんかだと女性は半ば強制的に断れない相手から見合いを組まれたりするのでそんなしがらみを打破する為にと支援している人達はいるとのこと。


「僕の方からも理事長に頼んでおくわ。 まあ優秀な弓なら修行先に困ることはないはずや。」

最終的に鬼道からも六道理事長に話を通してくれることになり、かおりの修行先は年末年始を挟んで年明けには決めることが出来るだろうとのことだった。

まあそれほど急ぐことでもないので何件か候補を紹介してもらい選ぶ余裕はあると思われる。

ただかおりは流されるように話が進む新しい修行先について実はまだ考えが纏まってなく、自分が霊能者としてどんなGSになりどういう未来を望むか今一つ決めかねていた。

今の今までほとんど霊能者の修行しかしてないだけに霊能者とGSの道を捨てる気にはなれないが、一方で本当に闘竜寺をどうしようかとはなかなか決められるものではない。

正直なところ普通に仕事としてGSをやり宗教から離れたいとの想いも無いわけではないのだ。

仏が嫌いだとか信じられないという訳ではないが、妙神山に行って以降は宗教と神様は別なのではと考える時もあることが原因の一つだったりする。



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