嵐を呼ぶかもしれない男

「あら、美神さん?」

さて令子のオカルトGメン出向が十日に達しようとしていたこの日、西条と令子は警察からの依頼でとある現場に到着していたがそこで横島と雪之丞を連れた小竜姫と偶然出くわす。


「小竜姫様、なんでここに?」

「依頼ですよ。 突然地下から悪霊が吹き出して来たので至急除霊して欲しいと。」

「ゲッ!? エミに冥子まで居るじゃない。」

その現場とは地下鉄の駅とそこに繋がる商業ビルの地下など広範囲で、とにかく突然大量の悪霊が地下から吹き出して来たらしく、あちこちの会社やら商業施設の運営会社に鉄道会社まで様々な企業や公共団体からオカルトGメンを筆頭に複数のGSにそれぞれバラバラの依頼人から除霊依頼が舞い込んだらしい。


「へ~、本当に令子がオカルトGメンに居るワケ。」

「令子ちゃん~、こんにちは~。」

GS試験以来の再会に冥子なんかは喜ぶも、エミは西条と令子に視線を向けてなるほどと言いたげに意味ありげな表情を見せる。

オカルト業界では金にがめつい令子がオカルトGメンに協力してると聞き何があったんだと軽い騒動になってるらしい。


「参ったな。 これだけ民間GSが多いと混乱するくらいじゃ済まないぞ。 出来れば協力して除霊に当たりたいんだが。」

「そう簡単にいかないわね。 小竜姫様、依頼人に確認した方がいいわよ。 オカルトGメンとか他のGSが同じ依頼受けてるけどどうするのか。 後になって料金払わないとか面倒になるから。」

基本的にオカルト業界は閉鎖的な業界なので同じ派閥や友人知人のGSとは協力はしても見知らぬGSとの協力は嫌がる傾向が強い。

霊障という科学では解明できない現象を霊能というこれまた科学では解明できない力により解決するのだが、最低限の信頼関係がないと何があるか分からないので嫌がるという現実的な理由もある。

背後から協力してるはずのGSに攻撃されても悪霊の攻撃だと主張すれば罪に問うのは難しいという法的な問題もあった。

加えて他にも同じ目的の依頼を出した人が居るとなると報酬を減額しようとしたり除霊したのが別のGSなら払わないと言い出したりと面倒なことになるし、報酬が成功報酬だったりした場合は早い者勝ちの争いになりGS同士で戦ったりすることも無いわけではない。


「そうですね。 私達は一度依頼人に確認して来ます。」

「令子ちゃん。 僕はGS達と協力する方向で出来ないか関係者と調整する。 悪いけど警察の方は頼む。 被害範囲の人間はなるべく避難するように。 それと先走るGSが出るだろうから出来れば止めてダメなら自己責任だからと書面で確認させてくれ。」

結局小竜姫やエミ達GS組は状況の変化による依頼人との再交渉にそれぞれ依頼人の元に行き、オカルトGメンの西条はせっかく集まったGS達と協力出来るように警察や自治体に企業などに頼みに行くことになる。

令子に関しては事実上の現場での指揮を任せられることになり、警察にアドバイスするという名目で被害範囲の人の避難や先走るGSのお守りをさせられることになった。


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