「横島さんとどんな関係なんですか！！」

あまりに唐突な事態に誰もが凍りつく中、単刀直入に聞いたのは面白くなさそうなおキヌである


「恋人です」

ニッコリと幸せそうに微笑む魔鈴に、おキヌですらも凍りつきしばらく沈黙が流れていく


「久しいのう。　現代の魔女よ。　日本でＧＳをするなら、ワシも加えてくれんかの？」

「お久しぶりです。　ドクター・カオスなら是非歓迎しますよ。　こちらこそよろしくお願いします」

誰もが凍りつく中でカオスは事前の打ち合わせ通りに魔鈴と話を進めていった

一方唐巣やエミや令子は、『現代の魔女』と言う呼び名に反応してようやく我に帰る


「現代の魔女って確か……」

「中世ヨーロッパの失われた魔法を復元してる日本人だったワケ」

横島の恋人云々は比較的どうでもいい唐巣とエミは、魔鈴の素性に興味を抱く

ＧＳとしてではないが世界的に知名度の高い現代の魔女が、まさか日本に帰国していたとは知らなかったのだ


「あんた、冗談なら笑えないわよ。　ソイツにそんな事を言えば、すぐに妊娠させられて人生おわりよ！？」

対して令子は横島の恋人と言う言葉を全く信じてなく、タチの悪い冗談だと受け取っていた

セクハラばかりの役立たずに突然恋人が現れるなど、どう考えてもおかしいのだ


「冗談ではありませんよ。　それに避妊はきちんとしましたのでご心配なく」

相変わらずニコニコと人が良さそうな笑顔で語る魔鈴だが、その言葉ははっきりしていて再び周りに衝撃を与える


「ひに……ひに……」

顔を真っ赤にして壊れたようにつぶやいているのは令子だった

あれだけ馬鹿でセクハラばかりの横島が、実はすでに女性経験があるなど信じられないのだろう


「失礼だが、本当に横島君の恋人なのかね？　彼女は美神令子君と言って、冗談が通じる相手ではないのだよ」

あまりに混沌とした現状にたまらず唐巣が仲裁に入るが、もちろん魔鈴は横島の恋人だといい譲るはずがない


「もちろん本当ですよ。　先日ＧＳ試験を受けると聞いたので、一緒に事務所を立ち上げる為に帰国しました」

「あんた、私の物を勝手に盗るなんていい度胸してるわね」

相変わらず涼しげに語る魔鈴だが、引き抜きの話になると壊れかけていた令子が元に戻って魔鈴を睨みつけていた


「確かに忠夫さんは将来有望ですから、引き抜きは困りますよね。　では雇用条件を改善して頂けますか？　貴女が忠夫さんを私以上の条件で雇用続けると言うなら、私も諦めますが？」

「なるほど……、あんた横島君に頼まれて時給上げる為に芝居してた訳ね。　いいわ。　時給２５５円！　それで嫌なら勝手に連れてくといいわよ。　元々そんな約束だしね」

魔鈴の言葉を勝手に解釈した令子は、ＧＳ試験のついでに横島が時給アップを企んだのだろうと考えている

それならば妥協したら自分が負けだと思い、嫌ならいつでも辞めていいと告げて一人で帰ってしまう


「アンタ、わざとあんな言い方をしたわね？」

あまりの事態に周りの人間が静まり返る中、エミはよほど面白かったのか笑いを堪えながら魔鈴に真相を聞いて来た


「ええ、常識も守れない人に自分の恋人を預けるつもりはありませんから。　私はこれから日本で活動しますので、よろしくお願いします」

笑っているエミにある程度の真実を告げた魔鈴は、深々と頭を下げて挨拶している

アシュタロス戦後、エミと魔鈴は同業者としていい協力関係だった

魔鈴はこの世界でもエミといい関係を築きたいと願っている