新しい生活

魔鈴が店に戻ると、店にはエミと唐巣が訪れていた


「いらっしゃいませ、珍しい組み合わせですね」

普段店に客として来ない二人が揃って来た事で、魔鈴は何か事件かと思う


「たまたま近くで会ったのよ。 私はタイガーの様子を見に来たワケ」

「私はGS試験の事で少しね」

すでに紅茶を飲みながらゆっくりしていた二人の話から、事件では無い事にホッとした魔鈴が席に座ると唐巣が話を始める


「今回からGS試験の仕組みが変わるらしい。 特に非戦闘系の霊能者は書類審査を通過すれば、実戦抜きでも仮免許を与えるようだ」

唐巣の説明を魔鈴は驚きの表情で聞いていたが、エミはどちらかと言えば納得している感じだった


「当然よね。 あの試験だと直接戦闘型が有利過ぎるワケ。 私のような遠距離型は不利だし、非戦闘系の霊能者だって戦い方によっては悪霊を除霊出来るわ」

そもそも普通のGSはチームを組んで除霊を行う

そのメンバーには様々な霊能者が必要であり、戦闘補助系の霊能者も実際には除霊を行っている

しかし厳し過ぎるGS試験の影響から、直接戦闘力の乏しいGSは免許が取得出来ずに不遇の立場にある者も少なくなかったのだ


「しかし、随分と急ですね?」

「実は、この変更の根本の原因は横島君が辞めた件だったらしい。 私も詳しくは知らないが、新人GSの問題はかなり会議が行われたようだ」

急に試験の内容が変わった事に疑問を抱く魔鈴に、唐巣は険しい表情で今回の変更の裏側を語っていく

そしてこれが、GS協会がGS達の能力を把握する第一歩だと言う事も語られていた


「あの連中に霊能者を管理するのは無理なワケ。 まあ、結果的に非戦闘系の霊能者が助かるならいいんでしょうけど…」

興味なさげに唐巣の話を聞いていたエミは、GS協会では新人の管理は無理だと理解している

元々協会の権力などたかがしれているし、様々な宗教や裏社会と繋がる霊能者達を管理するのは今のGS協会では不可能なのだ


「まあ、協会の幹部も苦労して考えた改革なのだよ。 きっかけはともかく、多くの霊能者達に未来が開ける事は悪い事ではない」

辛口なエミに苦笑いを浮かべる唐巣は、むしろ協会がここまで変えた事を評価していた

様々な問題が山積みなのは変わり無いが、元々受験生同士の試合は実際の除霊とはかなり違うのだ

試験な結果=実際に優秀なGSとは限らない

その為、直接戦闘や対人戦闘が苦手な霊能者には朗報だった


「それで雪之丞君とタイガー君なんだが、GS協会はアシュタロス戦の功績を考慮して、書類審査の形で仮免許を交付する事を考えてるようだがどうするかね?」

少し話が逸れたが、これが唐巣の本題である

雪之丞に関しては未成年の無免許なため公式には名前が残らなかったが、その功績と実力は高く評価されていた

最もメドーサとの過去があるため誰も関わろうとはしなかったが、魔鈴が身元保障人になったことで正式に免許交付を考えたらしい

自分は関わりたく無いが、誰かが責任を取るなら免許交付はすると言う相変わらずの協会ではあったが……


「雪之丞さんに相談してみますが、私は普通に試験を受けさせたいと思ってます。 業界関係者に、今の雪之丞さんを知ってほしいんです」

少し考込む魔鈴だが、彼女の考えは普通に試験を受けさせたいというものだった

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