白き狼と白き狐と横島

それから少し時が過ぎて、連日雨が降ったり止んだりの天気が続く6月の中頃

オカルトGメンには警視庁から、初めてオカルト関係以外の事件の捜査協力依頼が来ていた


「今回の件で勘違いしないでもらいたい。 我々としては心霊捜査などあてにしてはおらんが、世間やマスコミが騒いでる現状では致し方ないのだ。 せめてこちらの捜査の邪魔だけはしないでくれたまえ」

年配の警視庁幹部は捜査協力に訪れた西条に、露骨な嫌みをぶつけていた

形としては警視庁からオカルトGメンへの捜査協力依頼なのだが、心霊捜査など信じてないような頭の固い警視庁幹部は今回の捜査協力を苦々しく思っているようである


「はい、わかっております。 微力ながら協力させて頂きます」

低姿勢で頭を下げる西条だが、考え方の古さと頭の固さに内心では不快感でいっぱいだった


さて事件についてだが、三ヶ月ほど前から続く連続殺人事件である

都内や神奈川県などで無差別に行われる殺人事件に、警視庁と神奈川県警などは総力を挙げて捜査しているが一向に犯人が捕まらない

すでに被害者は二桁を越えており、過熱するマスコミの報道は犯人逮捕出来ない警視庁の捜査手法にも火の粉が及んでいた

その報道に危機感を募らせた警視庁と警察庁は、何かと世間の人気の高いオカルトGメンを巻き込み利用しようとしたのである

万が一オカルトGメンが解決すれば警察庁側の手柄を強調すればいい事だし、失敗すれば責任を押し付ける事も出来る為オカルト嫌いな警視庁幹部も渋々了解したようであった



「例の連続殺人事件ね」

オカルトGメンに戻った西条は、美智恵と殺人事件の捜査会議を始めるが美智恵の表情は固いままである


(失敗すれば何を言われるかわからないわね)

表向きは捜査協力だが、裏側には警視庁のマスコミ対策とオカルトGメンの人気を落としたい政府の思惑が透けて見えていた


「参りましたよ。 頼まれて捜査協力に行ったのに、まるで協力する気などないんですから」

あまりに身勝手な警視庁幹部に、西条は思わず愚痴をこぼす

心霊捜査の難しさは良く知っているが、あそこまで毛嫌いされるのは面白くないようだ


「日本警察は科学捜査で、世界でトップクラスの検挙率を上げて来たんですもの。 訳の解らない捜査に頼るのはプライドが許さないのよ」

西条をなだめるような笑みを浮かべて話す美智恵だが、実は権力争いの一部だという真実を西条に黙っている

治安維持という目的は一致している警察庁とオカルトGメンだが、事件の捜査に関しての主導権争いは常に起こっていた

オカルトGメン側はオカルト絡みの事件に関しては独自の捜査で解決したいが、警察庁としては自分達の知らない所で捜査をされるのを好まない

問題はオカルトがはっきりと事件に関係してるかわからない事件が多い事だった


今回はそれに加えて、最近の政府のオカルトGメンへの冷遇もこの件には関係している

捜査の主導権争いまでは西条も知るが、政府とオカルトGメンの微妙な駆け引きは知らない

美智恵としては少し真面目過ぎる西条には、知らせるべきではないと考えているようだ


「さあ、気持ちを切り替えて会議を始めるわよ!」

何かすっきりしない表情の西条に美智恵は気合いを入れるように声をかけて捜査会議を初めていた


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