愛子が雪之丞達に勉強を教えた次の日の日曜日、横島達四人と雪之丞とタイガーと愛子は都内の撮影スタジオを訪れていた

大きなスタジオでは複数のセットが組まれ、朝早くから踊るＧＳの映画の撮影が行われている


「おはようございます！」

スタジオの入口で横島達を出迎えてくれたのは銀一のマネージャーだった



さて何故横島達が撮影スタジオに来たかといえば、それは前日の夜に遡る

愛子の勉強会も無事に終わって店の営業が終了した後、魔鈴がみんなに夕食をご馳走していた時の事


「こんばんわ～」

突然店に銀一が訪ねて来ていた

映画の撮影スケジュールの関係で、急に時間が空いてしまったので来たらしい


「いらっしゃい。　夕食がまだなら一緒にどうですか？」

「ありがとうございます。　頂きます」

突然一晩休みになったという銀一と横島達は久しぶりに夕食を共にして、お互いの近況を話し始める

横島達は勉強してる話や雪之丞とタイガーのＧＳ試験合格など、僅か数ヶ月だが話題には事欠かなかった

特に銀一は横島が勉強を始めた事は、昔なら有り得なかったと笑っていたが……


「そう言えば、踊るＧＳの映画を撮影中なんですよね！」

銀一が近況を話し始めようとした時、先に訪ねたのは愛子である

踊るＧＳの映画を知る辺り、相変わらず人間社会にどっぷりと溶け込んでいるようだ


「ああ、撮影は順調やで。　きっとみんなにも楽しんでもらえるはずや」

自信を持って言い切る銀一は、何故か意味ありげな表情を浮かべている


「銀ちゃん？　何か企んでるのか？」

横島は銀一の表情に子供の頃を思い出していた

一緒に馬鹿やっていた時に、何か面白い事を思い付いた銀一の表情に似ている気がしたのだ


「いや、企んでるのとは違うで。　まあ楽しみにしとき！」

何かを言おうとした銀一だが、意味ありげな笑顔で言うのをやめてしまう


（横っち……、俺もいろいろ勉強したんやで）

横島や魔鈴やタマモやシロを見た銀一は、静かにその言葉を飲み込む


「ねえ、映画って大変なの？」

「そう言えば、拙者映画は見たこと無いでござるな～」

横島とは別の意味で不思議そうにしていたのは、タマモとシロである

タマモは映画の撮影に興味を抱き、シロは映画自体に興味を持ったようだ


「ああ、映画は結構大変やで。　二時間くらいの映画を作るのに、何ヶ月から長いと何年もかかるんや」

銀一が映画の撮影の裏話を始めると、タマモとシロのみならず横島達まで驚くような話を銀一は話していく


「そうだ！　よかったら明日にでも撮影を見学に来るか？」

映画に興味津々なタマモとシロを銀一は見学に誘う

飛行機の一件以来、銀一はタマモとシロの二人を妹のように感じていた

そんな二人が自分の仕事に興味を持った事が、銀一は嬉しいようである


「おいおい、銀ちゃんいいのか？」

「全然大丈夫や。　撮影の見学に来る奴は珍しくないんや」

突然見学に誘う銀一を横島は心配するが、特に珍しい事ではないようだ

外での撮影は周囲に見物の人が集まるのは当然だし、スタジオの撮影もコネで見学に来る人がいるのもたまにあるようである


「ねえ、よかったら私も行きたいな……」

銀一に誘われたタマモとシロを羨ましそうに見ていた愛子は、遠慮がちに自分も行きたいと言い出す