新しき絆・2

西条は目の前の複雑な表情の令子を見て決意する

「令子ちゃん、正式に僕と付き合って欲しい。 もちろん恋人として」

西条の優しく力強い言葉は、令子の心を揺さぶる


(西条さん…)

令子にとって西条は憧れであった


自分でもコントロール出来ないほど強力な精神感応者の父と、世界で有数のGSだった母

そんな2人は一緒に暮らした日々はほとんど無い


令子自身は父親と暮らした経験が無く、会った回数すらも数えることが出来る程度


会ってもその能力ゆえに、令子に積極的に愛情を注いで接しなかった父と令子は、他人と言ってもおかしくない関係である


父親は父親で、令子を愛すればこそ遠慮したのたが…

令子は未だに父親の愛情を理解してない

不器用すぎる父と強さのみを求めた母により、令子は愛情と言うものをあまり理解出来ない


そんな令子に初めて愛情を注いだ男性が西条なのである

令子にとって西条は、父であり兄であり…

そして初恋の人であった


「西条さん…、いいわよ。 私で良ければ…」

令子はしばらくの沈黙の後、静かに答えた

西条は令子の理想の男性

そして、ずっと憧れて来た存在


しかし…

愛してるかと聞かれればわからない


令子は一瞬、魂の奥底から何かが蘇る気がしたが…

自分でそれを封印してしまう


それが、令子の中に眠るメフィストの記憶なのだが、令子は全て封印した


私は美神令子だ

メフィストでは無い


そんな潜在的意識からの無意識での行動だが、令子は気がつかなかった

その時見えたメフィストの記憶が、横島の前世である高島の魂を解放した後の、メフィストの誓いだったことに…


「お行き、高島どのの魂… 今は自由にしてあげる。 でも今度会ったら… もう逃がさないから…!!」


そう…

メフィストがそれだけを望みに人間になり生き抜いた

幾千の時を超えても必ず高島と再び…

そんな魂への誓いの記憶だったことに令子は気がつかない


魂からの伝言も拒絶した令子は、前世で兄として共に生きた西条と付き合うことをにした


「令子ちゃん、僕は必ず君を幸せにしてみせる」

西条は令子の手を握り力強く言う


「ありがとう。 西条さん…」

令子は自分にここまで言ってくれる西条に嬉しく思うが…

何故か心に、もやもやしたモノを感じていた


(横島君…、令子ちゃんは僕が頂く)

西条もまた前世から横島と令子と関係の深い人物である

自分では認めないが、潜在的にライバルだと感じている横島に勝った確信する


西条は自分が前世に影響されていることを知らない

横島を意識しすぎるのも、令子にこだわりすぎるのも、前世が少なからず関係している事実に、西条は気がつくことはないだろう


前世と現世が複雑に絡み合う令子と西条は、この日から付き合うことになる



一方で同じく前世での縁を持つ横島は、ルシオラと魔鈴の2人の愛情により今を生きている


そんな横島の抜けた、前世を断ち切れない令子と西条は、この後どうなるのだろうか…?


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