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新しき絆・2

食事に向かった令子は、西条に連れられて某高級ホテルのレストランに居た


「ここは最近シェフが代わってね… 日本では珍しく本場のフランス料理を出してるんだ」

西条は機嫌良く、自分の知る知識を披露する


「さすがは西条さんね~ どっかの誰かとは大違いたわ」

西条を誉めてるように聞こえるが…

どちらかと言えば、どっかの誰かへのイヤミに力が籠もっている


「令子ちゃんさえ良ければ、いつでも付き合うよ」

西条はどっかの誰かが誰だかわかっているが、聞き流す


「ちょっと聞いて欲しいのよ! ママってば最近変なのよ! 顔見る度に横島、横島って、あいつの話ばっかり!」

普段愚痴る人が居ない令子は、今まで溜まっていた不満が次々に吹き出す

「その横島も生意気なのよね! 夏休みも冬休みも仕事はほとんど来ないし……」

令子はかれこれ1時間、1人で永遠と美智恵と横島への不満をぶちまける

料理を食べてはいるが、味わってなどいない

西条は最初は笑顔で聞いていたが、途中で苦笑いしか出なくなっていた


「令子ちゃん、そんなに横島君が気になるのかい?」

最初はある程度愚痴を聞けば収まると思い聞いていたが、令子は一向に収まらない

西条は内心ため息ついていた


「はっ!? 何を言ってるの? 私は別にあんなやつどうでもいいわよ!」

令子は怒りをむき出しにして西条に怒鳴る


(僕に怒るのは筋違いだろうに…)

まるで親にかまってもらえない子供のように

横島にかまってもらえない怒りをぶつける令子に、西条は言葉が出ない


「確かに、先生は横島君を高く評価している。 だが…、令子ちゃんが横島君を何とも思ってないなら、関係ないと思うがな」

西条は冷静に令子に問いかける

いい機会だから、この際に令子と横島の関係をはっきりさせよう

西条はそう思う


(どうやら横島君は、あまり令子ちゃんにこだわってないようだし…、チャンスだな)

西条は内心ほくそ笑んでいた


「そうなんだけどさ… 気に入らないのよ! あいつは私の丁稚なの! 勝手なことするのは許せないわ!」

令子は怒りのぶつけどころが無く、怒りのやり場が無い


「令子ちゃん、その丁稚と言う意味がよくわからないな… 世間一般では令子ちゃんは雇用主で、横島君はアルバイトの見習いGSだ。 それ以外に何が違うんだい?」

西条は笑顔で優しく令子に聞く

答えのわかっている話を…


一方令子は返答が出てこない

自分ではわからないのだ

何が違うのか…


西条はゆっくり令子の返答を待つ


「わからないわ…」

令子は弱々しく呟く

お兄ちゃんのような西条にだから出せた、令子の今の本音である


複雑な家庭環境からなる、男性に対してのコンプレックス

父親の愛を理解して無いがゆえに、男性に対する愛がわからない令子


そんな父親への嫌悪感から、男性を徹底的に拒絶して来た人生で、近くに来たのはお兄ちゃんの西条と…

横島だけである


(先生…、これは重症ですよ。 いかに守る為とはいえ、強さにこだわりすぎましたね… 愛情を理解する感情が、彼女から抜けている)

西条は恩師の教育の賜物たる令子の性格に苦悩する


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