真の歴史へ・その三

数日後、横島とルシオラは都内のオフィス街にいた


「ここが南部グループの本社が入ってるビルよ」

「本社は意外なほど小さいな。 心霊兵器開発するくらいだからもっと大きいと思ったが……」

横島とルシオラはこの日、南部グループの様子を探りに本社が入っているビルに来ている

会社の概要や大まかな組織は簡単に調べがついていたが、心霊兵器開発の詳しい情報や会社がどの程度心霊兵器を主導しているかなどはまだまだこれからだった

そんな中二人は、南部グループの会社施設を見に来ていたのだ


「最近急激に成長している新興企業なのよ。 合併や買収を重ねて会社を拡大してるわ」

「やり手のエリート様か…… 好きになれんな」

過去の記憶からかエリートという肩書が好きになれない横島は嫌そうな顔をするが、ルシオラはクスクス笑ってしまう


「それがそうでもないみたいなのよね。 代表取締役社長は三流大学を留年して卒業してるし、会社自体も数年前までは親が経営する零細企業だったみたいなの」

若干横島をからかうように笑ったルシオラは話を本題に戻して説明していくが、大まかな会社の成り立ちを聞いたところでビルを後にしてオフィス街を歩いていく


「潰すんなら徹底的にやらんとダメだよな。 南部グループが未来でどんな結末に至ったのか知らんけど、計画に関わった人間が逮捕されても数年で自由だからな。 その後どっかの企業や国に引っ張っられて再び心霊兵器の開発なんてされたら元もこうもない」

かつて未来で出会った研究者の二人を思い出す横島、うち一人はガルーダに殺されたが一人は生きて逮捕されたはずである

殺人罪で死刑にでもならない限り日本の法律では10年ちょっとで自由になってしまうが、あの女なら再び心霊兵器の開発に関わる可能性を否定出来なかった


「徹底的にやるなら南部グループだけしゃなくて、取引先や支援先も調べる必要があるかしら? でも私達じゃ人界の人間の繋がりを調べるの限界があるわよ」

横島の徹底的という言葉に少し考え込んだルシオラは具体的に方法を探るが、正直ルシオラ達は人界の人間を調べるのは苦手であった

ルシオラはハッキングなどで会社のコンピュータは調べられるが、極秘の計画ならばコンピュータにデータがない可能性もある

ましてアシュタロス一派との繋がりをデータとして証拠を残すなど考えにくいし

それに加えて誰がどこまで関わってるか調べるとなると、ルシオラ達には不可能だった


「困ったな…… 俺達が動けば目立つし、変わりに調べてくれる奴は必要なのかな」

横島やタマモやヒャクメならばひょっとすれば調べられるかもしれないが、横島としては自分達が表に出るのは避けたいと考えている

アシュタロス一派に必要以上に警戒されたくないし、加えて人界で目立つのも将来を考えれば避けたかった


「もう少し根本的な計画の練り込みが必要ね」

南部グループの問題に取り掛かる前に、具体的な計画の練り込みが必要だとルシオラは考える

相手が神魔ではなく人間なだけに、その対応は慎重にならざるおえなかった


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