時間移動という能力を持ち歴史の一部さえも変えた美智恵でさえも、まさかこんな結末になるとは予想もしなかった


「どうやって防がれたの？　まさか時間移動を防げるなんて……」

時間移動が見つかる事は想定していた美智恵だが、やはり防がれる事は想定してなかったようだ

それに時間移動が防げるはずなのに、能力を封印した意味もわからない

結局最大の切り札を失った美智恵は、ショックから呆然とするしかなかった



その頃横島達は、寝室で先程の事を話していた

「甘いと思いますか？」

小竜姫のつぶやきとも聞こえる問い掛けに、横島・ルシオラ・タマモは複雑な表情で考え込む


「甘いとは思うけど、仕方ないとも思うわ。　異なる意見や理想を持つ者を排除するだけなら、私達は未来を滅ぼした神魔の過激派と変わらないもの」

少し迷いも見える小竜姫に、ルシオラはちょうどいい妥協案だろうと答える

横島達と美智恵は共に同じような平和な未来を望むが、決定的に違うことも多い

しかし自分達の望む未来と違うからと言って、美智恵を排除するような事だけはしたくなかったのだ

未来において神・魔・人がそれぞれに互いを認めないまま滅ぼしあった結果を知るだけに、出来れば共に生きれる未来を望む気持ちが大きかった


「わかっていても解り合えない。　それが本当に悲しいですね」

神族のこだわりなどとっくの昔に捨てた小竜姫だが、誇りはどこかに残っている

美智恵の行動や考えは認められないが、同時に話し合いで解決出来ない悲しさも残ったままだった


「話し合いは無理よ。　人を信じる事が出来ないのが、美神美智恵だもの。　それに問題はこの後よ。　時間移動は美神美智恵の精神的支えでもあったはず……　それを失った彼女がどうなるかしばらく警戒しなきゃダメね」

協力出来そうで出来ない美智恵に小竜姫は頭を悩ませるが、タマモは現実的に不可能と理解して次を考えている

時間移動は美智恵の切り札であると同時に、精神的支えでもあった

最終的に時間移動があると思うからこそ、あの圧倒的な自信が生まれるのだ

そんな美智恵が今後どう変化して行くのか、警戒する必要があるとタマモは言う


「自信を失う人には見えないけどな～」

「誰でも不安になる事はあるわ。　まして彼女は一人で運命と戦ってるんだから……　時間移動が出来ない精神的影響が、他の行動として現れる可能性は否定出来ないのよ」

横島は自信を失う美智恵など想像出来ないが、タマモは全ての自信は失わなくとも些細な行動などが変わる可能性は高いと指摘する

そして美智恵の行動は令子にも強い影響を与えるため、歴史への影響など注意深く警戒する必要はあるのだ


「あの人理解してるのかしら？　結果的に小竜姫さんの判断が命を救った事に。　神魔界に時間移動がバレたら、抹殺されてもおかしくないわ」

ふとルシオラは美智恵がどこまで自分の立場を理解してるのか疑問に思う

きっと自分の行動を邪魔されたくらいにしか考えてないだろうが、未来を知る神魔指導者が再び時間移動をする美智恵を許すはずがない


「わかってないわよ。　美神美智恵はアシュタロス戦後をしらない訳だし……」

ルシオラの疑問にタマモは呆れ気味に答えた

自分達が動く意味など美智恵にはもう少し考えて欲しいと思うタマモだが、肝心な事を知らない以上仕方ないことでもある


結局横島達は、当分美智恵の様子から目を離せなくなった