真の歴史へ・その三

「今まで私達が彼女を自由にして来た事で、見逃してもらえると思ったんでしょうね」

タマモの言葉に小竜姫は複雑な表情になり考え込んでしまう

確かに美智恵の行動を黙認はして来たが、全て許される訳がない

不必要な時間移動は時空間の乱れを起こし、未来を不安定にしてしまうのだ


「どうする?」

無言だった横島は困ったようにルシオラ達に問い掛ける

美智恵の時間移動を許す訳にはいかないが、だからと言って美智恵を全て否定も出来ない

それに自分達と価値観や考えが違うからといって、排除するような事は出来るだけしたくなかった


「私は全て片付くまで、このまま封じた方がいいと思うわ」

最初に答えたのはルシオラである

未来でのアシュタロス戦といい今回といい、美智恵にいいイメージはない

未来においてルシオラは犠牲にされかけた事もあり、今回の時間移動は特に許せないようだ


「難しいわね。 メドーサの件もあるし、美神美智恵はまだ使えるわ。 それに今彼女が消えたら、多分美神令子は生き残れないわよ」

ルシオラの気持ちを理解しつつ、タマモは今後の影響を推測する

ルシオラは美智恵の時間移動など歴史に与える影響から危険だと判断していたが、タマモは人間関係から美智恵の排除は危ういと話す

美智恵が表舞台に早く現れた影響で、令子の経験や強さは半減していた

それに加え横島やおキヌの不在も響き、人間関係が壊滅的に悪い

早い話が今美智恵が消えたら、アシュタロス戦になれば令子は即人間に殺されるだろう

仮に美智恵を排除するなら、令子を人間から守る事も横島達には必要となる

そして最悪の場合である令子の死は、イコール魂の結晶が転生して行方不明になる事を意味するのだ

それでは歴史が全く変わってしまい、結果的にアシュタロスの反乱を未来に引き延ばすだけになるだろう

そうなっては何の解決もしないどころか、別の危機も予想される


「魂の結晶代わりは作れるんでしょ?」

「ええ、魂の結晶とコスモプロセッサーに関しては私にも詳しくはわからないわ。 でも代わりのエネルギーの作成自体不可能じゃないと思う。 アシュ様はメフィストにこだわっていたからあんな方法を選んだけど、本気で世界を改変するつもりなら作り直すと思うわ」

タマモの問い掛けにルシオラは推測も交えて答えた

横島達にとって一番悪いのは、アシュタロス戦が起きない事である

アシュタロス戦が起きなければベスパやパピリオが誕生しない可能性もあるし、何よりアシュタロスが別の方法に移るかもしれない

人界において神魔の介入が無くアシュタロスと戦える機会は、横島達にとっても絶好のチャンスなのだ

本来最上級魔族であるアシュタロスが動けば、神魔戦争になる可能性が高い

それを防ぐには神魔の介入を防ぎ、神魔以外の存在がアシュタロスを倒さなければならないのだ


横島達が令子を影で守りアシュタロス戦を戦うと言う方法もあるにはあるが、横島達は人界の権力に対する力が弱いのが問題である

小竜姫や斉天大聖の後ろ盾はあるが日本のオカルト業界ならともかく、国家や国際社会にまで影響を及ぼすとなると他の神族の管轄になり横島達の行動が神界にバレてしまう

それもあまり望ましくない事になる可能性が高いのだ


10/100ページ
スキ