真の歴史へ・その三

最後の一人の自爆により森は平穏を取り戻していた

横島達はタマモを中心に辺りを探るが他に敵は居なく、美衣の家やその周辺に妖怪を捕まえる罠が複数ある程度である


「とりあえず、荷物を纏めましょうか」

敵の予想外の行動に動揺を隠せない美衣を連れた小竜姫とルシオラは、家に入って荷物を纏め始めた

どうも嫌な予感がする小竜姫は、荷物を持ってこの場所から早く離れた方がいいと考えたようだ


「あの連中、何か精神操作の術でも仕掛けられてたのかしら? 最後の一人が自爆する時に無表情だったのはおかしいわ」

一方警戒をするために外に残っていたタマモは、先程の連中に感じた違和感の意味を考えていた

あんなに簡単に仲間を殺して自爆するなど、普通の感覚ではない

無論そんな手段を使うプロの連中も居るが、先程の連中は良くて二流のGS崩れの傭兵と言ったところだろう

GSにも傭兵にも慣れなかった半端者であり、明らかにそこまで覚悟を持った連中には見えなかったのだ


「精神操作の術か呪いの類でも可能なんだろうな~ だとすると連中の裏には、術に長けた奴が居るってか」
 
タマモの言葉から今回の事件の背後関係を推測する横島だが、イマイチ該当する人物が浮かばない


(妖怪の捕獲か……)

敵の黒幕には確証が無い横島だが、背後関係はおおよその想像がついている

未来の歴史から考えると、関わりがある可能性の高い事件が浮かんでいた


(やはり侮れないね)

タマモと横島が簡単に事件を推測をしていくのを、メドーサは無言のまま聞いている

横島達はともかくとして、メドーサ自身は完全に横島達を信用した訳ではない

状況が変わればいつ切り捨てられてもおかしくない立場なのは、メドーサが一番理解しているのだ

横島が基本的にお人よしなのはわかるが、人が死んでも全く動揺が無かった事もしっかり見ていた

仮に自分や仲間の立場が悪くなっても約束を守ってくれるなどとは、全く思ってない


(しばらくは大人しくして状況を見極めようかね)

イマイチつかみどころの無い横島達を見て、メドーサは今後の流れが見えるまでは何もしない事を決めていた

神魔の常識から考えて、横島達の関係や存在はあまりにも理解出来ない

それが自分にどう働くのか、メドーサは現状では判断が出来なかった



その後荷物を纏め終えた横島達は、すぐに瞬間移動で事務所に戻っていた

メドーサはもう事務所に行く必要は無かったのだが、その場の流れで一緒に戻っている


「あの……、ケイはどこに?」

事務所に戻った美衣は、ケイの姿が見えない事で顔色が真っ青になっていた


「皆様は外にいらっしゃいます」

人工幽霊の報告を聞いた美衣は、血相を変えて走って行く

朝から正体不明の人間に襲われたかと思えば、こんどはその相手が自爆した姿を見た美衣はかなり精神的に参っている


「えっ……」

事務所の入口を出たところで美衣は固まってしまう

事務所の敷地ではケイが老師や雪之丞や貧に加えて、おキヌと小鳩と一緒にコマや竹馬などで楽しそうに遊んでいたのだ


「母ちゃんお帰り~」

無邪気に笑って手を振るケイの姿に、美衣はようやく落ち着きを取り戻していた


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