真の歴史へ・その二

次の日、美智恵は西条と令子と数名の職員を連れて、香港に到着していた


「でっ? 香港に何しに来たのママ」

最重要任務としか教えて貰えなかった令子は、少し不機嫌そうに美智恵を見つめている


「あなたも知ってるでしょ? 風水師の連続失踪事件。 今回はその捜査に来ました」

香港市内のホテルの一室に入った美智恵は、ようやく令子と西条に今回の説明を始めた


「しかし、先生。 我々は香港自治政府の許可が無ければ活動が出来ませんが…」

「香港自治政府とICPO本部には、非公式ながら活動の許可は得てます。 この事件は普通の事件じゃないのよ」

突然管轄外の国の事件の捜査をすると言い出した美智恵に、西条は困惑を隠せない

美智恵はそんな西条に、香港自治政府とオカルトGメン本部からの命令書を見せる


「ママ… 何考えてるの? 失踪事件なら警察の仕事よ。 それになんでわざわざ私達が来なきゃいけないの?」

西条と同様に令子も今回の仕事に理解出来ない

ただでさえ忙しいのに、オカルトGメンの事務所を空にしてまで香港に来る理由がわからないのだ
 
「言ったでしょう。 普通の事件じゃないのよ。 この失踪事件の黒幕はメドーサよ」

険しい表情で言い放った美智恵の言葉に、令子と西条は固まってしまう

GS試験にメドーサが潜入して、配下の人間をGSにしようとした事件はまだ記憶に新しい

あんな危険な魔族が相手だとは、さすがに思わなかったようだ


「メドーサに対しては、GS試験の時その場に居ながら逃がしてしまった私達にも責任があります。 今回のメドーサの目的は不明だけど、私達はそれを阻止しなくてはなりません」

表向きの理由を説明しつつ、美智恵は令子と西条に事の重大さを伝える


(アシュタロスとの決戦の前に、何がなんでも令子には経験と実績が必要なのよ)

言葉には出さないが、美智恵はかなり追い詰められていた

今後に起こる事件を考慮に入れても、ここで大きく実績を上げなくてはならない

今後の事件でも時間移動が関係する事件は公に出来ないし、令子の実績に出来るような事件はかなり少ないのだ


そんな美智恵の険しい表情を見た令子と西条は理由を知らないが故に、今回がそれだけ危険な任務だと感じていた


「先生、我々だけでメドーサを退治するのは困難かと… それだけ重大な事件ならば日本から応援を呼んでは?」

重苦しい空気が支配する中、西条は合理的に考えて出来る限りの戦力を集める必要があると進言する

今回は神魔界のお尋ね者のメドーサなのだから、小竜姫や横島に協力を要請するべきだと考えていた


元々GS試験の時にメドーサの目的を阻止したのは小竜姫達なのだから…

前回のハーピーの時のように知られてはいけない秘密も無いのだから、もっと戦力を集める必要があると思っている


「それは無理よ。 あくまでも秘密理に動かなければならないの」

西条の進言に美智恵は一瞬顔を歪めるが、すぐに元の表情になり理由を説明した


(横島君達が協力してくれるならこんなに苦労はしてないのよ)

内心美智恵は横島を恨めしく思うが、まさか令子や西条に本心は話せない


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