真の歴史へ・その二

午後1時になった頃

西条は付近の警察署で記者会見を行う


マスコミの数は百名を軽く超える人数がおり、Gメンのオフィスでは会見出来る場所が無い為、急遽付近の警察署の会議室を借りての会見であった


たくさんのカメラが向けられる中、西条は会見用の原稿を読んでいく


「昨日、深夜に正体不明の心霊対象が事務所を襲撃して来ましたが、無事除霊を完了しました」

西条は数分に渡る説明の中で、襲撃した者を除霊したと発表する

関係各所には、除霊対象を撃退はしたが除霊はしてないと説明した

だが、マスコミには除霊に成功したと発表したのだ


表向きの理由としては、一般市民に不安を与えない為にと説明し、関係各所との調整に成功していた


まあ、西条の本心は全く別であるのだが…

一つは、Gメンのオフィスを襲撃されておきながら、逃げられたなどとは発表出来なかった

国際警察のメンツもあるし、ただでさえ一般市民に成果がわかりにくいオカルトなのだ

信用を失ったら、今後の仕事に多大な影響を及ぼす


そしてもう一つは、この事件の問題を早期に終結させて、GS協会や他の民間GSに情報が漏れるのを防ぐ為である

なんと言っても美智恵の時間移動能力が襲撃の根本的な原因なのだ

西条は美神親子を守る為、この事件の些細な情報も漏れないように、徹底的に気を使っている


記者会見は、マスコミとの質疑応答もあり、会見が終わったのは約2時間後であった


西条は最大の山場を乗り越え、ホッとした様子でGメンに戻っていく


だが、ここで西条にとって予想外の問題が起きる

Gメンのオフィスのビルの周りに居たマスコミは8割方撤収していたが、2割は会見後もそのままGメンを見張っていた


夕方や深夜のニュースでの中継用と思われるテレビクルーも多数おり、しばらく撤収しそうにない


(マズいな… マスコミが見張っているオフィスを再び狙われたら、対処出来ない)

西条はオフィスに入って頭を悩ませる


昨日の今日でまたGメンのオフィスが狙われると、事態の収集が不可能になると予想していた

しかもテレビカメラまである

魔族が時間移動能力のことを口にでもしたら、世界中に美智恵の時間移動能力が知れてしまう

それに一般市民が近くに居ては、魔族が来たら真っ先に人質に捕るだろう

そんなことになれば、最早2人の令子を守るなど出来ない


西条は、もし魔族が今夜襲って来たらと考えると予定の変更を決断せざる終えなかった



「令子ちゃん、準備の様子はどうだい?」

西条が美智恵の部屋に行くと、令子は結界を張り終えて暇そうに本を読んでいるし

小さな令子は、一人でおままごとをしていた


「あら、西条さん。 そっちは終わったの?」

令子は少し退屈そうに西条を見た

さすがに、緊張感や怒りはもう無いようである


「それが、マスコミがまだ残ってるんだ。 ここに隠れてるのはマズいな… 彼らを人質に捕られたら、僕達は全滅だ」

西条の頭には、一般市民を見捨てると言う考えはもちろん無い

まして相手はマスコミなのだ

見捨てたら、そのまま世界中に放送される


「じゃあ、場所を変えるの? マスコミなんて無視したら? 襲われたら自業自得なんだし…」

基本的に他人はどうでもいい令子は、嫌そうに文句を付ける


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