平和な日常~秋~2

「いってきます」

ハロウィンウイークも後半に入ったその日も、タマモはいつもと同じように猫達と散歩に出かける。

背中のリュックにはお返しのお菓子を入れており、途中でチャチャゼロを仲間に加えてお散歩に行くのだ。

十月も残り僅かとなり街の木々も色づき始めるこの頃、タマモと猫達の一行はそんな街の景色を楽しみつつ散歩をしていく。


「にゃ~」

「ヤメロヨ。 クスグッタイダロ」

そんな散歩仲間に最近加わったチャチャゼロだが、何故か猫達に好かれてしまいよく懐かれていた。

チャチャゼロ本人は若干迷惑そうに文句を言うが、毎回タマモが誘うと散歩に来るところからさほど嫌ではないらしい。


「俺モ猫ノ仲間入リトハ、オチタモンダナ」

「おともだちがふえるのは、いいことだよ」

平和で何の刺激もない散歩はチャチャゼロにとって少々物足りないらしいが、かと言ってそれに不満がある様子ではない。

最近はタマモに愚痴る機会が少しずつ増えてるが、残念ながら会話は微妙に噛み合ってない時が多かった。


「はい、きょうのおかしだよ」

そんな二人だがタマモが愚痴るチャチャゼロに今日のお菓子を食べさせると、チャチャゼロは愚痴が止まりモグモグと食べ始める。

初対面では酒を要求したチャチャゼロだが、実は甘い物も嫌いではないらしく一緒に散歩に来てはお菓子を食べさせてもらっていた。

そのままタマモ達はいつもの散歩ルートを歩いていき、馴染みの人達に挨拶をしてお菓子を貰ったりおしゃべりしたりと楽しい時間を過ごしていく。



同じ頃、中等部では茶室でお茶を立てる少女をさよが静かに見つめていた。

二学期から実体で学校に通い始めたさよは、何人かの友人から部活に入らないかと誘われている。

正体を隠す意味でも運動系の部活は避けていたが、この日は茶々丸に誘われて茶道部の見学に来ていたのだ。


「うちにも抹茶はありますけど、和室で飲むのは雰囲気があっていいですね」

「そういえばマホラカフェって、抹茶も出してるんだっけ」

茶々丸が入れたお茶を作法を真似しながら飲んださよは、茶室の落ち着く雰囲気が気に入ったらしい。

同じ茶道部の子達も時々横島に和菓子を頼むのでさよが横島の店に住む子だと当然知っている。

中には常連の少女もおり横島が店で抹茶を出してることを口にするが、味はともかく店の雰囲気は茶道を楽しむ雰囲気ではないので微妙な表情で笑っていた。


「最近はケーキで有名になっちゃったけど、あそこの和菓子は美味しいのよね」

「私、昨日タマちゃんにお菓子あげたら最中貰ったわよ」

基本的に和菓子は日替わりメニューか予約販売しかないのであまり知られてないが、茶道部など一部の者には和菓子も評判が良かった。

加えてハロウィンウイークに合わせてタマモがお返しに配ってるお菓子も、結構評判になっている。


「そうだ、今度お茶会にタマちゃん招待しよっか」

「あっ、それいいね。 あの子なら喜びそう」

赴きのある茶室でのお茶だったが、その会話はやはり中学生らしいおしゃべりに変わっていた。

茶々丸は茶々丸で楽しそうにお茶をたてているし、さよはそんな茶道部が結構気に入っていた。



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