異邦の占い師

次の日、朝から晴れ渡っていた麻帆良に突然の雨が降っていた

天気予報では雨など無かったのに、夕方の少し前から強い雨が降っている


「ほえー、あのお兄さんの占い当たったな~」

授業も終わり帰宅しようとしていた1ーAの教室では傘を持ってない生徒達が騒いでいるが、木乃香は突然降り出した雨に横島の占いが当たった事に驚きの表情だった


「占い?」

「昨日な、世界樹前広場に占いのお兄さんが居たんよ。 そのお兄さんが今日は水難だからって言うてたんよ」

「そういえば木乃香、今日は折りたたみ傘持って来てたもんね」

木乃香の呟きを聞いていた神楽坂明日菜は、占いが当たったと言う木乃香の話に興味を抱く

憧れの人が居る彼女は、占いにすがってでも近付きたい人がいるのだから


「世界樹前広場に占い師が居るなんて聞いた事ないけどなー」

二人の会話に即座に加わって来たのは、1ーAのパパラッチ娘こと朝倉和美である

日頃からスクープを求めてる彼女は木乃香の話に敏感に反応していた


「お客さんおらんかったし、最近始めたのかな~? ウチに占い教えてくれへんやろか」

「これは面白そうね。 いっちょ調べてみるか」

木乃香の話に興味を抱いた和美は、意味深に笑みを残してどこかに走って行ってしまう

この時の木乃香の何気ない言葉と和美の行動が、横島の存在を麻帆良中に広める原因となるのだが木乃香は気付かぬままだった


「占い師で若い男性って珍しいわね」

「見た目が占い師に全く見えないんよ。 面白そうだからやってみたんやけど、思ってたより凄かったんや。 占う瞬間だけはなんか当たりそうな雰囲気を出す人やったわ」

一本の傘に二人で入りながら帰る木乃香と明日菜は占い師の話を続けていたが、木乃香は占い師にかなり興味を抱いていたようである


「相変わらず占いの事になると人が変わるわね……」

「ううん、いつもの感じとはちょっと違うんや。 上手く説明できへんけど、あの人に占いを教わりたいと感じるんよ」

日頃は大人しいが占いに関わると人が変わったように積極的になる木乃香に明日菜は微妙な苦笑いを浮かべるが、木乃香自身は何かいつもと違う不思議な感覚であった

本人も上手く説明出来ないようだったが、それは木乃香のどこかが強大な力を持つ横島に無意識に惹かれたからなのかもしれない


「私も行ってみようかな…… でもあんまり当たるなら逆に怖いのよね」

「明日一緒に行かへん? あんまり繁盛してへんから、早く行かなあ居なくなるかもしれへんのや」

「うーん…… 見るだけ行ってみようかな」

占いに頼っても結ばれないほど好きな相手が居る明日菜だが、あまり当たる占いは逆に怖いと考えていた

しかし熱心に誘う木乃香に負けた明日菜は、明日の放課後に占い師を尋ねに行く事を約束してしまう

この時すでに歴史は、確実に変わり始めていたのかもしれない
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