平和な日常~春~

長々と説明したが結局は、横島が使える力は霊力が四種類に魔力が三種類である

これは横島の最大の秘密であり切り札なのだが、反面で異空間アジトと土偶羅が居なければ生命維持すら出来ない弱点も持つ

まあそもそも質の違う魂を後から融合すること自体がありえない奇跡なため仕方ないのだが……

ちなみにこちらの世界で一般的な《気》は《霊力》と力の質が同じであり、ヒャクメクラスの能力がない限り区別は出来ないはずである



さて話は戻り何故横島が霊符を作り出したかと言えば、それは万が一の為の準備であった

自ら進んで力を晒すつもりも戦うつもりも全くない横島だが、いざという時の為の準備は必要である

出来るならば異端とも言える能力や力を隠したいため、出来るだけ霊付でごまかすつもりであった

かつての横島の世界で失われた陰陽術などがこの世界では現存しており日本には呪符を使う者が多いとの結果から、横島はいざとなった時の霊符の作成をしようとしていた

まあ純粋な体術や武器を使った剣術などの直接戦闘から、タマモの前世が使っていた仙術や神魔族の神術や魔術の類まで幅広く使える横島だったが、全部この世界では異端以外の何物でも無い

両世界で1番似てる術でマイナーなのが霊符の類を使った術である

こちらの世界には符術の流派が比較的多く、メジャーな関西呪術協会からマイナーな隠れ里まで術が微妙に違う霊符が多いことが選んだ理由であった

実はこの世界の魔法使いが使う西洋魔法もすぐに使えるようになるのだが、関東魔法協会に関わりたくない上に呪文を唱えるのに時間のかかる欠点から覚える気が無かったのである

西洋魔法で言えば魔鈴の魂が抜群に相性がいいのだが、利点と欠点を考慮した結果微妙に不便であった


「とりあえず基本的な霊符でいいか?」

魂に刻まれた様々な知識を引っ張り出して霊符の制作に入る横島だが、あまり派手な霊符は作らない方がいいと判断してそこそこの威力の霊符を次々に作っていく

仮想敵が近右衛門や高畑レベルなため、そこそこの威力は必要だった

まあ実際には使う予定もないし使うつもりもない横島だったが、切り札は多い方がいいという考え方は美神令子譲りかもしれない

力の差など簡単にひっくり返す美神令子の魂も受け継ぐ横島なだけに、油断や甘く見ることは無かった

それに、中途半端な油断が何を生むのか……横島自身も身を持って理解している



相変わらず緊張感がない表情のまま霊符の制作をする横島だが、作業自体は真剣そのものだった

横島はそこそこの威力で作ってる霊符だったが高畑や近右衛門のレベルが高いため、この世界では最上級の霊符であることには気付いてないが……

やはり横島の根本的な性格が臆病なのは変わらないままなようである

客が居ない喫茶店で暇そうにあくびをする横島が最上級の霊符を量産してるなど、流石の近右衛門も気付くはずがなかった

何はともあれ平日のマホラカフェでは、平和で暇な時間が続いていく事になる


「あっ!?、こんな物より猫用の出入り口とトイレを作らなきゃダメだったんだ」

霊符の制作を終えて一息ついた横島だったが、霊符より前に猫用の出入り口とトイレが必要だった事を思い出しため息をはく

今の横島にとっては使うか使わないか分からない霊符よりも、ビッケの入り口とトイレを作る方が大切だったりする


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